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異世界転移の錬金生活414 強化型おっさん

 おっさんは思うのだ。

みんながおっさんを残してどんどん強化されてしまう。

リアルに戦って勝てそうなのは、ウズラさんぐらいだ。


 ピクシーちゃんは強い。

服装も武装も地上最強であろうと思われる。

クマままは強い。

格闘性能はともかく、水陸両用輸送で見せつけられた。


 ミツバチさんは強い。

部隊の編制や編隊飛行は素晴らしい精度を誇っている。

最近見たが、どうも強さが上がっている気がする。


 おっさんが強くなったのは、竹細工や漆工芸の技術ぐらいだ。

身体的には全く弱いし、〇〇帰還事件ばかり起こしている。

歳のせいにはしたくないが、知力体力そのほか退化が激しい。


 中古の服装と革の胴衣、前世から履いている革靴、石の武器類。

特に前世からの革靴は、そろそろ限界にきている気がする。

何度も下の革がベロンと剥がれて、くっつけ直している。

前世にあったような強力接着剤など期待もできない。


 石の武器類は愛着もあり、便利に使ってきている。

中古の服装と革の胴衣は、購入時の喜びがいまだに残っている。

貧乏くさいが、この辺りは強化する程度で充分である。

セオリツさんの織物で充分補強はできそうである。


 ただいろいろいったが、結局のところおっさんは相当カッコ悪い。

間に合わせの服装の感じとデザインが合わない靴、原始的な武器。

冒険者としてのおしゃれさは、かなり足りない感じである。

グレゴリと思うと、相当違う感じだとはいっておく。


 悲しいのは今使っている農機具類と、石の武器類の差である。

武器としては、明らかに農機具の方が上である。

この農機具ときたら、石材を切れるのだ。

宇宙人ルールにより、これを武器として使うの禁止だそうだが。


 まあおっさんは結局戦ったことないんだけどね。

武器類を磨いてきていない主な理由も正直その辺りなんだ。

必要ないことを頑張ったりできるほど、おっさんは余裕なかったし。

でも、今はそろそろ時期だろうと思う。


 よっておっさんはグレゴリーズに泣きつきに行った。

石の武器類の強化と服装および靴の強化をしたい、と。

男としてピクシーちゃんにみすぼらしい恰好だと思われたくない。

こういう感じで切々と訴えて泣きついた。


 しかし意外とみんなの反応が冷たい。

特に旧グレゴリーズがひどいことをいいたそうな顔でニヤニヤしている。

マズイ、撤退だ。

何かを投げつけられる前に、逃げなければマズイ。


 わかったことを正直にいう。

彼らの妙なスイッチを押すのは失敗だ。

失敗すれば、当然おっさんの心をえぐるようなひどい話が飛び出てくるだけだ。


 おっさんの水虫クサイ革靴なんて触るのもイヤ、とか。

おっさんがみすぼらしいのは服装だけかしら、とか。

武器って、その野蛮人ゴブリンの道具のことなの、とか。


 大げさだ、と思うだろう。

しかし、こういう話は全然大げさではないのだ。

基本おっさんはキモチワルイ生物だと思われているだけなのだ。

ほんとに助けてほしいこういう話には全然協力が得られない。


 宇宙人にはなかなか、人類の黄昏期のおっさんの気持ちなんぞわからないのだ。

カレー臭で大分いじめられたため、おっさんはもうあきらめている。

おっさん自身がちっとも強化されないというのも、ネタとして楽しんでいる。

意地でもそういう部分は協力してやるものか、という感じなのだ。


 おっさんは悲しい思いをしながら壊れかけの自分の革靴を直した。

機が熟すのを待とう。

多分強く思うことが大事なんだ。

戦いが日常でもないおっさんは、今まで本気でこの手の課題を念じてこなかった。

いざとなればピクシーちゃんやグレゴリが守ってくれた。


 甘かった。

成長はできないにしても先々を考え経験にモノをいわせるのがおっさんらしさだ。

こういう事態を避けるために、今までに手を打っていなかったのがアダになった。


 久しぶりに石の武器類を徹底的に磨き上げるか。

ゴブリン呼ばわりされてもいい。

そもそもコソコソやってるうちに事態が打開されていく。

ここは一つ、今までの流れを信じてやろう。


 まず、竹材を使って投げヤリの持ち手部分を新造した。

これだけでかなり軽量化および柔軟化した。

なにより竹材は基本まっすぐなので、狂いを修正したり調整する必要がない。

今までいかに投げヤリに対して気持ちがいっていなかったか、反省した。

これだけで飛距離が飛躍的に向上し、命中精度も向上した。


 石オノは持ち手を削りだした木材で新造した。

おっさんはこういう手仕事が相当上手になっていて自分で驚いた。


 武器としては使うなといわれたが石材の削りだしに使うなとはいわれていない。

農機具類を削る道具にして、石オノや投げヤリの刃を削りだした。

それを磨き上げると、ゴブリンの道具が人間の道具に生まれ変わった。


 ニスで補強できるならしたいが、そういう技術は自分にない。

代わりにあるのが漆工芸の技である。

投げヤリの持ち手部分の竹材、石オノの持ち手の木材を磨いて漆を塗った。

何度も塗り重ねて完成とした。


 途中からもちろんカグヤさん辺りにはバレていた。

武器が出来上がった辺りで、磨いて漆を塗るよう勧めてきた。

塗り重ねる過程では、何度もチェックを受けている。

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