川副 真一朗 かわそえ しんいちろう
(アイテムドロップだと……?)
真一朗に生まれて初めて――いや、前世から考えても初となる死の恐怖を与えかけていた黒衣の男は、「倒しては駄目」と宣言し、戦意を完全に失った。
そして、
「図鑑を埋めないならただの目障りだ。さっさと消えてしまうがよい」
そう苦々しく言い放ち、杖を天に向けた。
ドウンッ。
(なんだ!?)
「え、これ……この光はどういうこと?」
真一朗の横から、ガズの声が聞こえてきた。
十字路の先にいたガズとエーミィが、戦闘に気づいて近づいてきていたのだ。
ふたりの並びは反転し、ガズが真一朗側に立っている。
「黒い人。あんたがこれやったの?」
「そうだ。物理増強をかけた。わけあって我はこのハイスライムを倒すことがかなわぬ。なので代わりにやってほしい。バフ効果中に銀のクナイを使えば、余裕で一撃だろう」
(代わりに……だと? ちょっと待て……)
「ハイスライム? あっ、ほんとだ、緑色してんじゃん。いいの? 経験値もらっちゃうよ?」
「よい」
すぱっ。
(うおお、これが狩られるということか。なるほど――)
悪くない、と思いながら真一朗は死んでいった。
これでまた1人めからだな、という不敵な目をして。
「えっえっ、これすっげ! レベルアップ止まらないじゃん!」
ガズのレベルアップ音が、しばらくの間ダンジョンにこだましていた。
■■■ザンネン■マタ■ライセ■■■




