第八話 エピローグ
窓から差し込む太陽が眩しくて目を覚ました。
懐かしい天井、懐かしい部屋。
僕が寝ているのは土の上でも冷たい洞窟でもなく、ふかふかのベッドだ。
僕は悪い夢でも見ていたのだろうか。
昔、この部屋にいた時と比べてずいぶんと伸びた手足が夢ではなかったと、残酷な真実を記憶とともに告げてくる。
隣の部屋からナレインとリグルの声がうっすらと聞こえる。
僕はベッドから抜けだし、歩き出す。
曖昧な記憶。
クレアはどうなったんだろう。
僕は何でここにいるんだろう。
隣の部屋には記憶の中の姿より少し痩せた両親の姿があった。
テーブルに座り、朝食のパンを食べている。
僕に気付いたナレインが声をかけてくれる。
「おはよう、ナキア」
リグルも同じように朝の挨拶をしてくれる。
言葉は普通だけど、雰囲気でわかる。
僕のことを心配していてくれたんだろう。
僕は申し訳なさと嬉しさの複雑に入り交じった気持ちでおはようと返す。
幸せだ。でもクレアがいない。
僕は椅子に座り、パンをかじりながら両親にクレアのことを訊こうとして、止まる。
テーブルにパンが四人分用意されている。
僕の後ろから声がする。
「おはよう、ナキア君」
クレアだった。
いつもの綺麗な黒髪、整った顔。
僕の大好きなクレアだった。
クレアは僕の隣に座り、パンを食べながら話してくれる。
鬼が燃え、僕が倒れる直前にクレアに治癒魔法をかけたこと。
それで、少しだけ回復したクレアが僕を背負って村まで帰ってきてくれたこと。
ナレインとリグルに大きくなったけれど僕だと説明してくれたこと。
そのほかにも僕が特訓から逃げ出した後のことなど。
クレアの話が終わった後、僕もどれだけクレアに会いたかったかそれはそれはたくさん話した。
話が終わった時、辺りは暗くもう夜だった。
僕は近い内に町にいって、治療というなの研究をされるらしい。
現在の薬学技術、魔法研究では欠損部位の回復はまだできないらしく、僕の経験や研究結果で技術が進むかもしれない。
さらに、進んでしまった体の成長も戻す研究もしてくれるらしい。
僕はこの肉体年齢でも別に問題はないのだけれど、やっぱり両親には違和感があるらしい。
でも、とりあえずよかった。クレアが生きていた。
僕はそれだけで満足だ。
研究の結果がどうであれ、治療の結果がどうであれ僕は生きていくんだ。
僕はクレアに宣言する。
「先生、特訓の続きをお願いします」
「ふふ、当たり前だ。君は私の初ちゅーの相手だからな、簡単に死なないようにかなり厳しく鍛えてやろう」
な、なんだと……? 初……?
僕は動揺し、思わずクレアに告白する。
「好きです!」
「もちろん、私も君の事が好きだよ」
その晩、僕とクレアは同じベッドで眠った。
僕は体を戻す研究は断ろうと決めた。
拙い文章におつきあいくださいまして、ありがとうございました。