異世界転移の錬金生活411 海はあぶない
海の沖合での一本釣り漁法の続きである。
おっさんがどうにかなっているうちに、ピクシーちゃんがやってくれた。
カツオだけじゃなく結構な種類の海魚を確保してしまった。
だから、おっさんいらん、とかいわない。
もちろんおっさんは海の藻屑にならずに済んでいる。
ピクシーちゃんに救出され、今は船の上にいる。
船が転覆しなくて本当によかった。
魚介類が周辺にプカプカ浮いているため、必死でピクシーちゃんが回収しては船に載せている。
あわれな魚介類にどんな運命が襲ったのかは考えたくない。
意識を取り戻したおっさんが周辺を見て思ったのは、このままではマズいである。
周辺の死んだ魚介類を全部船に載せるのは多分ムリだ。
載せたはいいが過積載で船が転覆して、おっさん含め海の藻屑になってしまう。
かといってこのままにしておくのもマズイ。
こんな餌場を周辺の厄介な海の魔物がほっておくはずがない。
巻き込まれて、船も含め自分が危険な目にあってしまう。
櫂をつかんで、必死で岸に向かって漕ぎ出し始めた。
ピクシーちゃんは周辺の魚介類を相変わらず拾っては船に入れている。
ちょっとよだれが出ているのを、おっさんは見逃さなかった。
ピクシーちゃんは自分に黙って、海産物を今までにも獲っていた可能性が高い。
漁法になんだか慣れがあるように感じるのだ。
幸い何事もなく岸に戻ってこれた。
船をそのままドックに入れる。
船から必死でピクシーちゃんとともにみんなで魚介類を降ろした。
降ろし終わったらまた沖に出て、魚介類の回収を続けた。
明らかに先ほどと思うと相当減ってしまっている。
いうまでもなく海から捕食者が食い荒らしている気配である。
慌てて回収しつつ、襲われないようにまた岸へ避難する。
海を飛んで移動できるピクシーちゃんは関係なく回収している。
大漁だ。
大漁旗を掲げたくなるが、準備をしていない。
おっさんの成果では断じてないため、憚られるけど。
グレゴリーズが、代わりに万歳三唱して迎えてくれた。
カグヤさんセオリツさんとともに、大量の魚介類の下ごしらえを必死でやった。
知らないうちに、カツオのたたきやカツオ節の素材ができている。
あとはしかるべく処理をして、日陰で保管し続ける必要がある。
第二倉庫の建設決定の瞬間である。
あとは、アジやイワシ、ブリやハマチ、タラなんかがいる。
タラには運がいいことに孕んだメスがいた。
タラコをゲットとした瞬間である。
ヤバイ、明太子とかをからしで作成可能である。
特殊なところではウニやタコ。
グレゴリーズは、これを見てクラーケンといった。
サイズ感が相当ヤバイ。
船には載らなかったので、ピクシーちゃん輸送である。
海で襲われたら、生きて帰れない気がする。
ピクシーちゃんは、この辺にまるで苦戦しないということだ。
身近な存在が実は最強とか、正直おっさんはいまだに飲み込めていない。
ウニのトゲトゲ気をつけて、とピクシーちゃんはおっさんに触らせなかった。
ウニの捌きは、セオリツさんやカグヤさんが上手にこなしていてスゲエと思った。
おっさんは正直何も活躍できなかった。
序盤でイワシやアジをちょっと釣った程度である。
だがよし。結果よければすべてよしである。
ピクシーちゃんの食生活の一端が、垣間見えただけでよしとしよう。
よく考えなくても、ドラゴンと海産物は親和性が高そうである。
よだれを垂らしていたピクシーちゃんがしばらくしたらどっかいった。
おっさんには意地でも食ってるところは見せないんだな。
予定通り第二倉庫の建設にかかった。
想定以上にカツオが手に入ったため、大掛かりな倉庫が必要である。
グレゴリがちょうどよく新拠点ヨシオに来た。
二人で地味な作業をこなした。
ついでにみんなの作業スペースも大型化した。
石材がそろそろヤバイ状況である。
序盤に売りまくって娼館に消えていった分を何とか回収したくなる。
しかし、当時は切実な事情によりこういう展開と相成っている。
後悔先に立たずとはこのことである。
まあ、海産物はピクシーちゃんの解説を待つまでもなく、ウメエとなった。
醤油と本ワサビでこれらを刺身でいただくと、死んでも後悔しない味わいだ。
おっさんは異世界でこんな贅沢を覚えてしまった。
よくよく考えると日本人のくせに本当に新鮮な刺身なんてめったに味わえない。
黒毛和牛のA五ランクとか、日本人のくせにめったに味わえないのと同じである。
あの辺なんか、日本に来たにわか外国人ばかりが味わっている印象である。
貧乏性が染みついてしまった日本人は、この辺で真剣に考え直す時期に来ている。
我が国の地味豊かな産物は、我が国の人が優先的に食していくべきである。
あとは、しばらく待てば完成するであろうカツオ節のデキである。
これも多分、日本で普段食していたカツオ節とは全然違うシロモノだろう。
冷奴は未完成だったため、これでやっと完成となる。
和食はこのように一見地味でも、実際は手に入れるのが困難な食材がある。
隠れた贅沢、深遠な闇の世界が実に魅力的である。
ここからは後日談である。
ピクシーちゃんは、この後も海産物を取り続けては提供してくれた。
海の沖合に出ようとするおっさんは、ピクシーちゃんも含めみんなに止められる。
ちょっと悔しいが、ムリもないため今のところはあきらめざるを得ない。
ただ折角作った手漕ぎボートをおっさんとしては生かしたいのだ。
だってこれ単体で見るとよくできているのだ。
やっぱり、舵とか碇とか設置して、モーターを設置したい。
どれも宇宙人の技術頼りなのがいかにも切ない。




