episode7
海聖高校編4話です
「今日放課後暇? うちらで駅前のカフェ行こうよ!」
「良いねそれ! 高辻さん予定ある?」
「うーん・・・まだ分からないですね・・・」
おまけに席も隣同士だ。
(偶然すぎるだろ。)
窓側にある時計を見る。
七時五十五分。
朝のHRが始まるのは八時三十分からなので、まだ十分に時間がある。
これからどう時間を埋めるか。
こういう時、良くあるアニメや漫画では、自分に近い席の人や、同じ中学だった友達などと交流を図り、親交を深める風潮にある。
だが、あいにく僕は、人と話すことが得意ではない。
ましてや、近くの人混みの会話に参加しに行くことなんて不可能だ。
視線を窓の外へ移す。
(ん・・・あそこは・・・)
太陽の光を遮る雲と同じくらいの高さに、フェンスで囲まれた、景色の良さそうな場所が目に入る。
あそこなら落ち着くことができそうだ。と、小さくため息をついてから席を立ち、財布と携帯を持って教室を出た。
空が近く感じる。
誰もいないことを確認し、息を大きく吸いながら額を上げる。
空を見ると、教室の息苦しさも消え、心が落ち着く。
側にあった自動販売機でコーヒーを購入し、奥の茶色いベンチへと向かい、腰を下ろした。
フェンス越しにグラウンドを覗くと、先程まで練習していた野球部とサッカー部が、それぞれ片付けをしているのが見える。
そして、高辻を助けた桃色の絨毯も目に映った。
コーヒーを半分ほど飲み、空を見上げる。
あの出来事は偶然だ。もう起きるはずがない。
雲で隠れていた日差しが顔を出し、咄嗟に右腕を目の辺りに持っていきながら、瞼を閉じる。
すると、風が肌に当たる心地よさのアプローチに押され、だんだんと睡魔が侵入してきた。
すうっと意識が遠のき、脱力を感じた瞬間、後方で「ガチャン!」という爆音が響き、僕の心臓の中心が、どくんと大きく波を打った。
目を日差しから守りながら後方に身体を向けると、そこには見覚えのある女性の顔があった。
「あ、やっと見つけましたよ!」
こっちは見つけられたくなかったよ、と口から出そうになるのを我慢し、寝起きの掠れた声で返事をする。
「僕に何か用ですか?」
高辻はドアを閉めると、何も言わずにこちらに向かって歩き出した。
高辻の顔をよく見てみると、僕が初めて彼女に名前を言った時と同じ様な、あの真剣な表情になっていた。
鼓動が早くなり、只事ではないと直感し、ベンチに下ろしていた腰を上げる。
屋上の中央辺りで歩くのを止めた高辻は、一直線上に腕を伸ばし、僕に細い指を向けた。
「風谷蹴也君、私は貴方に会うためにこの学校に来ました」
僕の思考が、絡まって中々解けないイヤホンの様になっていくのをよそに、高辻は話し続けた。
「言いたいことがあって、会いに来ました」
吹く風が強まり、僕と高辻の髪をなびかせる。その風と共に、高辻は大きく空気を吸い込んだ。そして、感情を振り絞るように意思をこちらに向け、勢いよく吐き出した。
「サッカーを辞めないで下さい!!」
だんだんと話が深まる部分になってきましたね!
私自身、面白い作品を作れるように努力中なので、どうか、応援よろしくお願いします。
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