episode21
海聖高校編15話です
「いやぁ、今日もカレー美味しいね」
「母さんが作った料理だもん、食べたら誰でもほっぺたが落ちるに決まってるでしょう」
僕から見てテーブルを挟んだ迎え側に腰をかけている鈴香と、その隣、僕の対角上に座る母が、カレーを口に運びながら談話を進めている。
少々の談話を挟んだ後、カレーを半分程食べた母が、カチャとスプーンを食卓に置いて口火を切った。
「で、蹴也、大事な話って?」
「ああ、その事なんだけど、僕サッカー部に入るから」
「・・・‼︎」
一つの真空状態に、鈴香の手に持っているカレーが入った容器の落ちる音が、リビングに土砂が崩れる音の如く響く。
続いて動けなくなった鈴香の膝元に、食卓に勢い良く撒かれたカレーのルーがテーブルクロスを伝って、「べちゃ、べちゃ」と音を立てて溢れ落ちる。
「ちょ、ちょっと・・・鈴香、大丈夫?」
「あ、う、うん。ちょっと手が滑っただけ。ていうか兄さん、サッカー本当にやるの?」
「ああ、ちょっと色々あってね。サッカーやる事にしたんだ」
私服にカレーをつけた鈴香が「やったぁ」と口元を綻ばせながら安堵の表情を見せる。
「鈴香、服についたカレーしみになるから洗っておいで」
話を聞いてから口を開かなかった母が、鈴香とは少し違う落ち着いた口調で、鈴香を洗面所へ行くように薦めた。
鈴香は了承の返事をした後、ドアの前で「試合見に行くからね!頑張ってね兄さん!」と変わらない笑顔で言葉を残して行った。
「母さん、何か言いたそうだけど」
ドアが「ガチャン」と閉まった時には、母はすでに鈴香が溢したカレーの後片付けを始めていた。
「蹴也、本当にサッカーやるの?」
カレーの色に染みた雑巾も持つ母は、動かしていた手を止め、ぴくりとも視線を逸らさずに僕の眼を見つめた。
「そのつもりだよ」
僕も視線を逸らさず、真っ直ぐ母の眼を見つめながら言葉を発する。
「そう、最初に言っておくけど止めはしないわ。ただ、昔の試合みたいに鈴香を心配させるようなことはやめてね」
母の眼に力がこもり、威圧の意を伝えて来るのがわかる。
「背中の傷のことならもう大丈夫だよ、心配しないで」
「蹴也がそう言うなら信じるわ。サッカー、頑張りなさいね」
「うん、頑張るよ」
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