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西津 幸 にしづ こう

(この部屋ほんと面白いな~。砂浜みたいな落書きもある。青春だ~)

「ぴゅむ~」


 幸が転生してから1時間は経過していた。

 クロカイトもそろそろ行こうかとつぶやいていたが、


 ガチャっ。


「お、カイト待っててくれたんだ。風のシルフ亭、行ってきたよ」

「スライムも一緒なのね。なんかぴょんぴょん跳ねて嬉しそう」


(いらっしゃい!)

「ぴゅっむ!」


 ガズとエーミィが戻ってきた。

 クロカイトが問う。


「で、マイラというくのいちには会えたのか?」


 だが、ガズは首を振り、


「もう出発したあとだった。他の町に行っちゃったみたい」

「シルフ亭の近くにいた人たちの話を総合すると、どうやらそうみたいなの」


「そうか、残念だったな。――が、そのわりには元気そうに見える」


 気遣うクロカイトに、


「おうよ!」

 とガズは元気よく親指を立てる。

「だってオレは、決めたんだ。オレ、この部屋を――」


「マイルーム扱いにして、冒険者の休めるところにするよ」


 目を見開くクロカイトに、エーミィが補足する。


「さっきのレベルアップでガズって一気にレベル20に到達したのよ。だから、B1の行き止まり部屋をひとつだけマイルームに設定できる」

「それはそうだが……普通はもっと、下層でやるだろう? 40でB2、60でB3あたりがメジャーだ。その権利をB1で使ってしまうのは……」


 もったいない、とクロカイトは言う。

 実際のところクロカイトは権利をまだ行使していない。

 B5で使おうかと思ったこともあるが、他のダンジョンに行くことになったらそちらで使ったほうがいいかもしれない。そう思って使わないまま生涯を終える冒険者も少なくなかった。


 それを、ガズはこんなところ――


 最も浅いB1階層。それも、すぐに町へと戻る階段のあるこの部屋なんかで使ってしまうという。


 クロカイトが黙ってしまったのを見て、ガズは、


「だってマイラみたいに、町で寝ないやつがいるわけじゃん。あと、ついうっかりPK判定されちゃったやつとかさ――イテっ」


 エーミィが足を踏んだ。PK判定されない程度に。


「ま、まあそんなわけで、町のすぐそばの安心できる位置だからこそ、という需要もあるかなとオレたちは思ったんだ」

「思い出もいっぱいある場所だからね」


 床の『好きだ』の文字を見ながら言う。

 エーミィは、続けて申し訳なさそうに幸を見やり、

「ただね――」


「ここをマイルームにすると、スライムは消滅して、もう出現できなくなるのよね」


(ふ~ん、しょーめつね~。えっ、消滅?)

「ぷみゅぽっ?」

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