5 今後の方針を決める
精霊使いと勝負です。
それから先も山男はスプライトとかノームとか、一言で言うと、小さな種族の女の子ばかり出してきた。
そして、その都度、アッカに泣かされていた。
アッカは見た目幼女といっても、十歳の人間ぐらいのサイズはある。相手はさらにそれより小さいのばっかりだった。
五歳ぐらいの子供のノームもアッカに叩かれて、泣き出した。
「負けたっ! この勝負、俺の負けだ!」
山男が負けを認めた。
あっ、そういえば敵は四体だっていう話だったな……。
いつのまにかギャラリーも集まっていたが、やけにほのぼのとしていた。
「いやあ、ホラットさん、本当にエレメンタルを育てないね~」
「小さくてか弱いままのほうがいいって言うんだから、しょうがないよね」
「自分のスタイルを貫いてるよね~」
けっこう、この町、ロリコンに理解あるな……。
「いやあ、アークデーモンなんてかわいくて貴重でかわいくて強くてかわいいエレメンタルを見せてもらって眼福だったぜ」
「どんだけ、かわいい推しなんですか」
あと、決闘で眼福って表現出てくるのおかしいだろ。
「ほらよ、五万ゴールドだぜ。これで、アッカちゃんにおいしいお菓子でも買ってあげな」
金貨が数枚入った布袋をその人に私に気前よくくれた。
「あ、ありがとうございます……」
もしかして、けっこういい人なのかもしれない。
「あんたは決闘で勝ったんだ。これは正当な対価だ。礼を言うのはおかしいだろ」
こうして、私とアッカはそこそこのお金をゲットしたのだった。
けど、初の決闘がこの人って、微妙に嫌だな……。
私とアッカは町のこぎれいな宿に数日泊まることにした。五泊連泊だと二万ゴールドでいいらしいので、ひとまずそれぐらいはここに逗留することにした。
アッカはエレメンタルなので宿代はいらないらしい。たしかに姿を消しておくこともできるわけだしな。
ついでに近くの雑貨屋さんでこの世界の地図を買った。
「現在いるのが、このマプレトという町じゃな。気候は温暖で住みやすくはあるが、そんなに強いエレメンタルがおるところではないのう」
その世界の言葉は日本語とも英語ともまったく違うものだったが、不思議と読めた。ちなみにスマホは依然として日本語で表示されているはずだが、逆にこれを覗きこんだアッカも読めたので、そこは相互に翻訳されているらしい。
原因は不明だが、そんなこと行ってたら『エレメンタルGO』なる謎のゲームアプリが入ってるのも謎だし、しかも充電関係なしで使えるのも謎なので深く考えないことにしよう。
「さて、我々の目下の計画じゃが」
「お金を稼ぐんだね」
「えっ……。いや、強いエレメンタルを探す話をするつもりじゃったんじゃが……」
「お金がないと移動もままならないでしょ。このへんの精霊使いとどんどん戦って金を巻き上げていくよ」
カツアゲ常習犯みたいな発言になってしまったが、日本でもともとやってたゲームもそういうようなもんだったしなあ。
あのゲームの場合は、目線が合うと敵のほうから勝負仕掛けてきたけど、あれってPCがカツアゲ常習犯ぽく見えないようにするための策だったのだと思う。だって、こっちからモンスター持ってる人間にどんどん勝負挑んで勝ってお金ゲットするの、いろいろまずいでしょ。
「わかったのじゃ……。じゃあ、お金を集めることにするのじゃ……。わらわの力にかかれば、このへんの敵には早々負けんじゃろう」
「ああ、でも、いくらなんでもアッカ一人だけというのは不安要素もあるから、もうちょっと戦力も増やそうか」
「ハルカよ、わらわを信用しておらぬのか」
むすっとした顔でアッカがこっちを見てきた。その顔もかわいい。
「だって、私、この世界のこと、全然知らないんだから用心はするでしょ。それにすべての戦闘をアッカがやったら疲れるだろうし」
「そうか……。ハルカなりにわらわの気づかいをしてくれておるのじゃな……」
「アッカみたいにかわいい子を増やしたい!」
「お、お前……それじゃ、あのヒゲの男と同じではないか!」
「女の子同士だからセーフにならない?」
「え、ええと……とにかく、考えが不純じゃ!」
本当は、ちゃんとアッカを気づかってというのが理由なんだけどね。
あまり、堂々とそう言うと恥ずかしいし、少し茶化してしまった。
「大丈夫だよ。ほかにかわいい子が入っても、アッカがかわいいことは変わらないから!」
「そんなフォローは嫌じゃし、別にわらわはハルカに愛玩されるのが目的ではないぞ!」
「ごめん、ごめん」
ここはちゃんと頭を下げる。
「でも、アッカだけだと大変なのは事実だし、仲間はもうちょっと増やそう?」
「う、わかったのじゃ……。それも計画に入れておく……」
こうして今後の方針がだいたい決まりました。
その日は、せっかくなのでアッカと同じベッドで眠ることにした。
「別にわらわは実体化しなければベッドもいらんのじゃが」
「いいじゃん。なんか実体化せずに寝てるの寂しそうなんだもん。というか、私も異世界来て寂しいしさ」
マジで縁故ある人すらいないところに飛ばされたからな……
なので、不安みたいなものは実はけっこうあるんだよね……。
「はぁ……。じゃあ、隣に入ってやろう。世話のやける主人じゃのう……」
文句を言いながらもちゃんとアッカは隣で寝てくれた。
やっぱり、アッカはかわいいし、いい子だ。
アッカがいたら、この世界でもどうにか戦っていける気がする。