ある女商人の苦労話8 乱入
結構濃厚なピザだったけど、ミユの中ではこれは普通なのよね。これ以上の重いものが最後に控えているというのは楽しみなような、ちょっと怖いような。
そうこうしている内に私の頼んだホッケの開きの塩焼きが提供されたけど、さすがにロゼワインは合わない気がしたので、私は再びビールを頼んだ。ミユは蒸留酒のソーダ割りを頼んでいた。頑なにビールは飲まないのね。
「ジェリカの注文ってー、男っぽいっていうかー、ちょっとおじさんっぽくないー?」
アルコールが進んできたからか、ミユの物言いにもまるで遠慮がなくなってきた。旧来の親友のようになってきているが、まだ会って1日目。まぁ、私もそんな感じで振る舞えるおは楽しいからいいんだけどね。
「そうよ、悪い?」
「別に悪いなんて言ってないわよー。おじさんっぽいからおじさんっぽいって言っただけだよー」
「そういうミユは、ちょっとおしゃれすぎじゃない?」
「おしゃれで何か悪いのー?」
「……悪くないわね」
おしゃれだからって何も問題がないわ。おじさんっぽい対おしゃれとか、ワードに勝てる要素が何もないわ。
「ふふ、変なジェリカー」
お互いに文句を言い合っている格好だが、ミユの機嫌はとてもいい。お澄まし顔もどこへやら、アルコールが回ってからはにへらっとしてちょっと可愛い。普段気を張って突っ張って生きているのかもしれないわね。
「だいぶお酒も回ってきたし、お腹も膨れてきたけど、まだ1品ずつ残っているのよね」
「そうよ。とっても重い料理が出てくるわよー。楽しみにしてよねー」
「楽しみだけど、食べ切れるかしらね」
「平気平気ー」
おお……ミユの酔いっぷりが結構来ているわね。そういう私もちょっとクラクラとし始めているし、ちゃんと帰れるのかしらね。
なんだかんだとミユと話をして、頼んだ料理とお酒を飲み食いして、既に結構な時間が経っている。ひとりで来ていたらもう帰っていたかもしれないし、楽しい時間になって来て良かったって思う。
そんなまったりとした気持ちでいたら、なんだか周りがちょっと騒がしくなってきたことに気付いた。
「ねぇ、ミユ」
「なーにー?」
「周りがなんか騒々しくなってきたけど、なにかあったのかしら?」
「そうー? あっ、ホントね」
ザワザワという表現が合っているかな。私たちは個室にいるから大部屋のほうで何か起きているのかもしれない。
「私、ちょっと見てこようかしら」
「えー、放っておこうよー」
「でも、気になるわ」
せめて何を騒いでいるのか聞こえないかな? 私は耳を澄ませてみた。そうしたら、ちょっと大声での会話が聞こえてきた。
「美女がいるなら会いに行こーぜ!」「個室に入っているなら無理に行っちゃダメよ」「なんでだよ! ここはみんなの英雄譚を聞く場所だろ?」「それはそうだけど。そういう人は大部屋に通されるでしょ?」「いいじゃねーか。大部屋に呼ぼうぜ!」
これ、もしかして私たちのこと? 美女だなんて、ちょっと恥ずかしいじゃない。でも、もし私たちのことじゃなかったらもっと恥ずかしいわね。
ズカズカズカ。まさにそんな感じの大きな足音とともに、何人もの人がこっちに来ているような動きがある。やっぱり私たちのところに来る流れよね、これ。
案の定というか、予想通りというか、たくさんの足音は私たちの個室の前でピタリと止まった。
「たのもー!」
大柄な戦士風の男がガラッと個室を区切っていた引き戸を力任せに開いた。それにしても大きい男ね。





