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求婚

大変お待たせしました。

「はい?」

私は、義高兄様の言葉につい聞き返してしまいます。

「だから……。その……」

義高兄様が、真っ赤になって俯いたまま……

普段は優しくしっかり者なのに、恋する乙女のように恥じらっています。

「兄上らしくもない。さっさと、想いを吐き出してしまえばよいのに!」

義重兄様が、少し苛ついたような表情を浮かべます。

うるさいっと、義高兄様か義重兄様を一喝してから、ふうっと、息を吐いて義高兄様が、居住まいを正して、私をじっと見ます。

「大姫……この戦が終わったら、私の正室に……『北の方』になってくれ」

義高兄様が、一息に私に告げます。

「え?……あの……」

今度は、私が戸惑い赤くなってしまいます。

「なんだ、姫も……『分かりました、お待ちしております』と即答すればよいのに」

義重兄様が、私に大きな声で言います。

「そんな……いきなり求婚されれば戸惑ってしまいます」

私は、義重兄様をじっと見ながら言い返します。

「そうだぞ、義重。『求婚』というのは……」

義高兄様が、義重兄様を見て言いかけると、

「父上には、上手く取りなしておきますので、早く追い付いてくだされよ」

と、笑いながら立ち上がって部屋を出ていきます。


やれやれといった表情を義高兄様は浮かべ軽くため息をつき、義重兄様を見送った後、もう一度私の方に身体を向けて座ります。

「自分の想いは……伝えた。帰ってきたら……答えを聞かせて欲しい」

義高兄様は、優しく私を抱きしめ、私の髪をすいていきます。

「義高兄様、義重兄様、木曽の父上、巴母様……私の大切な木曽の方々のご無事のお戻りと御武運を……権現様に日夜お祈り致します」

私は、顔をあげて義高兄様に告げます。

「うん……だが、無理はしてくれるなよ?尼母様の言うことをまもってな。健やかに待っていてくれ」

義高兄様が、身体を離し私の肩に手を置いて言います。

私は、こくりと頷くと、居住まいを正して三つ指をつく。

「行ってらっしゃいませ……」

「うん……」

短いやりとりの後、私は、義高兄様が部屋を出ていくのを見送ります。


「話しは終わりましたか?」

暫くして、尼母様が部屋にやって来ました。

はい……と私は答えます。

「それで……どうしたいのです?」

尼母様は、私の隣に座り尋ねます。

「突然すぎて……それに……」

私は、俯いてしまいます。

「それに?」

尼母様が、私の言葉を待ちます。

「義高兄様と義重兄様と私は、幼い頃からいつも一緒でした。でも……私が義高兄様に嫁げば、義重兄様が深く傷つくのではないかと……」

私は、尼母様に心情を吐き出します。

「義重殿の思いにもう一段踏み込んで考えてみたらどうかと……」

尼母様は、私の手を優しく握りながら言います。

私が言葉の意味を取りかねているのを見て、尼母様が言葉を続けます。

「義重殿は、源氏の為……義仲様や巴様が苦労して築きあげた天下泰平の為に、自らの姫に対する想いを封印したのではありませんか?」

「まさか……」

私は、尼母様の言葉に驚きます。

「もし、義重殿が己の想いを通したら、どうなります?源氏に従う武士達はどう思うでしょう?義高殿という嫡男がいながら、義朝流の源氏の血をひく姫と義重殿が結ばれたら?」

尼母様は、私をじっと見つめます。

「悪くすれば……また、源氏の骨肉ね争いが」

私の言葉に尼母様はゆっくりと頷きます。


私は、皐月に尼母様と私の分の白湯を用意させます。

皐月が白湯を私達の前に置いて部屋を出ていったのを確認し、白湯で喉を潤してから

「でも……それでは、義重兄様が辛すぎます」

私は、瞳を潤ませてしまいます。

「想い人と必ず結ばれるとは限らないのです……武家なら尚更……義重殿を義高殿と二人で見守ってあげるのも義重殿の想いに報いる事になると、母は思います」

尼母様は、ゆっくりと一言一言を私に言い聞かせるように話します。

「巴母様は……どうお考えなのでしょう?」

私は、つい尋ねてしまいます。

「多分……私と同じような答えでしょう。それとも姫は、義高殿より義重殿にどうしても嫁ぎたいのですか?そうなれば、義高殿が苦しみます……義重殿は潔く身を引いたのです……その想いをむにしてはならないと思います」

尼母様は、私をじっと見ます。

「暫く考えさせて下さい」

私はやっとの思いで言葉を発します。

尼母様は、ゆっくりと頷きます。

「幼い頃から一緒に育ってきたのです……辛い選択になりますね。辛さから逃げる手も亡い事はないのですが……」

尼母様が、少し考えながら言います。

「そのような方法があるのですか?」

私は、尼母様に聞き返します。


「ですが、この方法は、ある意味一番辛い選択でもあり、また姫の前途、木曽の方々に悲しい思いをさせてしまうかもしれません」

尼母様は、じっと私の顔を見て言うとゆっくりと白湯を飲んだのです。

ゆっくりと執筆していきますので、気長にお待ちいただきたく思います。

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