episode3
「ZONE」の家族編3話です
「おはよう蹴也。早く食べないと学校遅れるわよ」
「うん、おはよう。」
僕に挨拶してきた母の香織は、台所で食器を洗っていた。
他人事だが、毎日僕と鈴香よりも早起きして家事をするのは、とても大変だと思う。
僕が母の立場なら、おおめに見て一週間くらいでダウンするだろう。
そんなことを考えながら、鈴香が座っている向かいの席に腰を掛けた。
自分より先にリビングに行った鈴香は、朝食を半分くらい食べ終わっていた。
「あ、そういえば部活動とか、もう決めてるの?」
箸をおいた鈴香が、少し気まずそうに聞いてきた。
「入るとしたら、静かに過ごせる部活が良いな」
「えー、兄さん運動神経良いからスポーツとかやれば良いのに」
スポーツという言葉に嫌な空気を感じ、「やらない」と言いかけたが、時を縫うように鈴香は続けた。
「サッカー、とか。」
台所にいる母が食器を洗っている手を止め、カチャ、カチャという食器同士があたる音が止んだ。
一時の無音状態に、一瞬だが、時間が止まったような気がした。
「もう、やめたから」
「そっか。」
パンを手に取り、口に運ぶ。
視界の片隅に映る鈴香は、萎れて元気がなくなった花のように俯いていた。
結局、朝食の間、鈴香とはそれっきり話すことはなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回で最初の家族編がおわりました!
次の話からは、いよいよ海聖高校編にはいります。
内容もだんだん濃くなっていく予定なので、楽しみにしておいてください!
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