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文(ふみ)のやりとり。そして…

私は、義仲様、巴様、義高様、義重様に各々、ふみを書きます。

義仲様や義高様、義重様には、あらぬ噂の為に日夜、対応に追われているご苦労を労る内容で。

巴様には、巴様一人のせいではない事、心労を起こさせた事を詫びる内容で…

文を認め終えると、それを小百合かかさまに託します。


三日後、小百合かか様が、文の返事をもってきました。

義仲様や義高様、義重さまからは、心配することは無いとの返事と私への感謝が。

巴様からは、文を貰えて嬉しいとの内容でした。

言葉では言えない事、心の整理がつかず会いづらい状況でも、文にすれば、素直になれるのだと知りました。

何度目かのやりとりで、私はついに、義仲さまや巴様に対しての今の心情を素直に認め、各々に送りました。

義高様や義重さまにも、同様に…


返事を待つ間、私の心は、ざわついていました。

お互いが、相手の心を傷つけあったのですから…

私は、義仲様や巴様を始めとする『木曽の方々』を。

巴様は、きっと私を…

私は、文のやりとりを通じて、少しずつ皆様に会いたいと思うようになってきました。

「姫様…皆様からの文です」

小百合かか様が、私に丁寧に渡してくれます。

皆様からの返事は、『また一からやり直そう』という内容ばかりで、私を責めている言葉等は一切ありませんでした。

私は、文を読んでぽろぽろと涙を流しました。

「私は、今やっと気づきました…こんなにも優しい方々に守られ育まれて生きてきた事を…」

私の言葉に、小百合かか様が優しく頷いてくれます。


良い事は続くものです。

文の返事を貰った翌日、ある山伏が私を訪ねてきました。

訪ねてきた理由を聞いて私は驚きます。

私を産んでくれた母様が、私に逢いたいと言っています。

訪ねてきた山伏に『産みの母様』の所在を尋ねれば、伊豆に小さな庵を結んで暮らしているとの事。

私は、無性に会いたくなりました。別れて十年近い年月が経っているのですから…


私は、小百合かか様に『産みの母様』に会いに行きたいと告げました。

できれば、私だけで…

当然、小百合かか様は反対します。私の体を心配しての事でしょう。でも、私ももう『大人』です。いつまでも、かか様達に甘えているわけにはいきません。

「私と皐月だけで、伊豆に行かせて!」

「なりません!」

「私ももう『大人』なのです。自由に行きたい所へ行かせて下さい。それに、すっかり盗賊等の噂も聞かなくなっています。道中も安心でしょうし、東国は、私たち『源氏』の地盤です。危害を加えようとする者などいるはずがないではないですか」

という押し問答を数日、小百合かか様と私はくり広げた後、私は諦めた振りをしながら、こっそりと皐月に命じて旅の支度を整えさせます。

まぁ、皐月から小百合かかさまには話が漏れるでしょうが、小百合かか様が巴様の所へ行った隙に出掛けてしまえば良いのです。


とはいえ、義仲様達にあまり心配をかける訳にもいかないので、小百合かか様に、文を持たせます。

「姫様、お出掛けになってはなりませんよ!」

かか様が私に釘を刺します。

「大丈夫です。もう諦めましたから」

私は、ため息をつき残念そうな表情を浮かべます。

「文を届けたら、直ぐに帰ってきますから…それまで必ず居てください」

かか様が少し疑いの目を向けます。

「分かりました…」

私は、しゅんとした態度をとります。

小百合かか様は、それを見て安心したのか、出掛けていきました。

私は、一刻(二時間)待って、皐月に旅の用意をさせます。

「姫様…よいのですか?」

皐月が、不安そうに聞いてきます。

「皐月…心配はいりません。皐月が、かか様に叱られる時は、私も一緒です。私たちは、かかさまの『娘』なのですから」

私は、皐月に言い聞かせます。


こうして、私は、皐月と共に伊豆にいるという『産みの母様』に会う旅にでたのです。



大姫、軽く反抗期突入です。


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