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しまらないエピローグ

 女神たちは集まっていた。


「ちょっと~、全然転生の順番が回ってこないんですけど?」

「回転率優先って言ってたのはどうなったの?」

「みんなで点数山分けなんだから、もっと回さないと意味ないじゃない」

「誰か邪魔してない!?」


 紛糾しているのも無理はない。

 どうしようもない思いつきから始まった稼ぎ転生が、あるときを境にすっかり滞ってしまったのだ。


 ()()()()のスライムとして転生させることができない。

 他のダンジョンでは広いフロアにいるスライムばかりで、そちらに転生させてしまうと冒険者と出会わないことが多く、回転率がはなから望めない。

 つまり、これでは、稼げないのだった。


 わりとまとめ役を押しつけられがちなひとりの女神が言う。

「ん~。ひととおりの記録書(ログ)を読んだわ。結論から言うとね、最後のスライムちゃん、ある休憩所のマスコットとして冒険者たちの愛されキャラになってる」


「はあ!?」

「何それ誰が担当なの?」

「コロセ……」

「いや殺せは言いすぎ謝んなさい」

「どういうことか説明してくれる?」


 大騒ぎである。


 問い詰められた女神は、

「ん~、これ言うと(だ~れ)が最後の担当だったかわかっちゃうんだけど~。めっちゃ()()だったのよね、そのスライムちゃん」


 その瞬間、全員が担当女神の名を悟った。


 石を投げたいくらいの気分だったが、絶対に当たらないので、誰も投げない。

 それどころか、敵意を向けると不幸なことになりそうな気がして、しん、とみんな黙った。


「誰だろうね? スライムちゃんすごいね?」

 ()()()が言った。


「う、うん。すごい……ね」

「幸運なら仕方ないわよね~」

「コロ……むぐっ」

「絶対ダメ絶対ダメ絶対ダメ」

「まあほら、ランダムに担当選んでたし、しょうがないところもあるよ」


 ぎこちない空気がぶわ~っと広がる。


 まとめ役はコホンと咳ばらいをし、

「そうなのよ、担当決めにちょっと問題があるってあたしは思ったの。権能が強すぎる女神っているじゃない? あと、回数の偏りが結構出ちゃったというか……あたし、一度も来なかった」


 私も私も~と賛同の輪が広がる。


「そこでね、次の稼ぎ転生をやるときには、もうちょっと公平な感じにやれるシステムを構築したいの。権能が強すぎる担当のときには明確にデメリットも出るように~とか、そっちのほうが安全だし、楽しそうじゃない?」


 まとめ役の女神はちょっと理系寄りなので、こういったことを考えるのが好きだった。

 みんなもそれは認めており、反対意見は挙がらない。


「でさ、モンスターは何にするの?」


 ひとりの女神から質問が出た。

 当然の質問である。


 回転率――つまり再出現までの時間が最短のスライムは、もう使えない。

 だったら次に短い、もうちょっとだけ強めのモンスターとなるのか。

 それでは単純に第二候補でしかなく、スライムで失敗した悔しさが残り続けるだろう。


 そういう結構重大な問題に対し、まとめ役は、

「それはこれから決めるわ~。新システムと合わせて考えたときに、『これは前より稼げそう』って思えるものを提案したいと思ってるわ」

 と答えて、その集まりは解散となった。


***


 すっかりみんなが()けた後で――


「ねえイリス~、あんなこと言っててほんとに大丈夫? みんなすっごく期待しちゃうよ?」

「ん~、なんとかなるでしょ。スライムちゃんでやったときは、ほんとに思いつきだけの勢いでゴーしちゃった感じだもの。いわば実験。それであれくらいは稼げたんだし。じっくり考えればもっといいものが作れるはずよ」


 そ・れ・よ・り、と女神は続ける。


「あなたのほうこそ気をつけなさいよ? いくら幸運の女神テュケとは言え、あんまりみんなの恨みを買うと、そんなにっこにこ笑ってばかりもいられなくなるかもしれないわよ?」

「それは大丈夫よ。私ほんと幸運だもん。あのスライムちゃんが幸せそうにしてるの見るだけで、今もふわ~って幸せになるから」


 満面の笑みを見て、女神は肩をすくめる。


「あなた、なんで稼ぎに参加してるの? 向いてなくない?」

「ふふ、そんなことないよ。だって私が参加したほうが――」


「神界も下界も、みんな幸せになるんだもの♪」

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