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魔法少女≠勇者  作者: 岸寄空路
第一章 勇者≠女
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日常はいつも通りになるとは限らない

 キーンコーンカーンコーン

 帰りのホームルームが終わり俺はバイトに行くために帰宅の用意をしていると白瀬に話しかけられた。


「星司くん、朝話していたことなんだけど」

「手伝いはしないぞ」

「だから、俺が――」

「あんたは黙れ」


 昼休みの状態から復活した原嶋は白瀬の冷たい視線とツッコミを受けて平然としている。

 ……この様子だと、いずれまた宙女に侵入を試みるな……。

 誰か先生に良いカウンセラーを紹介してやってくれ……。


「あと、手伝いのことじゃなくて新しい魔法少女のことだよ!」

「……ああ、そう言えばそんな話もしたな」

「そういうことなら俺に――ヘブッ!!」


 原嶋がまた熱く語ろうとしていたので、白瀬はすかさず喉に手刀を叩き込んで黙らせた。

 ナイスだ、白瀬。


「……新しい魔法少女、どう思う?」

「どうって言われても……」

「本当に良い人か、演技か、ってこと」


 まあ、気になる気持ちはわかるが……。


「興味無い」

「相変わらずだね~」

「気にするだけ無駄だ。遭うかどうかもわからないしな」


 遭わなければ問題に巻き込まれることもない。

 魔獣化現象も起きないことを祈るしかないんだ。魔法少女も魔獣も出会わないのが一番だ。


「魔法少女のどこがいいんだか……」

「なんだと! それは聞き捨てならないぞ星司くん!」


 口調がいつもと違うぞ? あとなぜに、くん付?


「あの可愛らしさと美しさを兼ね備えた服! カラー剤を使わずに染められる美しき髪! 魔法少女の魅力を引き立てるメインウエポンである杖! そして、なんといっても箒に跨り空を飛んでいる時に見えるパン――」

「黙れ」

「ゲフゥッ!!」


 白瀬のドスの利いた声が聞こえた瞬間、原嶋の腹に白瀬の容赦のないコースクリューブローが叩き込まれた。

 あれはきつい……。

 というか原嶋、最後のは最低すぎるぞ……。


「で、どう?」


 原嶋のことをなかったことのように振舞う白瀬。

 当の原嶋は苦しそうに膝をついているが、まあ、仕方がない。


「さっきも言っただろ興味無い」

「少しは気にしようよ」


 苦笑した白瀬は、それ以上は特に聞いてくることはなかった。

 なにがそんなに気になるのだろうか。まあ、白瀬はこういう時やたら勘が鋭いし、心に留めとくぐらいはしといた方がいいだろう。


「……そういえば、生徒会の仕事があるんじゃなかったか?」


 朝、白瀬が言っていたことを思い出した俺は白瀬にそう伝える。


「……あ! いけね!」

「俺もバイトあるし、帰る」


 店長マスターは遅刻しても怒る人じゃないけど、迷惑掛けるわけにはいかないし。


「じゃあ、私は生徒会室に行くから! また明日ね~。」

「また明日」

「また明日な!!」


 白瀬は手を振りながら教室を出ていく。生徒会役員なんだから廊下走るなよ……。

 あと――


「……いつの間に復活した?」

「細かいことは気にするな。さっさと行こうぜ!」

「しかも、付いてくる気かよ……」


 マイペースな原嶋であった。



***



 カランコロン

「いらっしゃいませ」


 ここは喫茶『ミルキーウェイ』俺のバイト先で空生さん達夫婦のお店だ。

 俺は、ここでウエイターとして働いている。繁盛している、というほどではないが客足は多い。

 空生さんの夫ことマスター曰く、「星司くんがバイトし始めてから、女性のお客様が増えて助かるよ」とのことだが、もとから女性客が多かったと思いますが……。

 まあ、うちの学校の生徒がよく来るようにはなったかな。

 女子の熱のこもった視線なんか感じない! 決して!


 カランコロン

「いらっしゃいませー」


 再びドアベルが鳴ったのでお客様にあいさつをする。


「兄さま、おつかれさまです」


 そこにいたのは、桜花だった。

 桜花は、俺がバイトの日はミルキーウェイで宿題をしたり、マスターの息子である空生流星くんと遊んで過ごしている。

 ……流星くんは、お世話になっている空生さんの息子だから一応見逃している。手出ししたら許さんが。


「桜花、いらっしゃい」

「桜花ちゃん、こんにちは」と原嶋が桜花にあいさつをする。


 原嶋はいつも「ミルキーウェイは女性客、しかも美少女多めだから声を掛けてもらうのを待つ!」といって入り浸っている。

 こいつはカフェで格好付ければ向こうから声を掛けてもらえると思っている。

 そんなことするよりナンパした方がましなような……。まあ店でナンパしていたらたたき出すけどな。


「こんにちは、原嶋さん」

「いらっしゃいませ、桜花ちゃん」

「こんにちは、ますたー」


 マスターにもあいさつした桜花はカウンターの壁際に座る。今日は宿題するようだ。


「桜花ちゃん、はい、どうぞ」


 マスターは座っている桜花にリンゴジュースを差し出す。


「ありがとうございます。ますたー」

「……て、マスターそれ――」

「サービス」

「悪いですって、ちゃんと後で払いますから」

「いいって、いいって、兄妹二人だけで大変なんだから、そんなに気にしなくていいよ」


 マスターは兄妹二人で暮らしている俺達にいつもこうやってサービスしてくれる。


「あまりやり過ぎると奥さんに怒られますよ?」

「ジュースぐらいなら大丈夫だって」


 以前サービスしすぎて奥さんに怒られたことがあり、それ以来自重しているらしい。


「ジュースならだいじょうぶですか?」

「……怒られるのはマスターだし飲んでもいいよ」

「~♪」


 桜花は好物のリンゴジュースを飲めてご機嫌である。


「怒られた時に助けたりしないのか?」


 原嶋の疑問はもっともだが……。


「助け舟出しても意味ないからな……」


 前にマスターが怒られていた時に空生さんを俺が宥めて、その場は収まったが、後に流星くんから聞いた話では目が笑っていない奥さんに笑顔で説教されたらしい。

 ちなみに、流星くんは怖くて避難したそうだ。

 というか、流星くんどんだけ空気読めるの!



 少しして、宿題が終わった桜花は友達ともにどこかに遊び行った。

ちなみに俺についてきた原嶋は軽食だけ食べたあと、午後四時を過ぎた辺りで客も減ってきたのでとっとと帰った。


「桜花ちゃんは、魔法少女にならないのかい?」


 仕事が途切れ手持無沙汰になったのでマスターからケーキのレシピを習っていると、唐突に質問された。――魔法少女か。


「……魔力ありませんから」

「……ああ、それは仕方がないね」


 そう、当然と言えば当然だが、魔法少女になるには魔法少女への変身アイテムを使うための魔力が必要だ。

 魔力の有無はジケルヘイトが開発した検査用の装置を使い測定される。

 魔力の強さは数値で表され、魔法少女なら最低でも三十以上は必要である。

 ちなみに桜花は零である。これは非常に珍しくどんなに魔力の低い少女でも最低十はあるため文字通り魔力がないことになる。


 マスターは「残念だね」というが桜花は気にしていない、なぜなら――


「元々、桜花も魔法少女になる気は無かったそうですし」

「そうなのかい?」

「俺も魔法少女には反対でしたし……」


 そう言った俺にマスターは「危険な仕事だしね」と言い納得するが、単純に俺は魔法少女が嫌いなだけだ。五年前のあの事件がきっかけで――


「ん?」


 突然、店の外が騒がしくなった。


「何かあったのかな?」


 疑問に思って首をひねっていると店に男性が慌てた様子で息を切らせながら入ってきた。


「はあ、はぁ、空生さん! 魔獣が! 魔獣が現れた!!」


 ――正直、もしかしてとは思っていたが一番考えたくなかった可能性。

 とにかく、早く避難しないと危険だ!

 ――確か桜花は公園で遊ぶって言っていたな。


「魔獣は今どこに!?」

「商店街の反対側に現れたみたいだ」


 息を整え、少し落ち着いた男性はそう言った。まだ、間に合う!

 桜花達が遊んでいる公園は商店街の真ん中ぐらいの位置にある。

ミルキーウェイは、商店街の端の方だ。魔獣がどんなタイプかわからないが、桜花もきっとこちらに逃げているはずだ。

 魔獣に追いつかれる前に、桜花と合流できる!


「マスター! 俺は桜花を迎えに行きます!」

「星司くん、気を付けて!」


「息子も一緒にいると思うから頼むよ!」マスターの言葉に頷き、桜花が心配な俺は慌てて店を出た。

 ――無事でいてくれ桜花!


 逃げ惑う人とすれ違いつつ、桜花を探しながら商店街を駆け抜ける。

 ――桜花、どこだ。

 時間がどれくらい経ったのか。――実際は短い時間だと思うが、桜花が見つからなくてどんどん焦って余裕がなくなって行き、それが近付いていることに気付かなかった。


 ズン! ズン!


 特撮で聞くような大きな足音が聞こえ思わず固まってしまう。

 ――まさか。そう思った時には既に遅かった。俺の目の前に魔獣が現れた。

 赤い色の巨体をしていて、眼は理性がない化け物であることを強調するように瞳がなく、口の上下からでかい牙が出ている。

 あの魔獣は確か“オーガ”という魔獣だったはずだ。テレビでも何回か見たことがある。

 今のところオーガと俺の距離は十メートル程だが、魔獣の身体能力ならあっという間の距離だ。

 ――死んだかもしれないな。


 死の気配を感じ取り、体が動かない。

 ――このままじゃほんとに死ぬ。そう思い少しでも距離を取るために後退する。

 しかし、オーガがこっちに気付き近づいてくる。


「くっ!」


 本格的に命の危険を感じたことで死の恐怖より生存本能が勝ったのか、体が動くようになり急いでその場を離れる。

 だが、オーガは、なぜかこちらを追いかけてくる。


「――くそっ!!」


 追いつかれる! 自分の命をあきらめかけた時――



「シューティング・ファイア!」


 女の子の声が聞こえたと思った瞬間。


 ドカーン!


 火球がオーガの頭に直撃した。



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