ep1~次の目標~
春季大会編1話です!
どうも皆さんお待たせしました北斗白です!
これからZONEは毎週日曜日21時更新で再開いたします!
春風に乗って、グラウンドに散らばった桜の花びらと共に、砂が「サァー」と音を立てて一定方向に流れる。
今日は何時もと比べて比較的風が強い日だった。グラウンドに引かれたセンターサークルの円状に立つ僕達の足元を、桜の花びらが交じった砂が通り過ぎていった。
「春季大会まで丁度二週間。新しく入った新入生もチャンスはあるから、先輩方を超す勢いで練習に励みなさい!」
「はい!」
「では解散! 家に帰ったらちゃんとストレッチするように!」
部員の各々が口々に「疲れた、帰るか」など喋りながら、帰宅の用意を始める。僕もそれにならって、ベンチの上に置いてある自分の荷物の場所へと歩いて行った。
「おーい蹴也! 一緒に帰ろうぜ!」
「あ、奏真」
ベンチに座ってスパイクを履き替えてると、自分の荷物を持った奏真が僕に手を振って歩いてきていた。
「春季大会、奏真はスタメン確定だよね。流石に監督も日本代表のサッカー選手を出さないわけにはいかないでしょ」
「いやーまあそれほどでも」
奏真は照れる素振りを見せながら、僕の隣に座った。
「そういやさ、あの時から蹴也、ZONE状態に入ってないよな」
そう、僕は河川敷で奏真と一対一のボールキープゲームでZONEを発動して以来、今までの部活中にZONE状態になることはなかった。
結論から言うと、超人ではなく、サッカーがあまり上手くない普通の人間として練習していたので、監督にいいプレーを見せる事ができていなかった。
「僕春季大会のメンバーに多分選ばれないな」
「諦めんなって! 十六人分席はあるんだぜ? その一つくらい練習で何とかなるっしょ」
「それは奏真にとっての話だよ」
僕は今までの部活で、ZONEという能力がなければ、素人に近いレベルで自分が下手くそだと改めて実感した。練習の最後に行う本番を想定した練習ゲームも、下手くそで悪目立ちしてチームに迷惑をかけてしまっていた。
「監督も言ってただろ? あと二週間あるって、だから元気出して練習しようぜ」
「んーまあ二週間は長いから、お前ら頑張れよ」
「そんなこと言ってもなー、って風見キャプテン!」
気配もなく突然現れたのは、長身でサッカーポテンシャルに恵まれ、尚且つサッカーも地区トップレベルの実力を備えた、風見晴冶キャプテンだ。
つい最近偶然耳にした、この学校のサッカー部員が話している話によると、風見キャプテンはこの地区の中で「フィールドのパラディン」という通称で知れ渡っているらしい。
その理由は、司令塔の役割を持つ中盤の選手ながら、チームのピンチには必ず駆け付け、押し寄せる敵チームの波を幾度も悉く振り払ってチームを救ったのがソースとなっているらしい。
部員たちによると、僕達一年生がこの学校に入学する前、風見キャプテンが二年生の頃に練習試合を行った時、敵チームは風見キャプテンのディフェンスのせいで攻撃ができなく、その試合中敵チームにシュートを一本も打たせることなく終了させた伝説があるらしい。
「春季大会も全国に繋がる大切な大会だ。お前らのレベルが上がればチームのレベルも同じようにして上がる。必ず枠に入れよ」
風見キャプテンは僕達にそう言った後、荷物を担いで三年生部員たちと帰っていった。
「風見晴治。多分このチームの中で一番俺に近い人だな。春季大会は一緒に中盤組むかも」
「頑張ってね奏真」
「いやいやいや何言ってんの! 蹴也も一緒に出るんだよ、フォワードで!」
「僕がフォワード? でもこのチームにはストライカーが……」
「いないぜ」
ここで僕はハッとした。このチームにはキャプテンほどではないが、レベルの高い部員が何人かいる。ただ、それはゴールキーパーを含めた守備陣の選手だけだ。よくよく考えてみれば十六人の枠のうち、必ず一つは空くことになっている。要するに、僕にもチャンスがあるという事だ。
「それに、今週の土曜日、練習試合があるらしいぜ」
「え……本当に?」
「監督さんは一年生を含めた全員の選手能力を調べると言っていましたわよ」
「あ、高辻さん」
並ぶベンチの奥から、高辻が資料が入ったファイルを持ちながらこちらに向かってきた。
「お、紅葉、相手はどこと?」
「東堂高校です」
「なっ……! いきなり春季大会優勝候補さんと試合かよ! くーっ! 面白くなってきたぁ!」
「いや面白くなる要素どこにもないでしょ」
東堂高校とは、この地区の中でトップを争うサッカー強豪校で、昨年の高校サッカー選手権大会では海聖高校と準決勝で衝突し、東堂高校が勝利の旗を上げた。
そんな強豪校と春季大会前に練習試合なんて監督は何を考えているんだ……?
「どうやら監督さんはすでに全国しか見据えていないらしいです」
「知ってるか蹴也、東堂高校っていうこの地区の中じゃ強豪校でも全国では下のレベルらしいぜ」
「でも全国に行ける実力を備えてるのには変わりはない訳でしょ。万が一負けたりでもしたら士気が……」
「逆だぜ。東堂高校に勝てれば全国に行ける力はあるってことだ。多分これが分かってれば明日からの練習は、全員火がついたように真っ赤になって練習するぜ」
「そっか……。僕も負けてられないな」
今僕がやるべきことは目の前の目標に向かって全力で練習する事だ。どう見えを張ったって下手くそなのには変わりがないから、ただ前に進むだけだ。
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