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異世界転移の錬金生活508 なぞのカギ

 おっさんは今プライベートがない。

自分の部屋にもカギ的なものはない。

どんな人でも踏み込み放題である。

自分としては、まあ困ってはいないけど。


 そんなおっさんの目の前にカギがある。

どこのカギなんだろう。

一般的なカギと変わらず特徴がないため、一層わからない。

新拠点ヨシオでは、誰もカギなんか使っていない。

プライベートを欲しがっているのは、多分おっさんだけだ。


 ドアを作った大工さんもいらないのか聞いてきて、ククリさんが断っていた。

空間を操れる彼女にとって、カギで空間を封じても意味がない。

ムリヤリつなげられるからだ。

彼女を警察にして密室殺人の捜査をさせたら相当有能そうである。


 おっさんは今ちょっとパニックになっている。

周囲にこれが必要そうな話が思いつかない。

倉庫でさえ、第二も含めてカギなんてついていない。

でもここにソレがある。


 ということは、なにかプライベート的な問題が持ち上がっている。

人知れずコッソリこれを解決した人がいて、あげくにカギを落とした。

だれが何のために、そんなことをしたんだろう。

恥ずかしいことに今まで耐えていた、みたいな話があるのか。


 おっさんは真っ先にトイレを思い浮かべた。

しかし今朝も使ったソイツにはカギなんてついていない。

中に入ると、中からドアを封じる仕組みがあるだけだ。

コイツをカギといえばそうかもしれないが、こういう独立したカギはない。


 あとは、そうかクローゼットを見られたくない。

もしくは、着替えの時の部屋に入られたくないとかか。

下着や下着姿をおっさんに見られたり、ハアハアされるのがイヤとか。

まあ、気持ちは分かるが、おっさんは断じてそんなことはしない。


 でも部屋のちょっとした秘密を封じる感じのカギにしてはごつい。

前世では、家の戸締りに使いそうな感じのカギなのだ。

もしくは乗用車のカギとかね。

慌てて新拠点ヨシオのメイン玄関に行って扉を確認した。

カギ穴なんてない。


 ついでにおっさんの部屋にも行ってみた。

カギ穴なんてない。

思わず部屋の扉の取っ手に、例のカギをグリグリこすりつけてしまった。

カギは欲しい。

おっさんのプライベートが欲しい。


 グレゴリーズに聞こう。

もやもやしていても解決はしない。

大事なカギかもしれないため、早い方がよい。

例の天浮舟の起動キーとかだったらマズイ。

失くした、では済まなそうな感じである。


 聞いてみたら、わからないといわれた。

カギなんて必要ないだろ、何のためのカギだ。

ヤラしいこと考えてるの。

ヤラしいことしないといけないの。

独りでするのはもうやめなよ、身体に悪いよ。


 ちょっと待ってほしい。

おっさんだって、出どころ不明だから聞いているんだ。

なぜ、おっさんのプライベート保護限定で話をするんだ。

玄関のカギか天浮舟の起動キーかと思ったよ。


 確認してくれればわかるよ。

おっさんの部屋は今も、プライバシー保護されていない。

誰でも、来るモノ拒まずだよ。

おっさんはちょっと変態だから、見られながらのアレも全然オッケーだ。


 おっさんがいつも差し込むいらんことはともかく、切々と訴えた。

みんなで確認して、やっぱりカギの出どころは不明となった。

しかし、こういう展開は予想していなかった。

今やおっさんは相当、彼女たちに依存して生活しているなと思った。

何でも自分だけで完結していたころが懐かしい。


 なんとなく大事なものである気がして、おっさんが預かった。

みんなもそうしたほうがいいといった。

結局いつも肌身離さず持ち歩いている。

差し込めそうなところには、ムダと知りつつ差してみたりしている。

変な習慣ができてしまった。


 人のウチに行ってもそんなことをしていたら完全にオカシイ人だ。

幸いそんなにそんな機会は訪れなかった。

やはりごつくて、中々差し込めそうなカギ穴はない。

不思議な雰囲気をカギからは感じ続けている。


 どんな用途に使うものか、まずは把握することが必要だ。

今のところ全くこの辺も不明である。

おっさんも含めて今世の人は、そんなにカギを使わない。

セキュリティ的なことに、あんまり興味がなさそうだ。

前世の田舎の人のメンタルに近い。


 そうそうセキュリティ的なことをしている人を一人知ってる。

急に金持ちになったダンザおやじである。

失うものが大きくなると、途端に人間は都会的なことを考えるんだ。

カギを設定して、その中に逃げ込んで引きこもり出す。


 いろいろあって、ダンザおやじはロートル町の人とは距離がある。

そこまで深刻ではないが、本人にとっては苦痛だろう。

その合間に、ワカ町に進出して娼館作るんだからさすがだけど。


 逆にいうと失うものがなければ、人間は引きこもったりしない。

食えねえと思えば、必死で外に出て稼がざるを得ないからだ。

食うモノを準備されている安心感があるから、引きこもっていられる。

引きこもっていられるのは恵まれている証拠である、とおっさんは思う。

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