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時巡りて果たされる約束と願い〜勇者大戦に紛れる異分子〜  作者: 浪漫病
第一章 新たな自分の始まり
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第二話 草原で出会う紅き魔女

 草原に風が吹き、草が揺れる音が響く。見渡す限りの草原――オルカーゴ草原に一人、倒れている人物がいた。


「……死ななかったっけ?」


 終夜はバイクに轢かれたのに病院ではなく草原で寝ていたことを疑問に思いながら呟いた。バイクに轢かれた後目が覚めたら草原で起きたのだ。そう思うのが普通だろう。


「なんか懐かしい感じがするけど、まあどうでもいいか」


 覚えのある草原など一切記憶にないが、なんとなく懐かしいと感じたが、どうでもいいと切り捨てる。どこであろうとどうでもいいとしか思えない――考えれなくなっているのだ。


 起き上がりもせず空を見上げていると、誰かの足音が聞こえてきた。


「そこのお前、こんな所で何をやっている?」


 終夜の頭に影をさし、問いかけてきた見た目中学生ぐらいの少女が腰まである赤髪を風になびかせながら半眼で終夜を睨んでいた。


「別に何も……ただ空を見ていただけ」

「こんな人が全く近づかないオルカーゴ草原のど真ん中でか? 誰も彼もがこの草原に近づくのは危ないと噂しているのに、よくもまあここで寝っ転がって空を見ようと思ったものだな」


 少女が何を企んでいるか見破ろうとするべく、目を鋭く光らせる。だが、終夜はボケーっとしながら言い返した。


「危ないって噂されてるから近づいてはいけないなんてルールはないのでは?」


 終夜はただ目が覚めたらここにいただけなのだが、なんとなく言い返した。なぜ噂に縛られなければならないのか、噂というのは危険を知らせると同時に、聞いた人々の思考を誘導する言葉だ。根っから信じていると何処かで足を掬われる。


 終夜はその程度の噂に縛られる必要はないと思った。それを聞いた少女は驚いた顔でまた質問した。


「お前は非道の魔女の噂が怖くないのか?」

「まあそんな噂そもそも知らないけどね」

「…………お前、街のものじゃないのか?いや、でもここにくるには街の方からじゃないと来れないようになってるし――」

「そんなどうでもいい事考えなくてもいいんじゃない?」

「……じゃあお前はどこから来たんだ?」

「さあ〜?」

「……」


 終夜の頭の後ろに立っている少女はなんとも言えない表情になってしまった。考えずとも聞けばいいと言われたと思って質問したら知らないと言われたからだ。


「で、ではお前の住んでるところはどこだ? 親は?」

「さあ〜?」

「お前は誰なんだよ!?」

「……()は雨宮終夜」

「お、おう……名前は言えるのか……それで、お前はそもそもどうやってここまできた?」

「起きたらここに」

「起き……たら……? つまりわからないと?」

「そういう事なんじゃないですかねー」

「自分のことなのに何故そんな他人事なのだお前は……」


 少女は頭が痛いとこめかみを抑えながら呟いた。他人事のように説明してくる終夜を見ながら、少女ふと疑問に思った事を言った。


「じゃあお前、これからどうするつもりなんだ?」

「さあ?」

「いや、そこはさあじゃないだろ……お前、死ぬつもりか?」

「それがここで起きた私の運命なら」


 少女はもう訳がわからないと言いたくなったが、ひとつ、いい提案を思いついた。


「行くところがないならうちで働いたらどうだ?」

「働く? どこで?」

「うちの屋敷で執事をしたらどうだって意味だ」

「んー……じゃあ働く」

「ッ!! ほ、本当か? 正直なところ、冗談半分で言ったのだが……」

「常識知らずでここがどこかもわからない哀れな私があなたに騙し取られるならそれもまた一つの流れでしょう」

「だ、誰がお前から騙し取るものか!? 私はそんなに落ちぶれてない!」


 終夜は顔を真っ赤にして怒っている少女を見つめながら、どこかわからない土地で起きた展開に流れるのも一向と思ったのだった。


 そのボケーっと見つめている目の奥で相手をじっくり観察しながら……


誤字・脱字がありましたらお知らせください。

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