異世界転移の錬金生活113 廃村だった
拠点を新たに建設しよう。
まず、二棟の屋根を作って、かまどから。
例によって二日間で恰好をつける。
その後、沼地から泥川へ粘土を探しに出かける。
粘土はすぐに見つかって回収する。
これを成形して、土器をいくつか作る。
その後、これを三日間火入れする。
粘土探しを怠っていたのは理由がある。
真水を壺にて確保しているからだ。
これを使えば、一足飛びに調理ぐらいはできる。
ただ、土器がないのは結局不便である。
それに、この土器があるいは金目の物に化ける可能性がある。
結局手を抜かず、全力でやっておこうと思ったのだ。
屋根に完全な真水生成システムを構築するには必要だけど。
こうして、土器を設置して、雨を待つ塩梅である。
今回は降雨がない。
やはり、基本的には乾季なのだろう。
このシステムの弱点がまさにこれである。
真水の壺はこういう時は非常にありがたいことになる。
結構かかるアイツの保存処置をして干物ができていく。
これで一週間わなを仕掛けて、毎日かかっている。
このわなはノウハウ含め売れる気がする。
ちなみに、体、頭の洗浄、服装の洗浄についてはまだである。
これで雨が降ってくれれば、真水を大量消費できるのに。
今のところ、貴重な真水をそんなことには使えない。
沼地から採ってきた水を、どうにか泥と水に分けられれば希望はあるが。
いずれにせよ、大量確保は難しい。
村のそばでこんな活動をしているのに、誰もこない。
警戒されているのだろうか。
もしくは気づかれていないのかもしれない。
なんで、こううまくいかないのだろう。
こうやってワイワイやっているうちに、村人に気づかれる。
気づいた村人と緩やかに付き合いながら物々交換などする。
野菜などの情報がもらえて、そのうちに親しくなれる。
実は、こんな想定をしていた。
村には井戸などがあるだろうから、水は最低確保したい。
魚の干物はどの程度売れるのか。
土器はどの程度良さを理解されるのだろうか。
そもそも、人はいるんだろうか、あの村は。
正直この可能性は考えたくない。
しかし、外からはあまりに活動している様子がない。
村の中に畑があるのかもしれない。
だから、内部で自給自足が完成しているのか。
この異世界の常識のようなものが、自分にはない。
これが不自然なことかどうかが、判断つかないのだ。
あと、これもやっぱり情報の問題である。
あの村は襲われてすでにない、もしくは放棄されたなど。
こういうものも、人とのやり取りで把握できる。
行き当たりばったりで、こういう情報に触れられないのだ。
そろそろ、確認が必要なタイミングである。
言語能力がないとか、しり込みしている場合ではない。
村の中に潜入して情報を得よう。
ダメならダメで、必要な物資のみいただいて出立だ。
考えてみれば、自分はいつもこんな状況になる。
オチは、残酷だ。
廃村だった、とだけ言っておこう。
自分が作るものより立派な石のかまどが哀愁を誘う。
建物もおおむね石造りで、木材の屋根を作る自分とは違った。
井戸はすでに枯れていて、草が生えていた。
ひょっとしてこれが原因かもしれない。
そしてこの確信が芽生えた。
ここは間違いなく辺境地区だ。
人が住むことを結構な次元で拒否する地域なのだ。
そこでなんとか生活できている自分はすごいのではないか。
まあ、すべての季節を経験できたわけではないが。
そこで、クワ、ナタの廃材が手に入った。
木の取っ手は風化していて、金属部分はサビサビだ。
しかし、このサビをなんとか落とそう。
木の取っ手は、石器を作った要領で用意しよう。
誰が見ても捨てたいものが、自分にはお宝に見える。
因果な状況になったものである。
しかし金属器はこれ以外一切ない。
金属の道具はやっぱり貴重で大事なんだろうと思う。
袋ものの類も一切ないし、衣服の類も同様である。
あとは、本当にゴミしかない。
すぐに出立するべきだ。
ただ、これは明確な目標にはなった。
廃村にたどりつければ、自分の拠点は近い。
こういう風に考えれば、廃村も必要であろう。
あと、石造りでしっかりしている建物なので、寝泊まりは余裕である。
真水の問題さえどうにかすれば、非常に良いものだ。
自分の作った拠点建築とのギャップがすごい。
しかし、他者との交流を求めていて撥ねられた感じは残る。
人の居住跡を見て、改めて強烈に人恋しさを感じた。
あと、探せばあるぞ、コレ、という確信は得られた。
希望を持ち続けようと思った。
今はたまたま運がなかっただけだ。
大丈夫だ、大丈夫。




