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暗躍 1

行家暴走第2段です。加筆、修正しました。

儂が招いた者たちが、部屋を後にしてしばらくした後。

「まず、種は蒔いた…後は、華を咲かせるために育てねばな」

近習に酒を用意させている間、庭に出て月を眺める。

儂は、義仲に嫌われているようじゃ。墨俣の戦で敗れ木曽に逃れた儂は、再起の為に義仲に所領を求めた。

だが、あ奴は、剣もほろろに断りおった。

これが伯父に対する態度であり、仕打ちか?


巴も気に入らん。たかだか義仲の側女にすぎぬのに、儂を見下したような態度をとりおる。

儂とて、『源氏の子』じゃ。充分な兵がおれば、連戦連勝してみせるわ。それを、たかだか一度負けたくらいで、儂に戦働きをするなと。まぁ、実際に言ったのは義仲だが、あの女狐が糸を引いたに違いない。

それにしても、あの女狐。読み違いをしたの。儂を監視しておったつもりじゃろうが、出し抜いて自由に動き回る事など、簡単な事、いい気味じゃ。

それにこれくらいの事ができねば、院や殿上人の相手は務まらん。あ奴らは、『物の怪』じゃからな。

ふふ…女狐の泣き顔。溜飲が少しは下がったわ。

儂は、源氏を掻き乱そうとしているのではない。

ただ、長老として、『嫡流』の者達に敬われ影響力を持ち儂の希望を叶えたいだけだ。


近習が酒を持ってきた。

「さて…小娘では兵は募れんし義経は無理じゃな。女狐の妹を嫁に迎えておるからな…義円や全成では無理じゃな…とすると」

儂は、ぶつぶつと独り言を言いながら酒を含み、東国・西国・朝廷の勢力を頭の中で整理する。

「とりあえず、ここでは女狐の目もある…早々に新宮に帰るとするか…」

儂は、酒を飲み干して眠りにつく。

翌日、義仲に所領に帰る挨拶をする。

義仲は、ほっとした顔をしておった。女狐の姿は無かった。さらっと嫌味の一言でも言って帰りたかったが…まぁ良い。これから存分に泣き面をかいてもらうのじゃからな。


新宮に帰った儂は、繋がりのある山伏達を館に呼び集める。

儂は、各地にある噂を流させる。勿論、朝廷にも…

死人に口無しじゃ…存分に話を作らせてもらうとするかの。

やはり、『嫡流』は長子が継がねばな。義賢兄上は長子ではない。とすれば、義仲が『嫡流』を名乗るのは許せんな。

思えば、我が祖父、義親も西国にて乱暴狼藉、数々の悪行をしたという。

認めたくもないが、名実共に『源氏の嫡流』の山猿には、それと同じ程、いやそれ以上の汚名を着てもらうとするかの。

ふん…山猿には、女狐の女房か。存外似合いかもしれんな。

山猿が、汚名を重ねれば兵を募りやすくなる。




それから間も無くして、都を中心として、ある噂が朝廷はもとより市井の人々に広まった。


「後白河法皇を、物の怪に殺されたように見せかけて弑逆しいぎゃくし、指示を出したのは、木曽殿らしい」


等…義仲を非難、中傷するあらゆる噂が、京の都から発信され畿内から東国、西国へと広まっていった。





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