episode8
海聖高校編5話です
「・・・は?」
その言葉を、脳内でもう一度繰り返す。
サッカーを、、、辞めないで下さい、、、?
「辞めないで下さいって、どういう意味?」
「その言葉通りの意味です」
「なんで僕が昔、サッカーをしていたってわかるの?」
「三年前、私は親の仕事の関係で、海聖地区から遠く離れた、南水地区に住んでいました」
(・・・南水。)
額に汗が滲む。
「その地区では毎年、全国に繋がるサッカー大会、フットボールトーナメントの地区予選が開催されていました」
「・・・。」
「その地区予選当日・・・。」
「今日の演奏もなかなか良い出来でしたわね」
週一度開かれるピアノ講習を終え、電線の影上を歩く。
「ん・・・あれは」
見ると、春には満開だった桃色のしだれ桜が薄緑色を帯び始めていて、いかにも初夏を象徴している様だった。
もうすぐ夏か。そんな言葉を頭の片隅に置きながら前方へ向かって歩き始めた。その時だった。
「速く走れや馬鹿野郎!」
道路を挟んだ向かい側のグラウンドから、凄まじい罵声が聞こえる。
罵声の方を見てみると、緑のフェンスで囲まれた、一面に広がる芝生の上で、選手たちがボールを追いかけている姿が目に映った。
どうやら、サッカーの試合中に誰かしらがミスをしたらしい。
右腕につけている時計で時間を確認すると、帰宅する時間には余裕があったので、近くの横断歩道を渡り、試合を見ていくことにした。
「わぁ、すごいですわ!」
交差するフェンスの間に手をかけ、フィールドを見渡す。
いつもは、ピアノ講習が終わったら寄り道も一切せずに家に帰っていたので、目の前の新しい景色はとても新鮮で、私の心が奪われるには簡単だった。
だが、奇麗な花萌葱の景色に見とれるのも束の間、すぐに芝生から違和感を覚えた。
「あの人・・・眼が死んでる・・・」
視線の先の選手は、明らかに他の選手とは明らかに雰囲気が違う。
競争心、覇気が感じられない。
「蹴也! パス!」
その選手にボールが渡る。だが、足についたボールは、何秒もしない内に取られてしまった。
「何してんだよ下手くそ!」
恐らく同じチームメイトであろう選手から野次が飛ぶ。
(あ、眼が・・・)
彼の眼の色が、また曇った。
芝生に感じた違和感。それが彼だと分かった瞬間だった。
今回は蹴也の過去に入りました!
自分の感性に任せて手を動かし中です、まだまだ物語は続くので気長にお読みください。
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