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川副 真一朗 かわそえ しんいちろう
真一朗は、じっと扉が開けられるのを待っていた。
集中力は一切途切れていない。
(次の獲物はどんな顔を見せてくれるか――)
狩りを楽しむ人間、それが真一朗の前世だった。
数年おきに計10人を殺害し、最後は射殺されている。
(表の職業は衣料管理士だが、わたしは〝殺人士〟だ)
新聞には殺人鬼と書かれたものだが、彼は自分のことを殺人士と考えていた。
鬼でも狂ったのでもなく、殺しの道をただ純粋に極めた、殺人士だと。
(射殺されたのも、前世では満足したからだ。10人を殺して一切露見しなかったので、もうあの世界では道の先が見えないと思い、あえて射殺されてやった。自死には興味が持てないし、死刑を待つのはつまらない)
だから転生した今、「道の続きが見えるかもしれない」と静かに喜んでいる。
スライムだろうがハイスライムだろうが、自分は自分で、殺人士に変わりはなかった。
(あと9人。そこで何が見えるか――本当に楽しみだ)
扉はまだ開かれない。




