魔法少女が味方とは限らない
「……すげぇ」
思わずそう呟いてしまったのは仕方ないと思う。
なぜなら俺の発動した魔法による被害が無いからだ。
――あなたがイメージした光線の効果は魔獣を人間に戻す、それだけでした
――他の効果を一切考えていなかったので周りに影響を与えない魔法になった様です
な、なるほど? つまりあれか。
俺が攻撃魔法ではなく所謂、浄化魔法と言えば良いのかな? に近いイメージで魔法を使ったから周りに被害が出なかったと。
――概ねその通りです
そうか。そう言えば今更だけど俺、脳内で会話してるな。
さっき思わず声に出してたけど必要無かったな。
――客観的に見れば独り言を話す危ない人ですね
やめて! 言わないで!
――あるいは剣に話しかける危ない人ですね
どっちにしても危ない人じゃん! いやだー!
「あの!」
俺が脳内で謎の声とくだらないやり取りをしているとマーズが話しかけてきた。
「な、なに?」
「すごかったです! また魔獣を人間に戻しただけじゃなく、剣を召喚するなんて!」
マーズは感動したのか歓喜と尊敬が混じった表情で俺を見ていた。
いや、待って俺、剣は召喚していないから!
勝手に表れただけで最初は自分のかさえ解らなかったからな!?
――せっかく助けたのに勝手に表れた扱いは無いんじゃないですか?
なんか謎の声が拗ねたぁ!? と言うか今の言い方だとこの声の正体って剣?
剣なのか!? え? 俺の剣喋るの? 自我あるの!?
「まるで勇者みたいでした!」
……勇者? 俺が?
「いや、さすがに勇者は言い過ぎ――」
「言い過ぎじゃありません! 最初は見た目から魔法少女の仲間、男性なので魔法使いでしょうか? と思いましたが、まさか、初戦で魔獣二体相手に善戦して、それだけじゃなく魔獣を人間に戻してしまうなんて! 勇者以外の何者でもありませんよ!」
「お、おう」
興奮状態なのか早口で捲くし立てるマーズに俺が戸惑ってしまう。
――良かったですねぇ。ファンが出来て
なんか声に嫉妬が混ざってますよ!? なにに嫉妬してるの!?
「それにしてもあの技は……」
「ああ、あれ?」
もしかしてどうやったのか知りたいのか? それも当然か。
周りに一切被害が無いからな。
だけど俺に理由を説明しろと言われても困るのだが。魔法の使い方は基本一緒のはずだし。
「まるで勇者ロボの様な勇ましい太刀筋でした! あれは……そう! エ○ス○イザーやフ○イバ○ドの様な! 技はカ○ザーフ○イム、いえ、真○唐○割りでしょうか……。いったいどのような技がモチーフに?」
この娘、スーパーロボットオタクだぁあああああ!?
そう言えば魔法を使った時に某勇者王みたいなセリフを叫んでたな!
しかも俺に言った「まるで勇者みたい」の意味は勇者シリーズみたいだったってことかよ!
ちなみに俺の技のモチーフは――
「えっと、仮○ラ○ダーブ○イドキ○グフォ○ムのロ○ヤルスト○ートフ○ッシュだけど……」
確かあれって剣からビームを放っていた覚えがあるからな。
「…………」
「…………」
「あなたにはガッカリです」
そんなことでガッカリされても!?
――そう言えばマスターは特撮オタク、特に○面○イダー好きでしたね
なんで知ってるの? と言うかマスター?
いやまあ、この声の正体が剣なら確かに俺は持ち主だろうけど。
「《サニー・レーザー》」
「!? 危ない!」
俺とマーズがどうでもいい会話をしていると突然、上空から熱線が降ってきた。
俺はマーズを抱きかかえてギリギリで回避した。
「ちっ」
舌打ちした上空に目を向けるとウラヌスと呼ばれた魔法少女と言う名のコスプレお姉さん(流石におばさんとは言わない)がいた。
「何しやがる!」
「先輩!?」
俺はマーズを降ろし、ウラヌスに剣を向ける。
「その男を魔獣の一種として討伐するだけです」
「な!? 誰が!」
「何言っているんですか!?」
誰が魔獣だと俺が口にする前にマーズが反論する様に捲くし立てる。
「この人のどこが魔獣なんですか!?」
「変身したこと、魔獣と互角に戦えること、魔法を使ったこと、どれも男には出来ないことです。もし出来るとするならその男性は魔獣と言う結論に達しただけです」
屁理屈にもほどがある!
「なんでそう言う結論になるんですか!? もしかしたら性転換した元女性の可能性もあるじゃないですか!」
いや、それもおかしいから。
確かに最近、男性が減ったせいか性転換する女性も増えたけど俺は違うよ!
俺は生まれた時から間違うことなき男だから。養殖物じゃなく歴とした天然物だから。
おかしいな。シリアスな場面のはずなのに今もくだらないこと考えているぞ!
――あのマーズと言う娘は以外……でもないですけど天然ですね
本当にな!
「その可能性があったとしても男の姿をしている方が悪い」
口調違う!? ああ! よく見るとウラヌスも呆れている!
なんだ、この空気!?
「とにかく退きなさい。《クラウディ・バインド》」
ウラヌスが魔法を唱えるとマーズに雲が纏わり付き腕と脚を雲によって固定された。
「きゃ!」
脚が固定されてバランスが崩れたのかマーズは倒れこんだ。
身動きが取れないようだ。
「大丈夫か!?」
「はい……。でも、とても動けそうにないですっ」
なら、俺の剣で! 俺が剣で雲を斬ろうとすると叫ぶような声が聞こえた。
――マスター! 足元を見て!
「!?」
俺の足元に黒い雲がくっ付いていた。
「!? 気付かれた!? くっ《ライジング・サンダー》!」
危険を感じた俺は後方に向け跳躍した。
ピシャーン!
すると俺がいた場所から上空に向けて雷が昇って行くのが見えた。
本気で殺す気か!
――マスター、こちらも応戦しましょう!
わかってる! 話し合いは無理みたいだしな!
「《ブリザード・――」
ウラヌスの頭上に暗雲が立ち込める。
――マスター、彼女の魔法は天候に関するものの様です!
と言うことは、今度は雪か! どうすれば良い!?
――バリアをイメージしてください! 回避はおそらく無理です!
「ガトリング》!」
ウラヌスの魔法が発動すると暗雲から雪の弾丸が無数に降り注いできた。
「!」
俺はバリアを、強く堅いバリアをイメージし、剣を盾にする構えをとると魔法は発動した。
ガガガガガガガガガッ
俺の前には五芒星の魔法陣が雪――氷の弾丸を防いでいた。
こんなもん喰らったら体中、穴だらけだぞ!
――集中してください! バリアがもちません!
言われて魔法陣を見ると所々にひびが入っている。ならもっと頑丈なのをイメージする!
銃弾だろうがミサイルだろうがビクともしない鉄壁のバリアを。
「でも、やられっ放しはムカつくな!」
――でしたら、案が有ります
「聞こう」
――無意味に偉そう!?
やがて、氷の弾丸は降り止んだ。
「ふう、魔力を使い過ぎましたね」
ウラヌスの顔に疲労が浮かんでいた。
「勇者さん! 返事してください!」
マーズが俺を呼びかける。そう言えば名前教えていなかったな。
「無駄です。魔法を使い慣れてない男ではあれを耐えられるわけが――」
「無いことは無いぞ」
「!?」
ウラヌスが声の聞こえる方へ振り向く。だが遅い。
なぜなら俺は今――
「油断し過ぎだ!」
ウラヌスの横から飛び掛かっていた。
謎の声……謎の声と言うのも面倒だな。後で名前聞こう。
で、謎の声の案とはバリアを張りながら建物の間に移動。その後、建物を登りウラヌスに近寄り不意打ちを行うこと。
まあ、俺が声をかけたことで不意打ちの意味無くなったけどな。
――なんで、不意打ちしようとしてたのに喋ってしまうんですか!
いや、ドヤ顔してるのがムカついて、つい……。
反省はしている! だが後悔はしていない!
――言ってる場合ですか!?
「くっ!」
飛び掛かった俺を避けようと高度を上げようとするウラヌス。
逃がすか!
「うらぁ!」
辛うじて足を掴むことに成功した。
後は――
「高みの見物は終わりだ!」
地面に向けてブン投げる!
「きゃっ!」
地面にぶつかる直前に空中で停止する。
だが問題ない。取り押さえる!
「よっ――と!」
着地して素早くウラヌスに近づく。
「っ! 《ウインド・ランチャー》!」
ウラヌスは俺に向けて風の魔法で対応する。
――あれは杖を向けた方向に風の弾丸を何発も撃つ魔法です!
さっきから連射系ばっかだな! 数撃ちゃ当たるってか!?
――むしろ質より量の精神でしょうね。身体能力の強化を!
OK!
「なぜ当たらない!?」
俺が全部回避していることにウラヌスは驚愕の表情を浮かべている。
「魔法を使うのに慣れたんだよ!」
「くっ!」
更に連射するが関係無い! 全て避ける!
そして手の届く範囲に!
「っ!」
「捕まえ――」
た。そう捕まえられるはずだった。
しかし――
ズザアアァァァァーー!
俺は倒れこんだ。




