ルーナのこと
それから、ルーナはわたしにお守りの作り方を教えてくれた。紐とビーズを組み合わせて、腕輪や首飾りを作っていく。
「アウロラ、この結び目に魔法がかかる。だから、間違えないよう確実に、心を込めて」
「うん……!」
キラキラしているビーズ、見てるだけでドキドキしちゃう。教えてもらいながら、ゆっくり、丁寧に紐を結んでいくのは楽しかった。時間も忘れて、わたしはお守りを作った。
「アウロラ、ちゃんと食べないとだめだ」
「うん、あと、ちょっとだから」
「……わかった。ここに置いておくから」
大きな部屋からルーナが呼ぶのを、わたしは声だけで返事をした。ビーズにはガラスのものと染めてある木でできたものとあって、どっちを使ってもいいって言われている。銀でできたチャームにも意味があって、【厄除け】に【火災除け】、【幸運】、【縁結び】、それぞれお守りにつけていく。
「間違えないように……これでよし! あ、ルーナのお守り、チャーム間違って付けてる。付け替えておこうっと」
ぜんぶ終わった頃に、お腹がぐう〜っと音を立てた。夢中になっていて、お昼ごはんを食べるのをすっかり忘れていたや。元々、お昼はもらえないことのほうが多かったから、食べなくちゃいけないって思うこともなかったし。
でも、ルーナがわたしのために用意してくれたものを無駄になんかできない。わたしは売り物の軟膏の隣に、作ったお守りを包んだ皮を紐で縛って置いて、ごはんのために部屋を移動した。
テーブルの上には濡れ布巾があって、その下に匙とお椀が伏せて置いてある。お鍋の中に、お芋と人参のスープが入っていた。
「わたしの分だけ、なのかな? ルーナ、どこに行っちゃったんだろう」
まだ温かいお鍋からスープをよそってテーブルに座ったとき、ベッドからうめき声がした。見てみると、ベッドと壁の隙間にルーナがいて、体を丸めて震えていた。
「ルーナ?」
「……んなさい、お父様……」
「ルーナ……」
体をぎゅうっと小さくして、ルーナは泣いていた。わたしはルーナのそばに膝をついて、どうしたらいいかわからずにいた。
「許して」「ごめんなさい」「こわい」「たすけて」「死にたくない」……。ルーナの途切れ途切れの言葉を繋ぎ合わせたら、悲しい気持ちになってしまった。ルーナは、ルーナも、お父さんにひどい目にあわされてきたんだね。だから、わたしを助けてくれたの……?
そっと背中に触ったら、ルーナはビクッとした。起こしてしまったかと思ったけど、まだ目は開かない。わたしはルーナの背中を撫でてあげた。その震えがおさまるまで。
「大丈夫だよ、ルーナ。ルーナのことは、わたしが、守るから」
だからもう、そんなふうに苦しまないで。ひとりで泣かないで。わたしが側にいるから。わたし、きっとルーナの役に立つからね……!