異世界転移の錬金生活513 日本へ
おっさんはちょっと憂鬱だ。
あのあと、グレゴリーズに呼び出された。
そこで、こんなことをいわれた。
意外と考えてくれているんだな、とおっさんは感心した。
宇宙に行って、異世界の地球に向き合え。
火山性の地形なんかは、地表を広く見渡せるほうが発見が早い。
地表プレートの構造なんかは、上から広く見ないとわからない。
日本列島のような地形が見つかれば、温泉なんて簡単だ。
確かにな。
悩んでいるより建設的ではある。
日本列島のような地形を歩いて探すのは、ほぼ不可能である。
大海を越えたその先に、南方系ハーブとともに見つかる、という感じだろうか。
下手すると、贅沢品専門の商人からの仕入れが必要なくなるかも。
夢が広がるじゃないか。
なるほど宇宙空間にこんな隠し珠があったのか。
おっさん専用モ〇ルポッド(血の出るような赤)だけに。
おっさんの生命を宇宙で賭ければ、成果は得られる。
目当ての地形が見つかったら、そこへホノカちゃんと降りればいい。
地球の大気の影響を受けないため、宇宙空間の移動はかなり速い。
おっさんの負担感には、相当憂鬱になるわけだが。
移動が宇宙空間だからこそ、こんな荒業が可能である。
温泉でのリラックスのために、宇宙で生命を賭ける。
気力体力を削りながら、宇宙にリラックスしに行く。
おかしい、字面は非常に異様だがしっくりくる感じである。
苦難を乗り越えるからこそ、その先に至福が待っている。
そうなのだ。
宇宙空間だって十分すぎるほど生命の危機なのである。
おっさんはそれをも今までに乗り越えてきたではないか。
大丈夫、大丈夫。
気づかないうちにおっさんはレベルアップしていたのだ。
よかったよかった。
問題はそう、ホノカちゃんである。
宇宙空間に再度行きたいと思っているかどうか。
あの場所に降りたいというような意思の疎通ができるかどうか。
実際に降りてみてやっぱり違ったとか、正しいけど温泉まで距離が相当あるとか。
おっさんはその時々に適切な対処ができるのか。
問題はやっぱり、おっさんである気がしてきた。
困った。
いい道筋がやっと見えてきたが、これはイバラの道だった。
特におっさんがその時々の判断を間違えると、結構取り返しがつかない。
一番こわいのは、迷走したあげく新拠点ヨシオに戻ってこれない事態である。
若いうちならともかく、実家にはもう戻れない的な展開は、おっさんにはきつい。
おっさんはちょっと憂鬱だ。
ホノカちゃんはすごく乗り気だそうである。
目をキラキラさせて目力がスゴイらしい。
今、グレゴリーズによる専用訓練を受けているそうである。
そんなこったろうと思ったよ。
まあそんな宇宙〇弟的な話はいいんだ。
問題はそこじゃない。
着々と粛々とおっさんの気持ちはともかく前にドンドン進んでいる。
宇宙へ飛び出すぜ、帰ってこられないかもしんないぜ。
オレは振り返ったりしねえんだぜ。
少年マンガかゲームのようなカッコいい展開だ。
おっさんは過去を振り返ったりするのである。
実家には帰ってきたいのである。
無軌道で波乱万丈な人生など、こっちから願い下げなのである。
というかさ、おっさんは十分その手の感じ今まで堪能してきたよ。
もう、いいでしょ。
でもね、そうはいかんのよ。
出発予定日はぐんぐん近づいてくるのよ。
おっさんがいい出しっぺである以上、今更やめますとはいえないよ。
温泉でくつろぎたいし、温泉で今こそリラックスしたい。
これはもう、覚悟しろという話だろうと思う。
グレゴリーズに呼び出された。
ホノカちゃんはすっかり雰囲気が変わっていた。
目をキラキラさせて目力がスゴイ。
専用訓練の成果をおっさんに見せたいと意気込んでいるようだ。
いそいそとおっさんはモ〇ルポッドに乗り込んだ、全裸で。
脱いだものはそのまま内部に格納された。
服を脱いでしまったことで、自分の中で覚悟が決まった。
グレゴリーズにガン見されている気がしたが、妄想かもしれない。
飛んだ、飛んでトンだ。
気づいたら、宇宙だった。
何度やってもこの感じは慣れそうもない。
重力がスゴイとしかいいようがないがホノカちゃんはさらに性能が上がっている。
苦しみの時間が短くなり、おっさん的にもありがたい。
そんなことより地表をしっかり検分した。
なんとなくキレイだと思い見ている感じではなく、龍脈を探している感じである。
地表プレートの重なりをなぞって、集まっている先を追う。
日本列島のような火山性の地形が、そこにはあるはずである。
どうもホノカちゃんも同じように目で追っているようだ。
地表プレート等の説明は、すでに受けているかもしれない。
そのうちにおっさんが指図するより先に、ホノカちゃんは動いた。
あっという間に、おっさんはまたトンだ。
今度の意識不明は長かった。
ある地点まですっ飛び、そのあと一気に大気圏突入して地表に至ったようだ。
ヤバイ、今回の機動はあまりにも急で、人類には耐えられそうにない。
心肺停止しても不思議ではない環境に、おっさんは耐え続けたみたいである。




