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第7話『ゴキブリと餌の関係性』


 散らかった部屋をホウキ頭に掃除してもらう。といっても、ホウキ頭はホウキに変身しただけで、掃いたのは俺だ。


「なぁ、ホウキ頭。俺が追いかけてたときは浮いてたんだから、自分だけで掃除できるんじゃないの?」

「ああ、あれはおれっちが浮いてたんじゃなくて、ティーさんの能力で浮いてたんすよ」

「ほ~」


 俺は今、一つの疑念を抱いている。悪のビクターたちとの戦闘において、こいつらはいったい何の役に立つのだろう。


「ところで、俺のブリブリブリンガーだけど、なぜ利き腕の右手じゃなくて左手に発現したんだ? これじゃあ闘いにくくってしかたがないぜ」

「何をいっているのですか。アナタの大事なモノを護るためではありませんか。それにアナタが望んだことではありませんか?」

「ほえ?」


 また訳の分からんことを言い出すのか? 


「ちゃんと募集要項に書いてありましたよね? 右手が恋人の方に朗報と!」

「あー! 書いてあった!」


 つまり、そういうことか! だがしかし、そのための動画を観られない状況で、なにやら矛盾を感じなくもない。


「他に何か質問はありますか?」

「そうだなぁ、これから悪のビクターと闘うわけだろ? そいつらがどこにいるかは分かっているのか?」

「ええ、それはもう一人の仲間が調べてくれています」


 ──追加戦士きた!


「男? 女?」

「女子です」

「かわいいのか?」

「ええ、かわいいですよ」

「本当かー? 女子のかわいいは宛にならないからな。ホウキ頭は、かわいいと思う?」

「そりゃー、もうかわいいっすよ! あれだけかわいければパチンコ屋の営業に行けるっすよ!」

「お、おう、まぁ、パチンコ屋の営業がどうなのか分からんけど、とにかくかわいいんだな!」

「とにかく、明日になればわかります。学校が終わったら例の工場に集合で」

「おう、りょうかい!」


 翌日、シュギコ氏の尾行を諦め工場へと向かった。


「それでは、まずは私についてきて下さい。なるべく気配を消して、人目につかないようにお願いします」


 言われたとおりにティーの後ろを歩いていると、魔女のコスプレが注目を引いた。写真や動画を撮られて恥ずかしい。頼むからSNSには載せないでほしい。


「いましたよ! ほら、あそこの女子高生が、もう一人の仲間、カワウィーネ・デュッフントルテさんです」


 女子高生だと!? うぉー、テンション上がるぜー!

 ワクワクとドキドキが止まらない。ホウキ頭も目をハートにして彼女を見ている。しかし、よく見ると見慣れた後ろ姿である。


「そ、そんなカバな……」


 間違いない。毎日見つめているから間違いない!

 そう、そこにいたのは間違いなくシュギコ氏だった。シュギコ氏が仲間? シュギコ氏がカワウィーネ・デュッフントルテ? シュギコ氏が考えた名前なのか? それともそれが本名なのか?


「どうしたんすか、右近くん?」

「あ、ああ、ちょっと、まさかのクラスメートだったもんで」

「えっ、まじっすか? そいつは奇遇っすね」

「えっと、つまりシュギコ氏、いやカワウィーネも能力者ってことなのか?」


 魔女が俺の方を振り返る。


「彼女の能力ならすでにアナタも見ていますよ」

「えっ、まさかバハムータのことか?」

「いいえ、彼女の能力は、破壊神のフェロモン的何かの戯れと書いてエーブイカンユーホイホホーイ!」


 ──破壊神の(エーブイ)フェロモン的(カンユー)何かの戯れ(ホイホホーイ)


「悪い奴らを引き寄せることができる能力です!」

「いや、カワウィーネさんに関しては異能力の問題じゃない気がするけど、なるほど先日の悪党どもが絡んできたのは、それでだったのか」

「さぁ、わかったら彼女の後をつけますよ。目立たないようにね」


 いや、まずはコスプレをやめろ! と言いたいところだが、もうどうでもいい。シュギコ氏の後をつけるのは慣れている。

 しばらくするとシュギコ氏を男たちが囲んだ。そして、どこかへ連れて行かれるシュギコ氏。


「掛かりましたね。行きますよ。準備はいいですか、伊能右近? 敵のアジトに潜入してザコを倒したらボス戦です。おそらく次の次の話辺りで、いよいよ異能力を持ったAVとの戦闘になる。覚悟はいいですね?」


 極度の緊張が襲ってきた。ご褒美欲しさにここまで来てしまったが、AVとやらの強さもわからないし、異能力者同士のバトルなんてしたことがない。

 それに、ぶっちゃけ異能力どうこうの前に銃とかナイフとかが恐い。冷静になってみれば、恐いこと尽くしの状況に不安と後悔の汗が滲む。

 足がガクガクと震えてきた。顎も揺れている。


「どうしたんすか、右近くん?」

「い、いいや、ちょっとな。さすがに恐怖心っていうかさ。勢いで来ちまったが、やっぱ俺は普通の高校生なんだよな」

「落ち着くのです。アナタの左手を信じなさい」

「落ち着いてるから恐いんだ。冷静になればなるほど恐ろしい未来が見えちまうんだよ」

「誰だって初めは恐い。ですが、アナタがやらなければカワウィーネさんが、あんなことやこんなことをされてしまうかもしれないのですよ。アナタを信じて作戦に参加したカワウィーネ・デュッフントルテさんが」


 確かに、そうだ。俺がやらなきゃ憧れのシュギコ氏があんなことやこんなことをされている動画が……それは観たい! いや、だがしかし、どうせミッションをクリアしなければ観れやしないのだ。まずは目の前の困難と対峙するんだ! 未来のために。

 息を整える。


「まったく、おまえらはいいよな。なんで俺だけ戦闘系能力なんだか」

「できる限り援護しますよ」

「そーっす! おれっちだってホウキになれば武器になるっすから」


 頼りねぇ。頼りねぇが、いっちょやってみっか!


 左手に強大な力を感じた。

 

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