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旅は道連れ、世は情け

本来なら日数のかかる旅ですが、冗長になるので出来事のみです。

勿論、全ての出来事が一日で起こった訳ではありません。

伊豆に向けて出発した私達は、まず諏訪を目指します。

信濃国一の宮である諏訪大社で、旅の安全を祈ろうという訳です。

それに、諏訪ならば見つかっても理由は何とでもなります。

「ところで、姫様。伊豆への行き方はお分かりですね?」

皐月が少し不安そうに尋ねます。

「まず、諏訪から甲斐国へ出て、そこから駿河へ…駿河からは東に向かえば伊豆に着きます」

私は、歩きながら皐月に言います。

平穏な時代になってから、巴様の発案で街道の整備が行われ、少なくとも信濃国内は、道幅も広く歩きやすいのです。


諏訪に着いた私達は、早速諏訪大社に参拝します。

参拝を終えて、街道を甲斐へ向けて歩いていた私達は、同じく甲斐へ向かうという旅芸人一座に出会いました。

「女性二人だけで、伊豆まで…途中の甲斐の国府まで、ご一緒にいかがかな?」

一座の座長である初老の男性が私達に言います。

十人程の人数の一座で、男女比は半々といったところでしょうか。

私は、最初警戒をしていたのですが、男性だけでなく女性も是非と。熱心に勧めてくれます。

「姫様…ここまで勧めてくれるのです。無下に断るのはいかがかと…」

皐月が私に耳打ちします。

私は、頷いて同行させて頂きます。

甲斐の国府に着くまでの間、私は随分と打ち解けて、一座の人々が回ってきた諸国の話を楽しく聞いたりしました。

「今度、信濃に来たら是非松本にいらしてくださいね」

甲斐の国府に着いて、一座の皆さんと別れる時、私はそう座長に告げます。

一座の皆が、笑顔で私に手を振ってくれます。

私と皐月も手を振ります。短い間でも打ち解けた人達と別れるのは寂しいものです。


甲斐の国府から、駿河に向かう街道を歩いていると、今度は、諸国を行商している隊商の一団に出会いました。

「女性二人で伊豆まで…私達は、駿河の国府にある店に帰るところです。よかったらご一緒にいかがかな?」

隊商の長らしい男性が勧めてきます。

私達は、一応警戒しますが、隊商の皆さんは、

「男ばかりでは味気ないし、女性がいた方が私達も気分が華やぎますから」

などなど、一生懸命に勧めてくれます。

私は、また皐月と相談の上、同行させてもらいます。

富士のお山を見ながら、私達は駿河へと向かいます。

駿河の国府で、隊商の皆さんと別れますが、隊商の長が私が信濃出身なのを知って、『海』を見てみる事を勧めてくれます。

「海は、遠く宋(今の中国)や天竺インドまで繋がっています。その広さ、大きさに驚かれるかも知れませんが、きっと貴女様に良い経験になるでしょう…幸い、国府や街道からもそれほと離れておりませんから、是非」

「海とは、諏訪の湖より広く大きいのですか?」

私は、長に尋ねます。

「勿論、諏訪の湖など比べ物になりません。例えば、ここ駿河の港から陸伝いに行くだけで、東は奥州、西は九州まで行くことができるのです。それだけではありません。海には湖よりももっと多くの魚や貝が採れます。それに、海水から『塩』が作られます」

長は、私に海の魅力や特徴を説明してくれます。

「信濃でも『塩』は採れますよ?」

私は、長に言います。

「ええ…存じておりますが、『山塩』は掘り尽くしてしまえば終わりですが、『海の塩』は無限です。『塩』とは、海水を煮詰めた物です。試しに海水を舐めてごらんになると良いでしょう」

長は、私に色々と教えてくれます。

私は『海』について興味を持ち始めます。

「ありがとうございます。伊豆へ向かう道中に『海』を見てみます」

私は長に礼を言って伊豆へ向かいます。

ここまで来れば、伊豆まであと少しです。


伊豆へと向かう街道の右手に『海』が見えます。

「なるほど…諏訪の湖より何倍も広いようですね」

私は、時々立ち止まりながら『海』を見て試しに水を舐めてみます。成程、塩っぱいですね。

「それに、水の蒼さも諏訪湖よりも深いですね」

皐月が、感想を述べます。

そうやって、伊豆へと向かう街道を進んで行きます。

道すがら、多くの山伏が私達を追い抜いたり、すれ違っていきます。

「山伏の姿が多いですね」

私は、皐月に言います。

「この先は、箱根ですし権現様もありますから修行に向かったり、終わった者達でしょう」

皐月は、私に答えます。

山伏が私達をちらちらと見ていきます。

「やはり、女二人というのは珍しいのでしょうね…」

「当然です。ここまで何も無かったのが不思議なくらいです。きっと、諏訪大神さまのご加護でしょう」

私達は、そんな事を話しながら歩き続けます。


ふと見ると、数人の山伏が道を塞いでいます。

私達は、彼らを避けて通り抜けようとします。

通り抜けたと思った瞬間、私は、山伏に腕を捕まれました。

「姫様!」

皐月が叫びます。

「皐月!…貴女だけでも…離して!」

私は、山伏達に叫びます。

「少々早いが…仕方ない」

山伏の一人がぽつりと言います。

私と皐月は、逃げようとするのですが、次の瞬間、私は後頭部と腹部に衝撃を受けて、意識が薄れていきます。

「母様…」

私は、ぽつりと呟き、私と同じようにされている皐月の姿をぼんやりとみつめなら意識を失ったのです。





伊豆にも『温泉』はありますね。サービスシーン必要でしょうか…

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