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7 エレメンタル変身

おや、カープキングの様子が・・・。

 そして、キングカープがついに滝のてっぺんにまで登った時――


 キングカープがピカーッと発光しだした!


「なんだ!? いったい、何が起きているんだ!?」


 あんな発光する技をキングカープが使えるとは思えないのだが……。


 その光が少しずつ弱まると、そこには二本のかわいい角と怪獣みたいな尻尾を生やした、人の姿をした少女が立っていた。


 見た目的にはアッカよりちょっと年上といったところだろうか。十二歳ぐらいかな。


「ボクの名はカープドラゴン。キングカープが滝登りというクエストに成功した場合だけ生まれるレアなエレメンタルです」


「なっ! カープドラゴンだと! とんでもなく強いと言われているエレメンタルではないか!」


 相手の精霊使いが驚愕している。

 なにやら奇跡のようなことが起きているらしい。


「さて、敵を倒しますか」

 その少女は視線を敵のエレメンタルに向けると――

「デストロイ・ビーム!」


 口でそう叫んだあと、口から光線のようなものを発して、敵にぶつけた。

 どういう原理なのか、なぜか爆発が起こって、敵エレメンタルはそのまま沈黙した。完全に気絶してしまっているらしい。


 ためしにスマホでepを見てみた。


カープドラゴンep548

アークデーモンep374


 アッカより圧倒的に強いぞ!


滝から飛び降りると、カープドラゴンは華麗に着地した。


「さあ、次のエレメンタルを出してください。ボクが叩き潰してあげますから」


「くっ、この勝負、こちらの負けだ! そんな大物に勝てる奴はいない!」

 男は銀貨五枚を置いて、その場から逃げ去っていった。


 まさかの大逆転勝利……。


「ハルカ様、無事に終わりました」

 私の前で彼女がひざまずいた。

「あの、もっと楽な姿勢でいいんだけど……」

「いえいえ。主従関係をあいまいにするべきではありませんから。ボクは常にハルカ様をお守りする騎士ですから」


 ものすごく礼儀正しい子だな。


「これまではキングカープという無力なエレメンタルゆえ、活躍の場がありませんでした。しかし、今回、変身のためのクエストを行える場に居合わせたゆえ、身命を賭してクエストに挑戦した次第です。いや、エレメンタルは死ぬことはないのですが」


「そうなんだ……。ありがとう……」


「これまではアークデーモンなどという卑賎なエレメンタルがハルカ様を守っていたようですが、あのような者を前に出しますと、ハルカ様の名誉にもかかわります。これからはボクにハルカ様を守る役目をお申し付けください」


 えっ、アッカをディスりだしたぞ、この子……。


「おい! なんじゃ、この女は偉そうに!」


 そこにアッカが勝手に実体化して飛び出してきた。


「なんだ、アークデーモン、お前、寝ていたのではなかったのか?」

「悪いが、わらわは自分への悪口はすべて聞こえるのじゃ! 新入りが勝手なことをぬかしおって!」

「新入りではない。ハルカ様が最初に捕まえられたのはボクだ。これこそ運命の出会いというものだろう」


 うわ、この子たち、すごく仲悪いぞ……。


「ならば、どっちの立場が上か、勝負で決めるしかないようじゃのう……」

「言っておくが、アークデーモンがカープドラゴンに勝てるわけないと思うぞ。お前は恥を抱えて生きていく勇気があるのか? 戦闘中に寝るという恥をかいたばっかりじゃないのか?」

「ふん! わらわがあそこで寝てなければお前は一生つまらん魚のままじゃぞ! むしろこっちに感謝してほしいぐらいじゃ!」


 ぱんぱんと私は手を叩いた。


「はいはい! ケンカはダメ、ケンカはダメ! 仲良くしなさい!」


 私が精霊使いとして、この子たちも教育しないといけないようだ。


「二人とも私の大事なパートナーなんだから、いがみあうのはナシ。はい、握手して」

「なっ、こんな偉そうな女と握手など……」

「ボクもこういう卑しい悪魔とは……」

 お互いに乗り気じゃなさそうだな。


「味方同士握手もできないということは、それだけ器が小さいということになるよ。いいの?」

 この挑発は効いた。

「わ、わかった……。握手ぐらい減るものではないしの……」

「主に逆らう騎士などあってはなりませんからね……」


 こうして、やっと二人は握手をしてくれたのだった。


「そうだ、カープドラゴンって名前、言いづらいし、名前もちゃんとつけてあげないとね」

 すると、その子は目をきらきら輝かせた。

「ハルカ様、ぜひとも騎士らしいかっこいい名前をお願いいたします!」


「かっこいい名前と言われるとハードル高いなあ……。カプコ……なしなし。じゃあ、ドラコで」

「ドラコですか。わかりました、騎士ドラコ、これからもハルカ様のために戦い抜く所存です!」

 ドラコはまた騎士みたいなポーズでひざまずいた。


「ふん、調子のいい奴じゃ……」


 よし、一件落着といったところだが――

 私はにんまりと笑みになった。

 この子も、大人ぶってはいるけど、まだまだ子供でかわいい。


「ドラコ、さっきは本当にありがとうね!」

 私はぎゅっとドラコに抱きついた。

「嗚呼、主からの抱擁、これこそ騎士が受け取るべき最大の褒賞です」

 あっ、この子はアッカと違って嫌がらないんだな。

「ハルカ様、あと、姫のために戦った騎士の褒賞として、お願いしたいものがあるのですが……」

「いったい、何?」

「その……頬にキスをしていただけませんか?」

「まあ、ほっぺたぐらいならいいかな」


「ダメじゃ! ダメじゃ! ダメじゃ!」

 ものすごくアッカが抵抗した。

「主人にキスを要求するエレメンタルなど聞いたこともないわ! ハルカよ、この女は異常じゃぞ! 物腰が丁寧なことに騙されてはならん!」

「なっ! お前こそ主を呼び捨てで呼ぶのをやめろ!」

「ええと……とりあえず、キスはやめにしとくね……。アッカが厳重抗議してるし……」

「それでいいのじゃ」

 ものすごい剣幕でドラコがアッカをにらんでいたけど、大丈夫かな……。



 ところで、アッカはとことんドラコが気に入らないらしいが、あとでこっそりステータスのことを話したら、青ざめていた。

「そんなに強いのか、あいつ……。ケンカしても勝てぬではないか……」

「ケンカしちゃダメだからね。何か不満があったら私に言いなさい」

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