episode5
海聖高校編2話です
タン、タン、タン、とリズムをとりながら右足に力を入れ、膝を突き上げるように、勢い良く地面から離す。
その時、同じく空中にある左足を軸にしながら、百八十度、反時計回りに身体を動かす。
自分が最高点に達した時には、丁度良い位置にボールがあった。
あとは、来た方向に向けて、振り抜く。
「おおーー!!」
「すげぇ! あんなの初めて見たぞ!」
通学路にいた周囲の生徒の歓声に包まれながら着地する。
蹴ったボールは、狙い通りグラウンドの方に飛んでいき、助けた女性然り、他の生徒にも危害が加わる事は無かった。
ただ、
(・・・やってしまった。)
そう、僕は高校生活に対しての願望と決意を、自分自身で壊してしまった。
いわゆる、出落ちというやつだ。
普通に高校に通い、静かな学校生活を過ごすという願望。
登校初日に騒ぎを起こして注目を浴びてしまえば、絶対誰かしらに声をかけられる事は、間違いないだろう。
それも、教室の隅で両耳にイヤホンを付け、孤独に小説でも書いてそうな地味系の生徒から話しかけられるのは、まだマシだが、その可能性は二百パーセントに近い数値であり得ないだろう。
一番後悔しているのが、ボールを蹴ってしまった事。
中学一年生の時に、もうサッカーはしないと固く決意し、それから二年間ずっと、それから遠ざかって生きてきた。
テレビのサッカー中継はもちろん、ネットや周囲の人の話題で、それっぽい言葉が出ようものなら、即座に耳を塞いできた。
そのくらい、サッカーが「嫌」だった。
(なのに・・・、どうして・・・。)
サッカーボールを蹴り返した方を見る。
(ボールが来ることはわかっていた。でも、身体が勝手に動いたとなれば話は別だ。)
どうして体が動いたのか。僕には、見て見ぬふりができたはず。
その一つの事だけが疑問だが、あまり深く考えたくない議題だったので、考えるのを放棄し、体を校舎の方へ向け、右足を出した。
その瞬間、力弱い手が、トン、トン、と僕の肩をたたいた。
「あの、先程はありがとうございました。」
振り返ると、見るからに柄の良い「お嬢様」が、こちらに頭を下げていた。
「あ・・・、いえいえ・・・。」
(忘れてた・・・。)
よくよく考えてみれば、僕がこの人を助けてしまったからこんな思いをしてしまったのだ。
後々面倒な事になりたくなかったので、何か一言女性に言ってこの場を逃れようとした時、長いストレートの髪をなびかせながら頭を上げ、女性は話し出だした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回から文章量を少し増やしてみたのですがいかがだったでしょうか?
また何か、意見、感想、コメントがあればよろしくお願いします。
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