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ZONE  作者: 北斗 白
海聖高校編
11/46

episode11

海聖高校編に戻ってきました


「あなたの話は大方合っています。僕にサッカーをやってほしいという気持ちも十分に伝わりました」

「じゃあなんで・・・」

「その例の試合の時、僕の雰囲気が変わったって言いましたよね。それ、自分自身でも感じていたんですよ」


あの試合のシーンを頭の中に浮かべながら、視線を落として黙る高辻を横目に話し続ける。


「倒れた時、急に視界が暗くなって、頭の中に誰かの言葉が流れ込んできたんです。このままでいいのかって。正直、自分の実力ではどうする事もできないのは分かっていました。でも、サッカーなんて辞めちまえって言葉が心臓に響いて、もう一度フィールドに立ちました」

「じゃあ今でもフィールドに・・・」

「でも、眼に映る景色が違ったんです。後ろを見てないのに三百六十度視界が開けて、相手の動きもすべて予測できました」

「すごいことじゃないですか!」


確かに高辻の言う通り、端から見ればとてつもなく凄いことである。

超人でもなければ、この出来事は一般人には到底不可能なことだ。


「その力とでもいうものを利用して、試合で無意識のうちに自分一人で何点も決めて、家に帰った後冷静に考えたんです。あの試合で自分の身に何が起こったのか」

「・・・。」

「考えれば考えるほど試合に存在していた自分が、本物の風谷蹴也ではないという結論にたどり着くような気がして気持ちが悪くなった」

「それでサッカーを辞めたんですか」

「まあ、そんなところです」


やっとわかってもらえたか、と思った。時計を見ると、もう少しでHRが始まるくらいまで時間が迫っていた。


「さあ、HRも始まるし、そろそろ行きま・・・うわ!」


腰と首を上げると、何十CMも満たない距離に高辻の顔があった。


「何ですか?」

「一つ聞きます。その理由でそこまでしてサッカーから離れていたのに、何故ボールを蹴り、私を助けてくれたのですか?」


また視界が暗くなって、急に体が動いたんだ。なんて恥ずかしくて言えない。


「それは・・・」

「私には分かります。サッカーが好きだからとかそういう次元じゃない。貴方の体がサッカーを求めているからです」

「な・・・! 何を自分勝手な!」

「その証拠に、ボールを蹴った時の貴方、とても生き生きしていましたわよ」

「・・・!」


ほっぺが赤くなる現象を抑えるために唇を強く噛む。

この女・・・自分が助けられてるあの状況で、平然とした顔でそんな所を見ていたのか。


「それに、今目の前の事から逃げれば、一生どころか死んでも後悔しますわよ」


実際、確かに自分はサッカーから逃げてきたのかもしれない。

多分、ここで僕が折れなかったら、このお嬢様から高校在学中に毎日の様にサッカー勧誘を受けるだろう。

毎日うるさいサッカー勧誘を受けて高校生活を過ごすか、サッカーと向き合って本物の自分を探すという二択の中、自分の脳裏に静かな学生ライフを過ごすという言葉がよぎる。


「はぁ、もう降参だ。サッカーやりますよ」

「本当ですか!?」


がしっと高辻に手を掴まれ、すこしたじろぐ。


「ああ、もう逃げないって決めたよ」


高辻は掴んだ手を放し、僕の手から視線を移して眼に焦点を当てる。


「その言葉、待っていましたわ」


高辻はそう言った後、こちらに背を向け、ドアの方へ向かって歩き出した。


「では、HRが始まる頃なので私はお先に失礼しますわ」


バタンとドアが閉まる。


「ふぅ」


二つ返事で答えてしまったが、あれは本当に正しい選択だったのだろうか。

正直、今の僕には全くと言っていい程見当がつかない。

だが、腹をくくった以上流れに任せて前に進んでいくしかないだろう。


(さて、僕も教室に戻るか)


ベンチから離れ、後方のドアへと向かう。

ドアノブに手をかけ、屋上の方を振り返った時、初めて来た時見た少し曇りがかっていたグレーの空は、いつの間にか淡いブルーに染まっていた。



ピアノを聞きながら筆を走らせております。

10話を突破して波に乗っていきたいところですが、北斗白のごとく間ペースに進んでいきたいと思います!

ところで、紅葉お嬢様、中々いいセリフを吐きますよね?そう思った読者さんもいるのではないですか?

これは紅葉お嬢様ファンクラブも近々出来ること間違いなしですね。


ZONEのイラストや近況報告は、北斗白のTwitterでつぶやいているので、フォローとチェックお願いします。

@hokutoshiro1010


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