異世界転移の錬金生活111 また拠点づくり
乾燥した大気なので、屋根はいらない。
屋根は移動時には邪魔でしかないため、道具も含め置いてきている。
これを油断というのか、賢さというのかはわからない。
雨が降る兆候が現れたら、この辺が判明する。
単純に、真水生成システムは、非常に優秀だが移動に適さない。
真水も結局水瓶では輸送困難なのである。
土器も割れてしまったら、つらすぎる。
まじめに取り組んで達成したものは、大事にしたい。
つまり、この課題は、新たなステージに進んだのだ。
持ち運びを考えるというステージに。
ああ、コンビニ袋、プラ素材、ペットボトル。
緩衝材的なものを開発しないと、輸送はできない。
これは、今とても無理だと思っている。
あと、台車的なものはないのかな。
馬車でもいいが、馬は森には入れないだろうな。
この辺が自分の文明の限界である。
やっすい限界だなと自分でも思う。
ただ、調理に真水は必要なのだ。
野草の煮びたし、魚の調理にどうしてもいる。
土器も置いてきているため、この辺りは
どこかで再作成が必要だろう。
何日か歩いてどうしようもなくなったら。
もしくは、雨でも降り出せば。
当然、休止して拠点を作成するつもりだ。
この行き当たりばったり感が自分の持ち味だ。
目安は、やはり野草の煮びたし在庫が尽きたときだ。
煮びたしが適度の水分を魚にも与えてくれる。
あと、二日分ぐらいで尽きるだろう。
つまり、限界は近い。
それと気になることが、もう一つ出てきている。
植物由来の油だ。
アブラナやナノハナ、ツバキなどなど。
この辺の抽出法が、はっきりしないのだ。
花部分、茎部分、種部分、それとも根部分。
つぶした後、濾すときには、布が大量にいりそうだ。
ただ、手間をかければできそうな領域でもある。
植物油が手にできれば、料理にも普段の火種としても、非常に便利なはずだ。
保管も今なら土器が使えるだろう。
この辺のことを考えつつ、適当に歩きながら野草を採取する。
野草の中で食えるものは、結構見分けられるようになった。
しかし、根とか茎とか、見てわからないものは回避している。
特に根には毒があったら結構やばいだろう。
あと、果実の類も、今は見かけても意図的にスルーしている。
どちらにせよ、この後屋根作りが控えているわけなのだ。
枯れ枝やつる草、大き目の葉は多めに確保しておこう。
夜の時間の空いている時に、ちょっと作業しておくべきだ。
途中経過状態のものなら、持ち運びができる。
あとは、泥川へ意図的に近づいて、粘土を探そう。
沼地が拡大してきていて、地味にここが結構つらい。
出先でまた土器の作成を考える羽目になるとは。
土器は作りだせばあっという間だろうが、その後焼くのに三日かかる。
そういう意味では、あっという間に炭や枯れ枝が不足しそうである。
ああ、土器の焼きには、かまどがいるのか。
え、そうなると初期拠点とほとんど変わらん設備になってしまう。
面倒な話になってきたな。
まあいいや、その時になったら考えよう。
物資が尽きかかるたびに、拠点を一から全部作っていく羽目になる。
こうなるとは自分は思っていなかった。
持ち運べるのはわな、ヤリ、オノだけではないのか。
あとは、困ったことに消費材というやつなのだ。
帰りは楽ができるんだ。
そう思って自分を納得させるしかなかった。
そして二日後、とうとう煮びたしが尽きた。
あたりを見回し、拠点にふさわしい場所を探した。
準備をしてきた屋根を二つ設置。
片方の屋根にはかまどを作る。
かまどは結構手間がかかるのを忘れていた。
つき山づくり、陰干し、穴あけ、内部を火入れと。
二日で仕上げたのは慣れによるものだ。
その後三日火入れをして土器を焼き上げた。
土器は粘土を成形してすでに準備済みだった。
屋根には活性炭がすでに詰められ、ここに土器を設置した。
真水生成システム完成である。
この間に雨が降ってきた。
神様ありがとう、やべえタイミングだ。
かまどで野草の煮びたし作成、真水の煮沸など行った。
それを作った水瓶に詰める。
また無駄になりそうだが、いいのだ。
実はこんなこともあろうかと、携帯できそうな土器を作ったのだ。
真水をいれて、水筒的な使い方をしたい。
ああ、もちろん大事に手で運ぶさ。
当たり前じゃないか。
つる草で背中に括り付け、背負う的なことを考えた。
が、結局不安で無理だった。
背中に括り付けるのは、むしろわな、ヤリ、オノのほうだった。
非常にこれは、とっさの対応を捨てている。
しかし、おっさんにとっさの行動は結局無理なのだ。




