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異世界転移の錬金生活516 宇宙はこわい

 おっさんは苦悩し始めた。

どうも今までのこととか、もろもろ根が深い気がする。

宇宙に行くとか温泉に行くとか、そういう個々の事象はあまり関係ない。

自分で積み上げていないが実現してしまった。

ここら辺のバランスが崩れつつあることへの不安感というのか。


 もともとおっさんは有能な人じゃない。

できることなどしれている。

宇宙人やドラゴンなど、特殊な方々と肩を並べられる人材ではない。

できることが圧倒的に異次元方向に振り切れている。

前世の人たちだって、段々違和感を感じ始めるはずである。


 おっさんの力だとせいぜい頑張ってゴブリンのような暮らしを実現しただけだ。

前世でもブラックボックスというか仕組みもよく知らず使っている道具はあった。

PCだとかなんだとかおっさんの苦手だったモノはたいていそういうモノだった。

バカだから理解力が低く、仕組みがわからんものを受け入れる柔軟さも足りない。


 おっさんが嬉しそうに印鑑を持ち歩き押すのは仕組みがバカでもわかるからだ。

決してその書類に認証や許可を与えているからではない。

おっさんは法的に問題になった際印鑑を押しているのに中身に覚えがないという。

印鑑認証システムというのは、責任を取る気がないおっさんには意味がない。

ムダに権力問題化して、邪魔くさい事態を引き起こすだけである。


 でもゴブリンのような暮らしに戻りたいと思ってはいない。

あこがれたとしても縄文時代に戻りたい日本人はいないと思う。

そういう意味で宇宙人に手を入れられたもろもろは、おっさんにとっても福音だ。

複雑だろ。何に悩んでいるのかわからんぐらいに複雑だ。


 実感だろうか。

仕組みがわからんものを使う際に大丈夫かと感じる違和感とか。

個々は非常に微細なものだが、いよいよ積み重なってきている。

今思えば、ごみバサミの時の感情の爆発はこういうことだった気がする。

なにが引き金になったかはあまり意味がない。


 ううむ。

例の宇宙人ルールは、本当におっさんに対するサービスだったのかもしれないぞ。

一気にいろいろ進めると、おっさんがこうなるとわかっていたんじゃないか。

人には違和感ゲージのようなものがあって、これが一定量たまるとマズイとか。

たまったら発散するまで、違和感ゲージはトラブルを起こすとか。


 ううむ。

アレがたまる仕組みとそっくりなのは気のせいなのか。

抜くか、抜いて発散するしかないんじゃないか。

違和感ゲージに関しては、別の抜き方があるような気がする。

ああ、そのための温泉リラックスじゃないか。

なんにせよ、目先を変えたり気分を入れ替えるのは有効な気がする。


 もう一つの解法はおそらく、原因とガッツリ向き合う方法だろう。

違和感の正体と戦い、違和感を小さくするために勉強して理解を深める。

結果ブラックボックス化を防げるわけだ。

いわゆる賢い、頭いい方法である。

ムリだろう、どう見ても。


 そういうわけで、宇宙へ行くという違和感と戦うために、宇宙へ行って温泉リラックスを狙う。

頭がオカシクなったような方法論だが、こういうしかない。

麻薬をやめるために麻薬を吸うような感じだが、仕方がない。

念のためいっておくが、おっさんは麻薬を擁護するつもりはみじんもない。

麻薬は人生を破壊しますので止めましょう。


 あとはそう、周辺地勢調査が非常に楽しみである。

日本風の風土のため、温泉を利用した本当の縄文村にたどり着くかもしれない。

こちらにはない文化に触れれば、それだけで違和感ゲージが下がるかもしれない。

目先を変えられれば、おっさんはバカだから忘れてしまう。

もの〇け姫のアシ〇カにあえるかもしれんぞ。


 おっさんは、改めてお風呂グッズの開発を始めた。

木のオケはまとめてダンザおやじから購入した。

タオルや手ぬぐいは、謎織物で製作したものがあった。

めちゃくちゃ吸水性が高い。

全員分を用意して、セオリツさんが補強した。


 問題は石鹸である。

実はサクヤカグヤ両氏による植物獲得イベントにより植物油系は全部手に入った。

これを使えば、石鹸などなんぼでも作れる。

みんなでいろんな色のを作って遊んだ。

染料系の植物も今はめちゃめちゃ栽培している。


 正直この辺りでだいぶ目先が変わって気晴らしになった。

グレゴリーズも楽しそうである。

おいしそうだといってかぶりついて、目を剥いているヤツがいる。

石鹸はこういうことをするヤツが必ずいる。


 ホノカちゃんは、すでに準備万端だった。

モ〇ルポッドに、必要であろう機材を改めて積み込んだ。

現地に温泉旅館簡易版を構築しなければならない。

もうゴブリンの掘っ立て小屋とはいわせないのだ。


 おっさんの居場所は本当に身一つというスペースだった。

衣服を収めた後、いそいそと全裸で乗りこんだ。

やっぱりおっさんの全裸をガン見されている。

おかげでちょっと大きくなってしまったぞ。

普通は縮み上がるらしい。


 その先の展開は前回と同じだ。

意識が混濁する中、舞台と状況が目まぐるしく変わる。

違和感が半端なく高まる。

疲れ果てるため、途中からは考えることを放棄する。


 宇宙は真っ暗だ。

当たり前だがこの心もとなさはヤバイ。

海に落ちたときも実に心もとない感じを受けたが、その比ではない。

何も引っ掛かりがない感じも相まって、恐怖である。


 ああレベルが足りない感じを受けるのは、この辺だ。

訓練してどうにかなるのかわからんが、心もとない。

自分の中に確固とした芯がないと、どこかへ消えてしまいそうだ。

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