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異世界転移の錬金生活112 村の発見

 先が読めないのはつらい。

大分進んでいる実感はある。

真水を満載した壺を胸に抱えている。

わな、ヤリ、オノを背負って、ポケットには物資が満載である。

重い。


 ややこしいことは、もう望まない。

なにか、イベントを。

盗賊に襲われる、魔物に前を塞がれる、行商人が襲われている。

あるよな、普通。

こういう距離的にしんどい旅程のときは、こういう賑やかし要素が。

そこで馬車に拾われる感じで、旅程をショートカット。

ついでに、親しくなっていろいろお世話になる。


 いろいろ雑音が多いのは認める。

でも、こういうの当たり前だと思っていた。

違うんだなあ。違う。

現実には、わき目も振らずにガシガシ歩いている。

さして風景も変わらず、周囲には動物の影さえない。

なにかルーチンと化してきた野営を行って泥のように眠る。

すぐに朝だ。


 ただ、沼地には相変わらずアイツがいて自分を癒してくれる。

しかし、野草の煮びたしに飽きが来ていた。

だって塩さえないのだ。味がいつも同じである。

灰汁抜きもできないため、えぐい味もする。

正直最近は、危険を冒して根や茎もいってみるか、という気になる。

あの果実はどんな味なんだろう。


 わがままだ、と思っただろ。

違うんだ、そうじゃないんだ。

こんなことでもブツブツ考えて発言していないと、気が狂いそうなんだ。

考えてみれば、これでもう二か月近く日がたった。

その間他者に会っていないんだ。

しゃべり方さえ、忘れてしまいそうである。


 このまま自分はどこまで行けるのだろうか。

結果としては大した距離を稼げていないのかもしれない。

それさえ今は確認するすべがない。

情報がこれほど大事だとは思っていなかった。


 考えてみてくれ。

現代日本ではどこへ行くにも地図がある。

あの地点からあの地点まで何キロで、今は何キロきているね。

だいたいでも自分の歩けるスピードなど把握している。

だから何日かかるとか、途中のお宿は何がおいしい、とかとか。

さらに情報が潤沢で、困ることなど何もないのだ。


 こういう情報は、大げさに言うと明日への希望なのだ。

多少地図やお宿情報が間違っていても、そこは変わらない。

途中でへばろうが倒れようが、あと何日という希望があれば人は生きられるのだ。

何日耐えればいいのか目安も分からないのは、希望が絶望に変わるのだ。

モチベーションなどというのは、このようなことにすごく影響する。


 つまり、嫌になってくる。

歩いている自分が、生きていないような気分になってくる。

そもそも自分の場合は、自殺してすぐということもあるのか。

こういう実感のようなものこそ、疑いようがある。

ただ森を歩く無間地獄に堕ちている、こんな疑いが出るのだ。


 地獄だ。ひどいよ神様。

こういう異世界物は、人里におおむね近く設定されてるもんだろう。

全然、人に行き当たらないまま、二か月近くが過ぎた。

その間もちろん動き続けたわけじゃない。

それにしてもひどいよ。


 呪い続ける自分に辟易したのか。

状況がやや変わった。

森が切れて、沼地ばかりが広がった。

おお、風景が、なんだか変化した。


 遠くに、何か見える。

あれは町じゃないのか。

いや、村か、いい感じの規模だぞ。

村長さんが話好きのやさしい人だといいな。


 いやがうえにも期待感が高まる。

ほらな、こういうことだよ。

希望ってこんなものなんだよ。

バカだって思っただろ。

バカでいいよ、そんなもんだよ。


 ただ、生来臆病者の血が騒いだ。

ここであわてると、対応を誤るぞ。

一心にあの村に飛び込むのはいい。

その後、受け入れられない場合は。

受け入れられても生活できない場合は。


 ここらで拠点を築いておこう。

前に考えていたではないか。

現地の通貨で、なにがしかの入場税をとられる可能性を。

ここで浮浪者だとばれると、最悪ファベーラ展開だと。

少なくても、金目の物を準備するためにも拠点だ。


 あと、他者に初めてお会いするのだから、清潔感だ。

真水で体を洗うなり、服を洗濯してみるなり、やるべきことは多い。

服は熱湯煮沸できれいにするという方法もありか。

あ、頭洗いてえ。そういえばかゆい。

浮浪者そうろうでは、痛い目に遭わされても文句は言えない。


 おお、異世界始まって以来の前向き展開ではないか。

せいぜい頑張って、できることはちゃんとやろう。

この際、この服装の異様さは忘れよう。

現地の服装は当然情報がないわけで、合わせようがない。

それに、立派な拠点を全力で築くところからだ。

なにせ、村のすぐ近くだからな。

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