episode6
海聖高校編3話です
「私、今日からここの一年生で、高辻紅葉といいます。良ければ教室まで一緒にいきませんか?」
正直に言って、騒ぎの発端に近い人物とは、あまり関わりたくない。
だが周囲の生徒が騒ついているこの状況を突破し、この場を離れる方が、優先順位が高いと判断した。
「ご迷惑でしたか?」
「あ、教室までなら・・・。」
中学時代、彼女がいないことはもちろん、女子と話すことが少なかったので、応答に少したじろいだが、最終的な目的地は同じなので一緒に行くことにした。
「あ、あそこの掲示板にクラス分けが貼らさってますよ」
高辻が指をさした先----校舎入口の横には、丁度、教室の黒板の大きさ程ある掲示板があった。
近くに行くと、ラナンキュラスの花の額縁で囲まれた掲示板に、ずらりと並んだ新一年生の名簿が、クラスごとに分けられているのが見えた。
「お名前を伺っても良いですか?」
自分の名前を左側から探して一組分ほど見終わったくらいに、隣にいた高辻が口を開いた。
(そういえば、この人に名前を教えてなかったな。)
名前を言うことに抵抗はなかったので、教えることにした。
「風谷蹴也です」
「風谷・・・。あ、私の隣に名前がありますよ。」
二、三秒間をおいて、高辻は答えた。
クラスが同じで名前が隣同士という偶然の偶然。
「運命ですね」
「あ、そうですね。」と軽く流して、名簿にある自分の名前を見る。
名前を言ったとき、一瞬だが、高辻の表情が曇った様に見えたが、恐らく考えすぎだろう。
「さあ、行きましょうか。」
高辻は、幼い子の様な上目遣いをしながら、僕の制服の袖を、くいっと引っ張った。
いつまでも掲示板の前に屯している訳にもいかないので、高辻に従って教室に向かうことにした。
◇◇◇
「高辻さんってシャンプー何使ってるの?」
「肌も綺麗! 今度すべすべになる裏技教えてよ!」
「メアド交換しようよ! 番号教えてもらってもいいかな?」
(・・・人気者だな。)
やっぱりな。と思った。
最初会った時は、落ち着かない状況で、高辻を見る余裕があまりなかったが、教室へ向かう道中、頭を整理し、冷静さを取り戻してくると、高辻の光っている部分が視野に映るようになってきていた。
丁寧な言葉遣いに、濃い折り目の制服。
風貌からして、誰がどう見ても、金持ちのお嬢様だという事がわかる。
しかも、多くの男子生徒の気を引く程の容姿に、愛嬌のある少し垂れた目と、くっきりとした二重も魅力的だった。
また、歩く姿勢も綺麗だった。
ストレートの髪をなびかせて廊下を歩く彼女の姿は、ファッションショーでランウェイを歩くモデルの様に美しかった。
その隣を歩く、そこまでイケメンではない僕は、モデルの隣をうろつくカエルの様に不釣り合いだった。
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