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居酒屋『冒険者ギルド』  作者: ヒース
第1話 ある勇者の冒険譚
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ある勇者の冒険譚⑭

 僕たちは再びタワーダンジョンを攻略していた。


 ネーメウスの回復魔法でギウスの傷はあっさり回復した。ギウス本人は意識を取り戻したあとは、戦線に復活することに積極的であり、魔王にやられる前は中衛に居座っていたのがここのところは最前線に出てくれるようになってきた。まだ確実じゃないけど。


 タワーダンジョンは地上三十階にもなる高層ダンジョンだ。ひとフロアあたりの面積はたいしたことないんだけど、入り組んだ迷路上になっているので結構攻略に時間がかかる。


 一度討伐したはずの魔物も再び活性化していて、しかも妙に手応えが上がっている。さすがに僕らも二周目なので大きく苦戦はしないものの、一体あたりがやや強くなっている程度でもそれが集団で来ると相当鬱陶しい。


 リリアが範囲魔法で一網打尽にするのがお決まりの流れだったのだが、今はまだ魔力の充填がイマイチのようで、初歩魔法での援護しかできないのが痛い。


 ネーメウスは基本的に支援役で回復魔法の使い手なので、どちらかというと僕らが守りながら戦わないといけないので、結局ギウスが前衛に復帰してくれても、僕もなんだかんだ最前線で戦わざるを得ないままだ。


「ったく、こいつらキリねーな」


「同感」


 なんでこんなにもひとフロアごとに魔物が次から次へと沸いてくるのだろう。三十階あるんだよ、ここ?


 とはいえ、鬱陶しいだけなので先へは進める僕らだった。



 何とか二十階まで昇ったところでさすがに疲れてきた。リリアとネーメウスは体力的なところで、上層への移動だけでも結構大変だろう。ギウスは体力バカでもあるので、激しい戦闘を繰り広げても基本的には疲れない。


 僕も勇者の特権で疲労は感じづらい。ただ、疲れないわけではないので適度な休憩を取ることは賛成だ。


「ぼく、まさかレベルアップするとは、思わなかった」


「私もよ。レベルアップで体力と魔力が全快するっていうところもあるみたいだけど、こっちは全然ね」


 レベルアップかぁ……


 そう言えば、僕はしばらくレベルが上がっていない気がする。あまり気にしていなかったけど、魔王の側近を倒しても上がっていなかったような……?


「それだけここらへんの魔物の驚異も増しているということだよな。いくら魔王がおとなしくても、魔物が暴れだしたら大変だから、早めに装備を整えたいところだね」


 僕らがタワーダンジョンの再攻略を目指したのには理由がある。防具に聖なる祈りを与えるためだ。


 ダンジョンの最上階にはホワイトドラゴンが棲んでいて、無限に水が湧き出る聖なる泉を守護している。この泉の水を防具にふりかけると、どんな防具でも聖なる守護の効果が付与されて、見た目はそのままに防御性能が格段に向上する。


 聖なる保護の効果は上限こそあれど重複するので、時間をかければかけるほど強い守護の力が付与される仕組みだ。


 以前魔王に挑む前にも登頂していたのだが、その際は救援要請を受けて速やかに戻らなくてはいけなくなり、最低限の聖なる守護しか付与できなかった。


 魔王への再戦に備えるには充分な守護の力を得ることは不可欠だ。実際、魔王はまともに攻撃をしてこなくとも確実にダメージが積み上がっていた。防御性能を高めることで、もっと効果的に戦うことができるようになるはずだ。



 僕らはまずタワーダンジョンで防御性能をぐーんとアップさせるのを皮切りに、孤島の洞穴で武器の攻撃性能アップ、迷いの森林にて魔法の術式簡略化、そしてそれらすべての行程の中で身体能力の底上げを狙っている。


 タワーダンジョンの三十階はホワイトドラゴンの守護の力が働いているので魔物が昇ってくることはできない。僕らは防具の強化の間にゆっくりと休むことができた。


「……もう充分だろう」


 おもむろにホワイトドラゴンが僕らに話しかけてきた。


 頂上に昇ってきた時点ではまだ日も高かった気がしたが、すでに夕暮れを夜へと差し掛かっている。雲ひとつない空では大きな丸い月が煌々と輝いている。満月の夜に変身する狼男の伝説を思い出す。


「これで準備がひとつ整ったね」


 僕はネーメウスと再会した国の城下町で、軽量化の魔法が付与されている薄くて丈夫な服を手に入れいていた。防御力は鎧のほうがはるかに高いんだけど、動きやすさと対魔法と対物理のバランスの良さから僕は服のほうを好む。服と言ってもファッションではなく、ちゃんとした戦闘用だ。


 ギウスはゴツい見かけどおりの頑強なアーマーを装備している。リリアは黒いドレス風のローブを纏っていて、魔力の増幅効果の高い先のとんがった帽子を被っている。ネーメウスは召喚士だった頃からずっとダブダブの若草色をしたローブを着ている。おかしなくらい先端が大きな靴を履いているのも特徴のひとつだ。


 僕らはそれぞれの防具を聖なる泉から回収した。


 聖なる加護を受けた防具は水からあげても、まったく濡れた様子はない。これはとても不思議なのだが、普通に触ると水だし、飲むことも持ち出すこともできるのだが、防具と認識されているものは聖なる加護が付与されるだけでまったく濡れない。


 まぁ、もしびしょびしょに濡れていても、そのあとに乾かすのに難儀するだけだけどね。


「さぁ、次へ進もう。魔物が増えているのがちょっと気になるし」



 僕らはタワーダンジョンを出ると、予定通りに準備を整える旅を再開した。

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