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異世界転移の錬金生活426 悪魔印のタロットカード

 今回はちょっと派手な回になる予定である。

さらっと前回複製と書いた。

つまり宇宙人側には、こういうカードの複製術がある。

おっさんも知らなかったけどね。


 それに対してこの世界での出版状況は、散々たるものである。

貴族や金持ちの間では、細々と書籍が手書きで複製されている。

まあ高価すぎるうえに出回らない。

手間のかかり具合からすると、宝石より貴重である。


 西洋風の活版印刷やビジュアル重視なら日本の版木印刷。

この辺りをおっさん主導で作りこんでやろうという回なんだ。

今回複製しようとしているカード類はもちろん後者だ。

活版印刷は細かい金属加工必須でハードルが高すぎる。


 幸いおっさんは金属の工具類が充実してきたし版木は何とかなるのではないか。

大量の紙、大量のインク、大量の手間、大量の完成カードの切断。

面倒そうな課題は、むしろ後に控えている感じである。

この辺りは宇宙人たちを巻き込んで、何とかつじつまを合わせるしかない。

もしくは産業化そのほかを含めて、ダンザおやじに丸投げするパターンもある。


 甘かった。

色味によって大量の版木が必要である。

昔のドットプリンターでもいいから印刷機が欲しい。

黒の線画・文字だけでも、これでやれれば非常に楽だ。


 コツコツと彫っていると、カグヤさんに見つかった。

どうしてそんな意味のないことをといわれたが、ここに定着させる意義を訴えた。

このままだと身内で狭く楽しんだ後、この世界には定着せず終わる。

定着させるには、こういうテクでコツコツやってムリなく現地の人に伝えないと。


 結局、黒の線画・文字の版木、赤、青、緑の版木の四種類にまとめた。

塗られていない箇所は白抜きになる。

おっさんの目から見ても、それこそ駄菓子屋のおもちゃのようだが。

原作者のサクヤさんには不評だったがオタクな色味の追及は後世の人に任せたい。

シアン、マゼンダ、イエローの三色だったか。

ああ、インク粒子を飛ばすプリンターが欲しい。


 満足いくまでズレ等を修正していったあと、完成とした。

念のため、この版木をそのまま複製してもらった。

宇宙人の技術はこういうところでもすごかった。

複製した方をオリジナルとして保管した。


 いざとなれば、赤、青、緑の版木はなしでもカードとしては成立する。

しかしこのフルセットをもってダンザおやじに話を持っていった。

飛びついた、飛びついた。

今までにない迫力だった。


 道具屋のおやじにとって、このアイテムは自分の商売にとって本筋だ。

一応子供のおもちゃではあるが、子供用では収まらないスペックがある。

タロット占いは、前世でもオトナから根強い人気があった。

どうせ今世でも同じ状況になるだろう。


 対戦タロットは、この辺りがこなれてからバカなガキ用におろすつもりである。

紙を工夫し破れにくい仕様にしないと、バカなガキに破られてしまう。

イメージとしては、メンコぐらいの感じがいいのではないか。

ルールもへったくれもなく、メンコ遊びに興じるバカなガキの姿が思い浮かぶ。


 愚者のおっさんがもろ自分のため、バカなガキにはやし立てられる恐れがある。

大逆転をやれ、とかいわれても、おっさんにはそのスキルはない。

それをいいだすと、当のダンザおやじは悪魔なんだけどな。

今気づいていないが、いずれは気づいて慌てだすだろう。

仕様を変更されて、無難なデザインになったりしたら傑作である。


 ダンザおやじは、いろいろ走り回って必要機材をそろえたようだ。

大量のインクや大量の切断機材が、特に大変だったそうだ。

悪魔印のタロットカードとして売り出すから、自分が悪魔なのは好都合といった。

意外とタフだったのと、商魂たくましいとはこのことだと思った。


 その後このカードは大ヒットした。

おどろおどろしいパッケージと悪魔印が、逆にヒットの原因だった。

こわいもの見たさで購入し、タロット占い要素にハマり、世の亭主から悪魔のように嫌われる。

家事をやれ、そんなもん迷信だ、いい加減妄信するのをやめろ。

えらい事態になったものである。


 冒険者からもなんとなく、原因はコイツだというイヤな目線を感じる。

あと愚者のおっさんがもろ自分のため、バカなガキにはやし立てられる。

しまったー。油断した。

大逆転入りの対戦タロットを待つまでもなかった。

そんな細かいことは、バカなガキには関係ないのである。


 おっさんはバカなんか、おとうちゃん怒ってるぞ。

真顔で聞かれて、はやし立てられる身にもなれ。

バカなガキは、おとうちゃんの意向を受けておっさんにひどく当たるのだ。

大ヒット商品を考案した功労者への扱いとしては、最低だ。


 おっさんは報復として、悪魔印のタロットカードを浄化する香木を売り出した。

これもオトナから絶大な支持を受け、バカなガキからはいらん出費だと恨まれた。

このアイデアは、そもそもグレゴリーズがやっているという以外の理由はない。

そもそもグレゴリーズは浄化の魔法が使えるのだ。


 ダンザおやじは、この一連の大騒ぎでそれこそ悪魔のように稼いだ。

名に恥じない状況になって、愚者のおっさんは深く反省した。

わざわざ訪ねてきたミカエル君はそんな自分を見て、嬉しそうにこういった。

マリアさんもハマっていて大変だ。

ああいうの、もともと大好きなんだ。


 そうでしょうね。

もちろんマリアさんも、カードに登場予定だったんですよ。

君については、あのカードで超重要人物に化けているけど気づいたかな。

意外と誰にも見えるようにはしたから、はっきり自分とは思わんかもな。


 グレゴリは皇帝なんて大層なカードに採用され、少なからずいわれるらしい。

困ってはいないようだ。

コイツは人から何をいわれようと、大して堪えないタフガイである。

メンタルに関しては、素直に見習いたいと思う。

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