第七話 訪問
用事が立て込んでしまったというのもありますが一番大きい用事が処女作の方だったりする……
突発的に書き始めた作品なので続きどうするかも決まってなかったりしてこっちが思うように書けないのです。申し訳ない
おそらく次の話(来週出したい)が出たらこの話は消えて前話に吸い込まれると思います。
屋敷に呼び鈴の音が響いた。何の音かと思ったら来訪が来たとクレアに言われた。こんな所に誰かくるんだなって驚いたらクレアに「お前もその珍しい部類の一人だぞ?」と呆れられた。そういやそうだった。
この屋敷に訪れてきた人は中年の男性だった。魔法使いのような青いローブを着ていかにも引きこもっている――元い研究者風な痩せている少し背の高い奴だ。先ほど目があった時こちらを見つめて笑っていたが何者なんろうか。
クレアにお茶を入れてこいと言われたので台所にお茶を作りに行った。でも面倒くさいしどうせあんな男性はお茶の味なんてわからないだろうと思い適当に入れることにした。クレアは普段適当に作っても特に何も言ってこないから問題ないだろうし。
お茶を持って応接室に入り、一応使用人なのでクレアの斜め後ろに立った。俺を待っていたのかお茶を一口飲んでから男性――改め青ローブは口を開いた。
「お久しぶりですな。こうして訪問したのは20年ぶりでしたかな?」
「そうだな。もうこの生活が20年も続いていたんだな。時が経つのは早い」
そう言ったがクレアの表情は早いと思うよりもまだかという感じだが……クレアは何かを待っているのか?
「さて……本日伺った用件はお分かりで?」
「私の屋敷にいる新しい使用人の引き抜き、だろう?」
「ええ、前回と同様に、ね」
そう言って男性はこちらを見つめてきた。前回……つまりこの屋敷に使用人がいないのはこいつのせいか。でも引き抜いてどうするっていうんだ? 別に支障などないだろうに。何か利益でも発生するのか?
「わかっているとも。私は何も言ってはならない、判断を本人に任せるという約束だからな」
「覚えて頂いて何よりです。それでは早速といこうか君……あー、名前は何かね?」
こちらでは名前が先、家名が後に名乗るそうなのでシュウヤ・アメミヤと答えるべきなんだろうが……クレアはアメミヤと呼んでいるしそっちだけでいいか。
「アメミヤと申します。先日この近くで倒れていたところをご主人様に助けていただいた者です」
「アメミヤくんだね。知っていると思うが私はステネ・ルドリフィア。魔術師団団長を務めている」
いや知らねえよ。あたかも自分は有名人みたいな言い方やめてようや。何て答えればいいかわからないじゃねえか。
「ああ、緊張しなくて大丈夫だよ。今日は君を勧誘しに来ただけなのだからね」
「…………」
ごめん、資料を見てどういう人かは知ってるけど顔までは知らなかった。ついでに言うと尊敬もしてないから特に緊張もしてない。キャラが想像の斜め上いってたから困惑してるだけだ。
閑話休題。
引き抜き、前回と同様に、勧誘しにきた……先ほどからの会話を聞く限り勧誘ではなく強制移転に聞こえるんだがその辺どうなんだろうか。
「そういえば君、街で女装させられたと聞いたよ。大変だったね、無理やり着させられて。他には何か困ったことはあるかね?」
「えっ」
「そうですね……」
今クレアが「女装!? え、男?」と小声で言っていた。誰が女じゃい! 生まれてこの方女扱いされたことねーぞ!? 折角の機会だし愚痴をぶちまけてやる。仕返しじゃない、怒ってない、オレレイセイ。
「ここでの食事はお世辞にもいい味とはいえず……というより不味いですね」
「うっ」
「あと資料の散らかし具合も酷いですね。使い終わったものを直さない癖はどうにかして欲しいです」
「それはまあ……昔はあいつが色々片付けてくれてたからつい」
「言い訳は見苦しいですね。恥ずかしくないんですか?」
「ならもっと早く言ってくれ! 何故今まで黙ってた!?」
「あとで愚痴って何か強請ろうかと」
「使用人なのに随分と意地汚いな!? というか日頃かなりの金額を渡しているはずだぞ?」
「そこはまあ……取れるところから取ろうかなぁなんて」
そもそもこっちの物価を把握しきれていないし。お金はあるに越したことはない。そして贅沢するなら持っているもののお金を使えば痛くもない。完璧だろう? だから睨まないでくれ。実は罪悪感微妙にあったりするから。
「あー、話を続けていいかね?」
「あ、どうぞ。話をずらして申し訳ございません」
「こちらは君がやりたい仕事に就けて、安定した給料を出す準備ができている。もうここに縛られる必要はない。魔女から解放されて自由な生活を送ろうじゃないか!」
「お断りさせていただきます」
「そうか! では今すぐ――――今なんと?」
「ですからその話は断らせていただくと申しました。すみませんがなかったことにしていただけると有難いです」
働きたくないでござる。ここだと魔法を習えるし適当に掃除するだけでいいしで楽でいい。生活環境は何れ改善するつもりだがここから離れるつもりはない。それにまだここにいなきゃいけないような気がするのだ。誰かを待たなきゃいけない気がしてならない。俺は自分の直感を信じてここにしばらくいると決めた。何が起ころうとこの場所に滞在する。だから行くつもりはない。
「…………何か、気に入らない点でもあったかね?なかなかの好待遇だと思うのだが」
「『どれだけ時が巡ろうときたる時まで永遠と願い続ける』という言葉が頭から離れないから、ですかね」
「っ!?」
「確かに好待遇ですがこの場所で待たなければいけない気がするのです。私の直感でしかないのですが……」
「…………その言葉の意味はよくわからないが、つまり君はこの屋敷から離れたくないから断ると? 例え魔女に贄にされる危険がある場所であろうとその直感を信じて待ち続けると?」
「はい。何としてでも会わなければいけないと胸が騒ぐ等という仕様もない理由ですがそういうことです」
そう言うとステネは「今日のところは失礼するよ。また会おう」と言って紅茶を飲んでから帰っていった。飲み終わった時渋い顔をしていたから不味かったのだろう。俺も不味いと思った。クレアはこの味になんとも思わないのだろうか?
研究に戻るので片付けを頼むとクレアは言って部屋から出ていった。そういえば先ほどの言葉を聞いた時、驚いた顔をしていたがどうかしたのだろうか?