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居酒屋『冒険者ギルド』  作者: ヒース
第2話 ある魔法使いの苦悩(前編)
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ある魔法使いの苦悩23 次の目的地へ向けての準備

「ひとまず、この街で集めた情報をお話しておきます」


 ストーク君がそう切り出した。


「ドラゴンのこどもについては、目撃例に関しては収穫なしでした」


「そうか……」


「落胆するのは少し早いですよ」


 そう言ってストーク君はピンと人差し指を立てる。


「ひとついい話がありました。ドラゴンのこどもを直接見たという話ではないのですが、北西にある山に大昔ドラゴンが棲んでいたという伝説があるそうなのです」


「北西の山か。今ごろの季節ならまだ大丈夫か」


「そこですね」


 私とストーク君はうなずき合う。


「ファーレン?」


 サラが首を傾げる。


「ああ、ごめん」


 私はサラの頭にポンッと手を乗せた。


「北西の山はこの街からやや距離があるんだ。王都や街から離れると自然のチカラが強くなって、環境が崩れやるくなるんだ。気候が変動したり、大地が荒れたりとかね」


「お天気が悪いの?」


「そう。ただ、季節の影響もあって、今の時期だとそれほど荒れることがないんだ。もう少し寒い時期になると、雨が止まなくなったり突風が吹いたり、場合によっては雪に覆われたりもする」


「俺たちの調査が今の時期というのは運が良かったかもしれないんですよ、サラさん」


 ストーク君がやさしくサラに語りかける。


「とはいえ、山登りは決して楽観視はできません。サラさんには大変な行程になります」


「うん」


「不安にならないんですか?」


「……不安?」


 サラはまた首を傾げる。ストーク君がちょっと驚いた顔をしている。


「わたしは、ファーレンといっしょなら、大丈夫」


 そんなうれしいことを言う。思いっきりナデナデしてあげたいけど、ふたりの目もあるし自重しよう。


 と、思っていたのだが――


「サラちゃん、健気!」


 アメリア君が思いっ切りナデナデしてしまった。サラはくすぐったそうにしている。


「アメリア、サラさんが嫌がってるぞ」


「そんなことないよね?」


「……うん」


 微妙な間がいろいろ表現しているんだろうけど、アメリア君は気にしないようだ。


 しかし、北西の山となると道中に魔物が出る可能性もありえるな。この街である程度準備をしていったほうがいいかもしれない。もともとある程度は持って来てはいるが、多くて悪いことはないだろう。


「ストーク君。北西の山に行くのに、近くまで馬車に乗っていかないか? それまでに、食料とか薬、あと念のために防寒具も用意しておこう」


「俺とアメリアは温度差はある程度カバーできますが、ファーレン先輩はどうですか?」


「私は服に防御性能がないので、温度差はダイレクトに食らってしまう。それに、サラの分も考えてちょっと見ておきたい」


「わかりました。では、俺のほうで馬車を手配しておきます。ファーレン先輩とサラさんはアメリアといっしょに食料と防寒具の準備をお願いします」


「わかった。よろしく頼むよ」


 ストーク君は手だけで返事をすると、無駄のない所作でこの場を立ち去る。何から何までスマートだな。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 先に食料を買ってしまうと重くなってしまうので、私とサラの防寒具が買えそうな雑貨屋に立ち寄った。


 王都ほど大きくないこの街では、最新の流行を取り入れたファッションなどはなく、地味な普段遣いのものが品揃えとなる雑貨屋が主だった。何店も雑貨屋がある。


 今であればドラゴン祭りの露天で買うこともできるだろうが、お祭り価格で無駄に高くかつ値段の割にはお粗末なものを掴まされてしまう可能性もある。


 普通の店で普通のものを買ったほうが値段のあたりがつけやすい。


「ここまで実用的で機能的だとスッキリしますね」


「たしかに。とても探しやすくて助かるね」


 同じ目的で使用されるものは同じところに置いてあるし、サイズの差も用意されている。道具も服も考え方は変わらないようで、陳列方法はどちらもあまり差がない。


 私たちの目的のものはおかげですぐに見つかった。


 私は白衣の下に着れるような厚手のセーターを選択し、それから厚手の手袋も用意した。サラはモッコモコの登山用ブーツと厚手のタイツ、これまたモコモコのコートを一着買っておいた。使わない場合は荷物になってしまうが、途中で寒さにやられることになったら目も当てられない。


「あたしもマフラー買っておこうかな?」


「キミとストーク君は魔力保護の強い白衣を着ているから、寒さも暑さも平気なんじゃないのかい?」


 アメリア君は白衣をヒラヒラっとさせて、やれやれといった感じで両手を広げる。


「平気ってわけではないですよ。属性抵抗値が高くなっているだけで、環境変化にまで強いほど万能じゃないですから」


「そうなの? 私は服とか道具で対処するから魔法防御の高い装備とかは用意していないから実はよくわかっていないんだけど、危険な魔法研究開発もあるから防御性能の高い白衣が支給されてるんだと思ってたよ」


「間違ってはいないですよ」


 白衣の裾をヒラヒラさせながら、アメリア君は私に困ったような笑みを向ける。


「見ての通りの白衣ですからね。あくまで”温度差はある程度”防げるだけですよ」


 ストーク君が使った言葉を真似る。


 あの彼だからこそなんでも卒なくこなすのであって、同じことをアメリア君にまで要求してはいけないってことだな。確かにまったく同じ装備で同じ環境にいた場合、なんとなくストーク君なら大丈夫だって気がする。


 ここまで万能超人だとなんでもできてしまうと思っても仕方ない。


「それでも、マフラーだけでなんとかなっちゃうんだね」


「ふふっ、たしかに変ですね」

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