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喜のない喜怒哀楽  作者: べっこう飴
2/2

エミのいない生活


クソが……。

あのババアめ……。。

俺をこんなに待たせやがって……。。。


今は塾から帰って、家に帰ったところ。

なぜ俺がこんなにもイライラしてるか、それはこんな理由だ。

俺の母親が塾まで迎えに来るとかなんとか言ってたから、言われた通りの場所に待っていた。

そしたら、来たのはその一時間後。

待ってたら補導人に話しかけられるわ、車の水しぶきがかかるわで大変だったのに……。

……頭にくる。

何が “ 来るまで待ってて ” だよ……。

全然こねえじゃねぇかよ!!!

自分の中の恨みを握りしめて、力一杯壁を殴った。

部屋の鏡を見ると、真っ赤な瞳の、エミの姿をした俺が立っている。


“ カヤ ” め……。

こんなにストレス溜めやがって……。

俺にまで移ってるじゃねぇかよ……。


“ カヤ ” というのは俺のもう一つの人格。

喜怒哀楽の “ 怒 ” の人格だ。

今の俺を見て、俺の方が “ 怒 ” にふさわしいく見えるだろうけど、はっきり言って違う。

あいつは、ストレスを溜めるだけの器のような存在だ。

四つの人格の中で、一番動いているのがカヤ。

カヤは学校や母親と話す時に出てくる。

明るい性格だが、それはあくまで表側。

裏側の感情は、俺もルイも知らない。

カヤに関しては謎だ。

昔はストレスを溜めるのではなく、ルイに八つ当たりして発散していた。

俗に言う、 “ いじめ ” というやつだ。

その度にエミに怒られてたっけ。。。

あいつは…どこにいるんだろうな……。


部屋の窓からはまばゆいほどに光を放っている満月が顔を覗かせている。


エミ、今、カヤのストレスが溢れ出して、俺にまで移ってきているよ。

この声が聞こえているのだったなら、もう一度帰ってきてほしい…………


◇◆◇◆◇


世の中にはたくさんの人たちがいる。

その多くは “ 表 ” と “ 裏 ” の人格がある人。

でも僕、エミは違った。


みんなは “ 喜怒哀楽 ” という言葉を知ってるかな?

人間の感情を四字熟語で表したようなもの。

僕、又の名をエミの一つの体の中には、 “ 喜 ” “ 怒 ” “ 哀 ” “ 楽 ” 、四つの人格が存在していた。


僕の名前は “ ルイ ” 。

喜怒哀楽の “ 哀 ” の人格。

自分ではまだ分かってないんだけど、どうやら僕は、うつ病と社会不安障害を患っているらしい。

……泣きたくなるよね?

……死にたい。


僕は四つの人格の中では、一番出てきてない。

だって、外は怖いから……。

僕は注目を浴びるのが一番キライ。

恥ずかしいとかじゃなくて、人の視線が恐怖に感じるんだ。

僕が何かした?

何でみんな僕を見てるの? ってね。

……僕は人間が怖いんだ。


ーーあぁ、、、死にたい。。。。。



僕は月に一度の満月が好き。

満月の月光は僕の心を包み込むように癒してくれる。

出てくるのは、月に一度のそれぐらいかな。

僕は人生をその日だけに捧げている。


この性格は昔から変わらない。

と言っても、小さい頃から精神病を患っていたわけではない。

簡単に言うなら、気が弱かった。

“ カヤ ” っていう子がいてね、その子は僕をいじめてた。

その時、いつも助けてくれたのはエミ。

大丈夫だよ、泣かないでって……。

今でもエミの声が聞こえてくるような気がするんだ。

……多分気のせいだけど……ね。


エミは僕の人格の一人。

喜怒哀楽の “ 喜 ” の人格。

いつも明るくて、ポジティブで、いつもいじめられている僕を慰めてくれていた。

そんなエミは……もう……いない。

ある日を境に、消えてしまった。

過去の……記憶とともに。

なぜエミは消えてしまったんだろう?

なぜエミは記憶を消したんだろう?

その疑問符だけが僕の頭をぐるぐると回っている。

……いつか……また……会えるかな?


ーーーーエミ……。


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