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永宮未完 挑戦者編  作者: タカセ
第二部 挑戦者と始まりの宮
105/119

挑戦者の二つ名

 明日早朝には今期の出陣式が執り行われるロウガ。


 街の北部に築かれたロウガ王城では、定例となった出陣式に出席する来賓向けに、前女王であるユイナ主催の歓迎レセプションパーティーが開催されていた。


 ロウガ統治のための象徴であるロウガ王家は、トランド大陸東方域に広大な領土を有していた東方王国時代に、狼牙と呼ばれていた周辺地域を治めていた領主の血を引いている。


 暗黒時代の終焉は迷宮モンスターの群れや龍との戦いの終わりであるが、その次に待っていたのは人種による対立と諍いの時代。


 天然の良港であった狼牙の帰属を巡り、周辺の新興国家同士で牽制や小競り合いが起き、復興の大きな妨げとなっていた。


 その対立を止め、ロウガ建国に周辺国家からの一定以上の理解、もしくは理屈を得るために、狼牙領主の末裔を探しだしたフォールセンによって、現王家が据えられている。


 その役目はあくまでもお飾りであり、ロウガ周辺のみならず、かつての東方王国の旧支配領域の取得を目論む東方王国復興派の旗印として担ぎだされ、周辺情勢を不安定化させないために、積極的に政治には関わらずを信条としている。


 国の統治さえも余計な力を持たぬ為に、探索者協会ロウガ支部やいくつかの有力ギルド連合が、王家の命という形で街の運営を代行しているほどだ。


 だから本来であれば、有力者を招いたレセプションパーティーなどもあまり行うことはないのだが、始まりの宮前の迷宮閉鎖期は迷宮から街に戻っている探索者が激増して、普段よりも管理協会は仕事に追われており、来賓者向けの公式パーティーを開催している余裕などないという事情もあり、権威的にロウガのトップである王家が、ロウガ支部に依頼され開催する運びとなっていた。


 もっともロウガ王家の長である現王では無く、王女や前王が主催という形にすることで、なるべく周辺国家への影響を抑えるという配慮もされている。


 いつもであれば、ロウガや近隣都市国家の王侯貴族や、有力ギルド支部長が主な参加者となり顔ぶれはそう変わらないのだが、今回は何時もの顔ぶれにあわせて、トランド大陸各地方や、はては別大陸の国家やギルドからの来訪者を向かい入れる盛大な物となっていた。


 探索者となるための特別な迷宮【始まりの宮】はロウガのみならず、同時期にトランド大陸各地に出現する。


 この時期はどこの国もギルドも忙しさに追われ手の空いている者も少なく、ロウガまで来る余裕などそうそうは無いのだが、多少の無理をしてもトップ自ら、もしくはその名代としてなるべく高位の役職を持つ者が派遣されている。


 数年前に執り行われた現ロウガ王の王位継承式と比べても、勝るとも劣らないほどのそうそうたる顔ぶれが集った理由はただ1つ。


 半世紀以上前に隠居して以来、公の場にはほとんど姿を現していなかった大英雄フォールセンが、今回のレセプションパーティーに参加するという告知が発表されていたからにほかならない。


 トランド大陸完全解放と暗黒期の終焉を切り開いた英雄達。その中でもフォールセンとそのパーティの功績と知名度は群を抜いている。


 僅かでも縁を得ようと、もしくは純粋なる好奇心、己の二つ名でもある剣技双剣を伝える為フォールセンが弟子を取ったという噂の真偽を確かめるため。


 様々な理由で集った参加者達だが、そこはさすがにそれぞれ立場も名誉もある者達。


 フォールセンに顔を覚えてもらおうと、無駄に騒ぎ立てる輩も少なく、立食パーティという形式もあって、普段は縁の少ない地方の者との顔つなぎの挨拶や、情報交換など、規模や顔ぶれは大きく違うが、何時もの歓迎レセプションと変わらぬ雰囲気のままに行われている。


 華やかではあるが、今ひとつ盛り上がりに欠けるのも仕方ない。なぜなら彼らは今回の主役ではない。主役はあくまでも探索者達だ。


 だから今回の集まりは、顔あわせが目的の前哨戦にしか過ぎない。パーティの本番は始まりの宮が終わった後。


 見事に迷宮を踏破し新米探索者達となった者達の中から、優秀な者達を招いて行われる祝賀会に他ならない。


 将来有望な探索者は、国や自分達のギルドの力となる。探索者側も上手くすれば後援者を得る機会となる。


 双方の思惑が絡み合った祝賀会が本番であるのだから、歓迎会での話の中心は自ずと、今期の有望者達の話へとなっていく。


 しかしその有望者の中に混じったあまりに突拍子もない存在のせいで、尾ひれの付いた噂話が静かに会場内には蔓延していた。



「私は弟子殿と王女殿下が決闘を行ったと聞いたが?」



「それが巷に流れる噂レベルですが、どうもサナ王女が弟子殿に襲いかかったのが真実らしいですぞ」



「あら私が耳にしたのは真逆で、弟子の娘さんがサナ王女を鍛錬に託けて殺害しようとして、最終的に噛み殺そうとしたとかなんとか」


 

 いくつかの違いはあるが、遠方からの来訪者達が耳にした噂は、フォールセンの弟子とロウガ王女が不仲で殺し合いにまで発展したというものだ。


 しかもその内容も滅茶苦茶で、過激な物となると、弟子が王女の顔面が変形するまで殴り潰したや、王女の翼を食いちぎっただの、どうにも弟子の凶暴性を強調した噂話が多い。


 しかしそれも少し前の話で、最近はその弟子の姿を見た者が皆無だという話も出ている。


 王女に返り討ちにあったやら、罪に問われて投獄された、はたまた自ら逃亡したやらなんやらと、これまた色々な噂が流れている始末だ。


 その弟子というのが相当な問題人物だというのは、ロウガに属する者達が口を揃えて話すのは真実なのだろうが、あまりに噛み合わず、そして過激すぎる噂話に、僅かに訝しんだ顔を浮かべた列席者たちは、自然と目を会場の中央へと目を向けた。


 そこではフォールセンや主催者であるロウガ前女王ユイナ。そしてその夫であるソウセツが中心となり挨拶や歓談が行われている。


 もし噂話に1つでも真実があるならば、孫であるサナが、フォールセンの弟子によって命を狙われたという事になる。


 だが堅物で有名で何時も硬い表情のソウセツは別として、穏やかな微笑を浮かべ応対するフォールセンやユイナの様子からは、その巷で流れる噂話の欠片も見てとれない。


 噂話は所詮噂話にしか過ぎないのだろうか?


 そんな疑問を誰もが心の片隅に抱きながら、レセプションパーティは特に問題もなく進行していった。







 王城の奥まった一室。レセプションパーティ終了後、ユイナの執務室には部屋の主であるユイナだけでなく、ソウセツとその相談役であるナイカ。そしてフォールセンと家令メイソンが集まっていた。



「やれやれ。久しぶりに人前に出ると疲れてしまうな。メイソン。屋敷に戻ったらこちらの名刺の整理を頼む。それと茶も頼む。久しぶりに話しすぎて喉がからからだ」



 フォールセンはユイナに勧められソファーに腰掛けると、渡された名刺の束を、横に控えていた家令のメイソンへと預ける。


 

「畏まりました。ではユイナ様。キッチンをしばしお借りしてもよろしいでしょうか。南方の珍しい茶葉が手に入りましたので皆様もお試しください」


 

 主から渡された名刺を傷つけないように布で来るんで足元の鞄にしまったメイソンは、別の鞄から小さな茶箱を取り出してみせると、部屋の主であるユイナへと、執務室に併設された小さな給湯室の使用許可を求めた。


 

「ふふ。兄弟子のお茶を久しぶりに楽しませていただきます。道具は好きに使ってください。それと新しいブレンドの香り茶もあるので、よろしければお屋敷でお使いください」



 なにかと忙しい義母の名代にされた年下の少年召使いに、古式の茶の入れ方を教わったかつての日々を思い出したのか、ユイナは楽しげな笑みと共に快諾する。


 茶はユイナの趣味の1つ。趣味の世界では立場は関係ない。そして茶の腕前と知識では本職の家令であるメイソンに教わることはまだまだ多い。


 メイソンが給湯室へ向かうとすぐに、フォールセンの対面に腰掛けたソウセツが頭を下げる。



「祖父殿。この度はお手数をおかけし申し訳ありません」



「気にするなソウタ。ロウガ王家と私が不仲だという噂は、あまり良くない影響を生む。この程度は手間でも何でもない」



 ケイスとサナが不仲という話が広まった根本には、ケイスがソウセツの血を引くのではないかというこれまた根も葉もない噂が起因となっている。


 そしてそれから派生して、ソウセツやユイナとフォールセンが不仲になっているという噂まで出てくる始末だ。


 噂は所詮噂だと放っておけば、その噂に利があると考えた不埒な輩によって、いつの間にやら真実めいた話としてされかねない。


 だからフォールセンがわざわざ歓迎会に出席し、ソウセツ達と席を一緒にして、噂を払拭する必要があった。



「謝るのであれば私の方です。申し訳ありませんフォールセン様。ケイス殿の評判や噂話の押さえ込みの策がほぼ裏目に出てしまって」



「ありゃユイナ様のせいじゃないだろ。お嬢ちゃんが規格外過ぎるのが原因でしかないよ。旦那。どうも下手に手を出すと余計事態が複雑化するタイプだよあれは」 



 笑みを引っ込め憂慮を浮かべたユイナに、ナイカが仕方ないと慰めの言葉を掛ける。


 ケイスの存在を隠すのは、フォールセンに弟子が出来たと広まっている以上、いまさら無理な話。


 さらにケイス自身の容姿が目立ちすぎるうえに、剣技に至ってはフォールセンでさえ認めるほどの才を持つ。


 せめてケイスが隠しているであろう真実を他者に広めないようにするために、ユイナが建てた策も、武闘大会を発端に、ことごとくケイスの予測不能な言動で打ち破られ、悪評へと変わる。


 これで噂になるなというのが無茶な話だ。



「とりあえず今はあたしの方で、噂の出所を確かめて、あまりよろしくないのはチェックしてる。立場のある総大将やユイナ様には不向きな裏方はこっちで何とかするつもりだけど、今の所は面白半分、真実半分だね」



「直接的な被害がなく、娯楽としてみれば面白いのだろうな。あの馬鹿娘は。申込日に私設の検問を張っていた者達には釘を刺しておきましたので、しばらくは大人しくしていると思います」



 ケイス本人を大人しくさせることは不可能。なら周りを押さえつけるしかない。ソウセツ達の行動は直接的な解決策ではなく、場当たり的な緩和方にならざるえない。


 幸いにもケイスは講習会が始まって以来、単独で街中に姿を現していないので、不特定多数との揉め事は発生していない。


 もっともその代わり、同じ受講者と色々と起こしていて、それが漏れ出し新たな尾ひれの付いた噂の元凶となっている。


 王女であるサナと、ケイスがしばらく前に殺し合いをしたという噂が、最近ではもっとも大きな話題となっている。



「それこそ苦労をかけるな。それよりもサナ殿の様子はどうだ? ケイス殿と剣を交え壁にぶつかってしまったという話だが」



 食い殺そうとしたやら、サナが奇襲をかけたというやたらと誇張した噂ではなく、フォールセンの耳には真実がしっかりと伝わっている。


 発端はケイスが何者かをサナが確かめようとしたことであり、結果はケイスが何時ものごとく自分を現す剣で答えた。それだけだ。


 しかし問題は、ケイスが天才だということ。天才も自覚し、公言しながらも、他者が理解出来ない高みに、その才がある事だ。



「セイジという若者と鍛錬を繰り返しています。どうすればもう一度あの一撃を出せるかと悩んでおります。幾度か助言をしようとしましたが、自分で身につけなければ、気がつけなければ意味がないと断られています……我が孫ながら頑固なことです」



「ソウタ殿に似たのでしょうね。自分が定めた限界を、悠々と超えられてしまったのです。サナも腕に自信を多少ながら持っていた分、悔しくて悔しくて仕方ないのでしょう」



「実戦中にワイヤーを使って槍の軌道を微修正して、さらなる高みを見せるかい。しかも元は風系魔術を使うって話だとかいうけど、旦那の方でその技、もしくは使い手に思い当たるのはあるかい? さすがに地下の成仏した連中に今更、聞けやしないしね」



 失伝した東方王国系の武技、魔術をケイスが継承している事は、ここにいる全員が知っている。


 その継承手段が、地下で亡霊化していた旧東方王国狼牙兵団から教わったという、冗談のような真実だということも。


 だが東方王国最強と謳われていた狼牙兵団の往時の姿を知る者となれば、フォールセンしかこの場にはいない。



「風系の魔術は精密操作が難しくなりがち。対集団戦ならば得意手だが、個人相手となるとな。しかも闘気と魔術の併用となれば……槍術にも長けていた先代の宋雪殿だけであろうな。もしユキ達が知っていたならば、ソウタにも伝わっているはずだが」



「流れの中に組合わせた技法ならありますが、融合させ1つの技として使う物は伝承されていません。闘気と魔力の同時使用は両方のいいとこ取りしようとして、結局中途半端になりやすいから、横道に逸れるのは槍を極めてからにしろ。ただしそこから先は私も知らないから、自分で切り開けと」



 首を横に振ったソウセツは、懐かしさと恥ずかしさの入り交じった微笑を浮かべる。


 次々に技を教わろうとする自分と、1つ1つを着実に己の物としろという義母。けち臭いと散々反抗していた自分が、今では同じように一つ一つ着実に歩めと伝えているのだから、若いときの自分がどれほど未熟だったかと反省しきりだ。



「ってことは、ユキさんやカヨウさんにも継承されていない技ってことかい。伝える時間が無かったのか、それとも伝えるにはあの人達でもまだまだ未熟だったってことだろうね……アレは東方王国時代の生き残りっていわれた方がまだ納得できそうだよ」



 主と同じ二つ名の双剣と呼ばれていた邑源姉妹は、フォールセンには及ばずとも、天才、もしくは化け物と呼ばれる類いの者達。


 旧狼牙が龍達によって滅びたのは、ユキが16,7才、カヨウに至ってはまだ10にも満たない時代。


 いくら才能があろうとも、まだまだ道を歩み始めたばかりのひよっこだったのであれば受け継げなかった技があるのも当然だ。


 だからこそ余計にケイスの異様さが際立つ。武技は威力を落としながらも可能とし、魔力は持たぬ故に魔術技の伝承は不可能であろうが、その全てを知識として吸収し、己の物としてみせる。


 しかも亡霊達と邂逅したたった一晩で。 

 


「そちらの方がユイナ殿の苦労もずいぶん減ったであろうな。だが壁が大きくとも、サナ殿ならいつか超えてみせるだろう。なんといってもソウタとユイナ殿の孫であり、ユキの心を受け継いでおる。オウゲンは諦めるという言葉を知らぬ一族であるからな」



 自分にとっても孫と変わらないサナが、鍛錬を繰り返しているときいたから、フォールセンは安堵すると、話のタイミングを見計らっていたのか、絶妙なタイミングで戻ってきたメイソンが一礼と共に、薄茶色の液体で満たされたカップを差し出す。


「……良い香りだな。メイソン。茶葉も良いが腕も上げたな」 



 カップから立ちのぼる香りを、フォールセンは目を閉じて楽しむ。懐かしい香りはフォールセンの故郷である南方大陸ルクセライゼンの極一部の高地で取れる稀少な茶葉は、一般には流通しておらず、知る人ぞ知る銘茶。


 皇太后が住まう深き山脈の奥地。聖地【龍冠】の近隣でしか栽培されていない皇室専用の茶葉になる。



「ありがとうございます。カヨウさんが時事の挨拶と共に送ってくださった何時もの品ですが、ケイス様も大変お喜びになっておられました」



 未だカヨウからはケイスに対する連絡はなく、時折時事の挨拶として手紙がしたためられるだけで、通常と変わらないやり取りだけがされている。


 

「喜ぶねぇ。あの娘、本当に正体を隠す気があるのか不安になるねぇ……それでその本人はどうしてるんだい? 姫様とやりあった後は静からしいけど、ちっとは自重したのかい。ガンズ坊も忙しいから一々呼び出すわけにも行かないからねぇ」



「サナとやりあった際に怪我を負ったらしい。幸い軽傷だが、どうせ禄に療養もせず剣を振るうえに、一度サナと揉めた以上また色々起こすだろうから、パーティメンバーの提案で出陣式まで薬で寝かせておけとなったらしいな」



「文字通り寝た子は起こすなかい。英断に感謝だよ。これ以上仕事を増やされたらたまったもんじゃないからね」



 茶を飲みながらナイカがしみじみいったひと言に、この場にいる誰もが無言で頷き同意していた。









 うっすらと瞼を開くと、何かが目の前に浮いている。


 視界が霞んでよく見えないが、精々15ケール(㎝)ほどの大きさの生物だと、無意識的に判断する。



「もう目が覚めたのか? まだ半分近くしか薬の効果は抜けていないのに、どういう身体をしているんだお前は」



 その何かが何か声をあげているが、半分寝ている今のケイスの頭では理解が出来ない。


 ただとりあえずお腹が空いていたので、とりあえず寝起きとは思えない、さっとした動きで、手を伸ばして捕まえた。



「……ご飯」



 その何かを丸囓りしようと口元に運ぼうとするが、その前に手の中のそれが大きく開いたケイスの口の中に何かを放り込んだ。


 途端に口の中に甘い味が広がる。


 肉も好きだが、甘いものは大好きなケイスは、口の中に入ってきたその甘い小さな塊をころころと転がしながら、久しぶりの甘味に意識を持って行かれる。


 しばらくすると、まだまだ眠いが少しだけ意識がはっきりして、周囲の様子をうかがい知るには問題は無い半覚醒状態へとケイスは一気に浮上する。


 様々な生薬と魔法薬の匂いが微かに香り、カーテンでしきることが可能なベットが横並びに置かれている。


 講習会の受講生達が一時的に寝泊まりしているロウガ支部が所有する鍛錬所の医務室のベットの一つにケイスは寝かされていた。



「護身用とか言う訳の判らない理由で、飴玉を持たされた理由はこれか。患者に喰われそうになるのはさすがに初めてだな」



 頭から丸かじりにされそうになったというのに、やたらと落ち着いた声が手元から響いてきて、ケイスは己の手へと視線を落とす。


 手の中には、背中に羽根を持つ小妖精族の青年が、がっちりと握っていた。

 


「ふぁぁ……なんだファンドーレか……お前は固そうだから、あまり美味しそうじゃないな。……小鳥かと思ったのに残念だ」



 ケイスが半ば無意識で食べようとしていたのは、ウォーギンからつい先日紹介され、今期の始まりの宮に共に挑むことになっているパーティメンバーの一人小妖精族のファンドーレ・エルライトだった。



「人を見て美味そう、まずそうで判断するないかれた馬鹿娘が。早く放せ。お前は体温が高いから暑苦しい」



 普通なら、寝ぼけていたからといっても食べられそうになれば激怒したり、小鳥だったら生で丸かじりする気だったのかと、色々と突っ込み所はありそうな物だが、ファンドーレは暑くて不快そうにはしているが、その顔には焦った様子は見てとれない。



「ふぁむ……んー……眠い」



 言われるまでも無く、仲間を食べる気など毛頭ないケイスは手を開いて、ファンドーレを解放すると、ベットに半身を起こして身体の調子を確かめる。


 身体の伝達が鈍いのか、反応は緩いが特に動作に問題はない。


 ただ頭の方は別だ。何時もなら寝起きはいいのに、異常なほどにまだ眠く、どうにも舌に違和感のある味を感じる。


 最後に覚えている確かな記憶は、サナと実戦稽古をやっていて、技を放とうとしたその瞬間まで。


 そのあとは大きいが、固くて食えない鶏にかぶりついたイメージががうすぼんやりとあるが、それが夢現なのか微妙な所だ。


 

「んー……この舌に残る味……ふぁ薬か……ただ嫌な感じが無いからルディか?」



 飴玉の甘さに消されそうになっているが、口の中に少し苦みのある違和感が残っている。その味から、どうやらルディアに睡眠系の魔術薬でも飲まされたようだと判断して、ファンドーレに尋ねた。



「正解だ。お前がいては講義に支障が出るし、あまりに馬鹿で、問題行動が多く、挙げ句の果てには、ロウガの翼姫相手に喧嘩を売って、軽いとはいえ怪我をしたからな。もういっその事、始まりの宮前まで、強制的に寝かせて、怪我を治すついでに色々とおきる問題の種を詰んでおくかという事になっていた」



 ファンドーレの言葉は文だけ読めば所々辛辣だが、あまりに淡々とした口調なのでそこに悪意は感じられない。


 あくまでも事実を、事実として、そのままに伝えているだけに過ぎない。


 ファンドーレとは初心者講座が始まってからの付き合いだが、付き合いが長いウォーギンから、口が悪いと言うよりも単に歯に衣着せぬだけだと聞いているので、ケイスも不快には感じない。



「ふぁぁ、別に喧嘩などしておらんぞ。誰かと聞かれたから、剣で私を答えたまでだ」


 

 目を擦りながらケイスは間違いを訂正する。


 ケイスにとっては剣を全力で打ち合わせても、アレはあくまでも自己紹介でしかない。軽い挨拶程度の物だ。


 しかし問題が無い訳ではない。何せ自分の記憶がはっきり残っているのは、伝えようとした技を放ったところまでだ。



「むぅ……そういえばまだサナ殿に肝心の……技の芯を伝えきっておらんな。謝罪してからもう一度……やりあわねばならぬな」



「止めておけ。後数時間で出陣式が始まる。今怪我をさせるか、怪我をしたらレイネが本気で怒るぞ」



「むぅっ……それはまずいな……判った後でも良かろう……それよりファンドーレ……ご飯を寄越せ……お腹が空いた」 



 起ききっていない頭でも、レイネを怒らせるのだけは本能的な部分でまずいと理解している。

 

 どうせ剣を交えるなら、天恵をえた探索者となった後の方が、力も出しやすい。となれば今は自分の体調を最大稼働状態まで持っていくだけだ。



「どうせ起きたらすぐに飯だというだろうといって、今ルディア達が作っている最中だ。ちょっと待っていろ」



「ん……さすがルディだな……それでこそ私の友だ」



 後数時間で命がけの迷宮へと挑むというのに、ケイスはいつも通りにマイペースを保ち、ルディアの作ってくれる料理が何だろうと考え、お肉が多めだと嬉しいと暢気に笑う。


 戦いこそ全てのケイスにとって、起きたら、始まりの宮に挑む朝になっていたといわれてもなにも変わらない。


 いつも通り、お腹いっぱいになって、後は敵を斬るだけだ。










 探索者協会ロウガ支部。その正門前には、今期の始まりの宮に挑む若き挑戦者達が完全武装した状態で整列している。


 門を出た目の前の噴水広場には、下手したら数万を超えるほどの群衆が駆け付け、出陣式の開始を今か今かと待ち受けており、その大きなざわめきが響いてくる。


 もう後数分も立たずに門が開かれ、彼らのお披露目となる。


 例年であれば、この段階で挑戦者の若者達の大半が緊張の色を浮かべているのが、今年は少し違った。


 なんともいえない表情で見守るその先には、初心者講習関係者の誰もが認める問題児一行がいた。

 


「ちょっとケイス! 起きなさいって! あーもう! もたれかかるな! ファンドーレ。薬って抜けたんじゃないの!?」 



 ルディアは人目も憚らず、ケイスを揺すりながら声を張り上げるが、同じように軽鎧を纏いながらも、うつらうつらとしたケイスは、ルディアに力なくもたれかかってくるだけだ。


 その幼い美貌を余すことなく発揮する寝顔は、普段の気の強さや傍若無人な言動を忘れさせ、誰にも保護欲を抱かせるまさに天使の寝顔といっても過言ではない。 



「抜いたが、後は自分の意思で寝るそうだ。どうせこの後数日は動き続けるのだから今のうち寝だめするそうだ。それに出陣式などといっても景気づけに剣を振ることも、気にくわないお偉方の一人も斬る事が出来ないなら、寝ていた方が苛々しないともいっていたな」



 もっとも外見はいくら天使でも、その中身が変わるわけではない。


 ロウガの上層部にはケイスが嫌う汚職にまみれている者もいる。顔を見たらつい斬りたくなると普段から公言している問題児ぷりは変わらずだ。



「いあーケイらしいね。無理に起こさない方が良いんじゃない? 下手すると寝起きの機嫌の悪さで、貴賓席に殴り込んで戦闘を早々と始めるかも知れないし」



「ウィー……あーもう。簡単にいわないでよ」



 毛色のみならず完全武装で顔さえも隠したウィーが、威圧感のある装備とくぐもった声とはギャップのある、何時もの暢気な口調でそのままが良いというが、常識人なルディアとしてはそうも行かない。


 ただでさえケイスには敵が多い。それなのに出陣式などという衆目を集める場で、本当に眠いとはいえ、来賓者に対してあまりに不遜な態度をとれば、より敵意を煽る結果は火を見るよりも明らかだ。



「しかたねぇな。これでも被せて寝顔を隠して、あと横からウィーとルディアで抱え込んで無理矢理歩かせれば良いだろ。暴走しないように抑えているようにみせかけとけ」



 ケイスの頭にウォーギンが武闘会で作っていた仮面のついた覆面を被せる。


 これも武闘会でのケイスのあばれっぷりを思い出させるので、ある意味で煽っているといえば煽っているのだが、その効果はまだ限定的になるだろう。  


 後は長身のルディアとウィーで左右から挟めば、暴れないように大人しくさせて連行しているように見えなくも無いが、どっちにしろケイスの評判には悪影響だろう。



「最悪よりマシだけど、悪い結果を選ばなきゃならないって勘弁してほしいんだけど」



 始まる前から頭痛の種が尽きないが、これで自分達が参加していなかったら、ケイスはどうしていたかと考え、ルディアは、諦めと気苦労を込めた息を吐き出していると、門の横に控えていた協会所属の魔術師が、頭上に向かって雷を纏った魔術を解き放った。


 凝縮された雷弾は遥か高みまで登ると、轟音と共に弾ける。その音と共に閉ざされていたロウガ支部の門が大きく開かれた。


 

「決めてあった順番通りに先頭のお前から噴水前まで移動を開始だ! 式典終了後すぐに龍王湖へ向かって始まりの宮へ挑むことになる! 浮き足立つな! もうお前らの戦いが始まっていることを忘れるな!」 



 門の横に控えていた講師のガンズが大きく声を張り上げ、緊張した面持ちをみせていた先頭に立つ挑戦者の背を強めに叩き、送り出し始める。

 

 気合いを入れるためか先頭の挑戦者が両手で自分の頬を張ると門外へと向かって、ゆっくりと移動を開始する。


 最初の若者が外へ一歩踏み出した途端、肌がびりびりするような歓声の声が大群衆の中から上がった。


 一瞬気後れしそうになったのか、足を止めかけるが、先頭の若者が意を決し踏み出し、その後にパーティメンバー達が続く。


 最初に出ていったパーティが噴水前の所定の位置に着いてから次のパーティが出発する。


 新たなパーティが門を出て行く度に、大きな歓声が何度も上がる。中には闘技場などで既に名を馳せていた者達もいるのか、個人名を叫ぶ声も混じっていた。


 今回は前期の騒ぎもあった所為で、参加者の人数が何時もより多く、入場だけでも相当な時間が掛かっているが、観衆のテンションが下がることはない。むしろ徐々に高まっている。


 それは今回の話題となっている人物達を待ち望んでいるからだろう。


 待ち望まれている者達。


 吟遊詩人達によって謳われ最近人気を博している、ロウガ王女サナと忠実な若きサムライセイジ。


 そして大英雄フォールセンが選んだ剣技を伝える唯一の弟子であるケイス。


 最後を勤めるサナ達は最後尾に並んでいるので、列の中間くらいにいるルディア達からは姿は見えない。


 あれ以来ケイスを寝かしていたので、サナがケイスに絡んできた事はないが、どうにも意識しているのは、何度か言葉を交わした中で、ルディアも嫌というほどに気づいている。


 何をしてみせたのかまでは判らないが、よほどサナのプライドに触れる事をケイスがしでかしたのだけは間違いなさそうだ。


 好意や悪意とひと言では言い表せない感情がサナの問いかけには含まれていた。


 面倒事ばかり積み重なっていくと心労を覚えながら徐々に前に進んでいくと、ついにルディア達の1つ前のパーティが門から出ていった。


   

「あーまだダメかこの馬鹿は? どこまでマイペースだ。ケイス起きろ!」



 先ほどから出ていくパーティ達にひと言ずつ声をかけていたガンズが、ケイスの頭を撫でるように軽く叩くが、身じろぐだけで禄に反応も見せない。微かな寝息とそれに合わせて僅かに肩が上下するだけだ。


 どうやら覆面を被って暗くなったうえ、周囲の声が聞こえづらくなった所為で熟睡したようだ。 


 この様子にケイスの理解者の一人でもあり、しばらく一緒に暮らしていたガンズは起こすのは無理だと早々に諦め、その頭を覆面越しとはいえ今度は本当に撫でる。



「今までいろんな奴をここから送り出したが、この馬鹿ほど心配しなくて良い奴は初めてだな」



「逆じゃないのか親父さん。心配するだけ無駄な奴ではあるが、講師なら心配しておけ」



「あのなファンドーレ。甘く見てるとか舐めてかかって、寝ているならともかく、ケイスが戦いに関して油断するわけないのは判ってる。力を蓄えてるんだろうどうせ……何をしでかす気かまでは知らんが、探索者になったこいつはとてつもないことをしでかすんだろうな。お前らはともかくこいつを上手く使え。こいつがいればどうにでもなる。苦労している代償だとおもって楽しとけ」



 普段は協力しろや、メンバーを信じろなど、連携を重視した指導をするがケイスに関しては、そんな一般常識は当てはまらない。ケイスの動きやすいようにすれば自然と結果は付いてくる。危険ならばケイスに任せてしまえと、ある意味で無責任極まりない講師にあるまじき台詞を口にする。


 しかしそれも致し方なし。何せケイスだ。



「代償と成果が釣り合ってるかって聞かれたら、マイナス収支の方が多いって断言できますけどね。じゃあ無理しないで済むことを祈りながら行ってきます」



 ケイスと知り合ってから胃薬が手放せなくなったルディアは思ってもいない言葉を口にすると、ガンズに一度頭を下げた。


 別に決めたわけではないがいつの間にやらパーティリーダーとして仕切らされていたルディアに続いて、それぞれもひと言だけガンズに声をかける。



「次のパーティ! 問題が無いなら出てくれ!」



 前と間が十分に空いたのをみた進行係が、ケイスががぐったりとしているので訝しげな目を浮かべるが、進行を優先し指示を出す。


 その声に応えルディア達は門を越える。


 迎えたのは大きな歓声。だがそれは一度大きな波迎えた後、波が退くように近くからすぐに静まっていく。


 何となく緊張感を持った雰囲気が一気に会場内に広まっていき、ひそひそと言葉を交わす声が聞き取れないざわめきとして耳に入ってくる。



「うぁ……ウィーなに言ってるか聞こえる?」



「あー覆面と体格でケイだって気づいたみたいだね。ただこれでしょ。反応に困っているみたい」


 

「これから華々しく出立するというよりも、刑場に引き立てられる罪人といった形だからな。無理もないだろう。ウォーギン。覆面は失敗ではないのか?」



「こいつの場合は寝顔を晒しても周囲を黙らせる効果があるからな。前に酒場を壊す乱闘事件を起こした時に実証済みだ。どっちにしろ結果はかわらねぇだろ」



 何とも居心地の悪い降って湧いた静寂だが、ケイスと付き合っていればこの程度はまだマシな事態。


 これ幸いと粛々と足を進めていくルディア達が、半分を過ぎた頃、急にケイスがむくりと首をあげた。そしてなにやらゆっくりと左右に首を振って周囲を伺いはじめた。


 ケイスの行動に不穏な雰囲気を感じたルディアが周囲を同じようにみるが、呆気にとられている群衆の人だかりだけだ。




「ウィー。敵意でも感じる?」



「そんな感じはないよ。ただなんか甘、ってケイ!?」 



 敵意は感じないが、兜で顔を隠していても漂ってくる甘い匂いを指摘する前に、ケイスが跳び跳ねて、不意を突かれたルディア達の手から抜け出た。


 いきなり走り出したケイスは、怪我の影響で闘気も使えないというのに軽い身のこなしで群衆の頭を飛び越え、肩を踏み台にして、花道を外れる。


 これが貴賓席に向かっているならば、前期の悪夢の二の舞だが、ケイスが向かっているのは真逆。広場の外側だ。



「うっ、あ、あの馬鹿。アレが原因か」


 緊張感に負け逃亡しているようにもみえるかも知れないが、ケイスが一直線に向かう先にある屋台に気づいたルディアは事情を察し、手で捕まえるのではなく、思い切って鎖で縛っておけば良かったと今更ながらの後悔をする。


 ケイスが向かう先には、最近お気に入りのドーナッツ屋の屋台があった。







「はむ……ふぁむ……うまい」



 紙袋に入ったドーナッツを1つ取り出し、一口食べる度にケイスは花が笑うようなにこりと幸せそうに大輪の笑顔を見せる。


 何時もの気の強さを現す釣り気味の目もその険しさが全く霧散して、年齢よりもさらに幼い妖精のような美少女ぶりを遺憾なく発揮する。画家であればこの一瞬を描き出そうと誰もが思うだろう……平時であれば。


 各国からの来賓が挨拶をする出陣式の最中、半分寝ぼけた状態のケイスは紙袋を抱え込んだまま、幸せそうにおやつにありついていた。


 誰の言葉も耳に入れず、ただひたすらに栄養補給にいそしむ。


 普通であればこのような式典の最中にこんな行いをすればつまみ出されるか、最低でも紙袋を取り上げられる、そんな傍若無人振りだが、今のケイスはどうしようも無いと放置されていた。



「いやぁ、ケイって剣を振るのが最大攻撃かと思ってたけど、泣き顔で罪悪感を煽ってくるのも極悪だね……揚げたてで美味しそうだね」



 下手に取り上げようとして、剣を振るならまだまし。


 脳の回転が戦闘欲よりもかなり食欲よりになっているらしく、剣よりも食べ物が勝り、取り上げようとする本人が、自分が極悪人だと錯覚してしまうような、この世の終わりのような泣き顔をする所為だ。


 式典を司る儀礼局の職員が軒並み精神ダメージでやられ、ルディアの説得にも耳を貸さない。レイネでも連れてくればなんとかなりそうだが、群衆の中で転んで怪我をしたり、気分が悪くなった者も多いので、治療院の仕事が忙しく呼び出すわけにもいかない。


 幸いにも大人しく列に並び、ただ食べているだけなのでこのままでいいだろうと、ケイスに嫌な意味で慣れ始めていたロウガ警備守備隊のナイカの口利きもあり、多少の混乱はあるが式典はそのまま続行となっていた。



「物欲しそうにみないでよ。あーもう。この馬鹿だけは」



 目立たないというのは無理だと思っていたが、どうしてこうも何時も何時も予想外のことばかり起こすとルディアは嘆きたくなるが後の祭りだ。


 

「もう少し甘いものが多いと良いとぼやいていたが、もう少しじゃなかったようだな」



「ファン。先にそれ言っとけ。こいつ蜂蜜瓶ごといくほどの甘党だ。ちょっと物足りないは確実に足りてねぇぞ」


   

 こうして前期とは違った意味で、色々と騒ぎと話題になる出陣式は多少の問題は含みながらも、進行され終わりを迎えた。


 この出陣式の後、まだ探索者となる前の挑戦者であるケイスの名をかたる際に、民衆の中である二つ名が付いて呼ばれるようになる。


 二つ名は高名、悪名問わずその探索者を現す物で、よほどの事が無い限り呼ばれないのだが、誰がいつの間にやら呼んだその二つ名は、すぐに定着するようになる。


【馬鹿のケイス】


 あの馬鹿というひと言で誰のことを指すのか。ロウガでは常識になる二つ名が、やがて【赤のケイス】となるのは、まだ先の話。


 だが出陣式の騒ぎなど、まだ前奏曲ですらない。


 天才による本当の狂想曲は今幕を開けはじめた。

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