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魔法少女≠勇者  作者: 岸寄空路
第二章 勇者の飛行方法≠箒
16/22

女子が甘い物嫌いなわけが無い

遅くなってしまい申し訳ありません。

「……はぁ」

「……元気がないけど……大丈夫……?」


 俺が図書室で本を読みながら溜息をつくと青波が心配してくれた。この学園で俺の心配してくれるのは赤理以外にもいてくれるのは本当ラッキーだ。

 ……敵だらけだと精神的にもたないからな。


「空を飛ぶのが……怖い。如何すれば良いと思う?」

「……飛ばなければ……良いと思う……」


 ですよねー。


「でも、今飛べるようにならなきゃ後々困りそうなんだよ」

「……じゃあ……慣れろ……?」


 なぜ疑問形?


「青波はどうだ? 初めて空を飛んだ時、怖くなかったか?」

「…………」


 あれ? なんか様子がおかしい?


「……怖くは無かったけど……」

「けど?」

「……誰かと飛ぶのは……怖い……かも……?」


 だからなぜ疑問形?


「ああ、なるほど空中でぶつかるかもしれないしな」

「…………うん……」

「一人で飛んだ方が気楽だしな」

「…………」


 う~ん。なんかあるのかな? まあ、迂闊に踏み込む訳には行かないな。そこまで気軽に尋ねられるほど親しくなった訳じゃない。青波から言い出さないのなら聞かないでおこう。


「こんにちはー」


 俺が考え込んでいると赤理が飛び込んできた。文字通りに。換気の為に開けていた図書室の窓から箒に乗って入ってきたのだ。しかし、勢いよく入室したのに本棚に衝突しない様に器用に動いてブレーキを行っている。

 ……もしかしていつもこんなことしているのか?


「……赤理……図書室では……静かに……」

「ごめん、ごめん」


 赤理に注意する青波だが、その目には諦めの色が混じっている。……ああ、何度も注意しているんだな。そして、言う事を聞いたことは無い、と。


「あ、星司くんお疲れー」

「あ、ああ」


 俺が青波に同情した眼を向けていると赤理が俺に気づいて挨拶をする。


「と言うか、赤理は何しに来たんだ?」

「青波ちゃんと甘い物でも食べに行こうかと思ってー」

「……甘い物……!」


 おおう、急に元気になった。やっぱり女の子は甘い物が好きなんだな。


「二人は仲が良いのか?」


 今更だが俺は二人が会話するのを初めて見る。自然に会話していたのですぐに聞けなかったので確認のために訊ねる。


「うん。だって同じチームだし」

「そうなのか?」

「……うん」


 へぇー。そう言えば魔法少女はチームを組んで行動するんだっけ。

 ……でも初めて赤理と会った時は一人で行動してたよな。なんでだ?


「後ね、新刊も出てるから一緒に買いに行こうー」

「……なん……だと……!」


 そのリアクションはやめろ。とりあえず物凄くテンションが上がったのはわかったから。

 まあ、赤理が一人で行動していた理由はまたの機会に聞けば良いだろう。


「新刊って、何のだ?」

「それは――」

「秘密」


 青波がいつもの喋り方からは考えられない速度で赤理の言葉を遮った。


「秘密って隠さなくても――」

「ダメ」

「そんなに?」

「絶対」

「……別にそこまで気になっている訳じゃないから話さなくても良いぞ」


 しかし、なぜ秘密にしたがる。赤理の様子だと変な本を買う訳じゃなさそうだし……。


「それじゃ私達は行ってくるねー」

「……じゃ……」


 そう言って赤理は青波を箒に乗せて連れて行った。校外に行く前には降りろよ。


「……俺も帰るか」

『そうですね』


 あ、ステラが起きた。


「冷蔵庫の中身はまだ余裕あったかな?」

『念のため買い足すべきかと』


 俺達は商店街に向かうのだった。




***




「――他に買う物はないよな?」

『そうですね……』


 買い物を終えて、そろそろ帰宅しようと考えていると。


『マスターはお菓子作り得意ですか?』


 謎の質問をされた。


「まあ、たまに桜花に作ったりバイト先で手伝いぐらいはするけど……それがどうかしたか?」


 なぜ今そんな質問をするのか意図が解らない。


『いえ、周りの女子が敵しかいないなら甘い物で籠絡すると言う策を考えまして』

「まさかの餌付け!?」


 さ、流石にそれは上手くいくとは思わないんだけど……。


「俺が作ったのなんて受け取らないと思うが……」

『確かにただ渡すだけでは受け取らないでしょう。まずは赤理さんにプレゼントしてクラスメイトの目の前で食べさせるのです』


 なぜ?


『赤理さんは美味しい物を本当に美味しいそうに食べる方です。実際、赤理さんが食べたお菓子を次の日に他のクラスメイトの方達が食べている姿を見かけました』


 マジで?


『つまり赤理さんが喜んで食べる様な甘い物を用意して、二回目以降は量多めに用意し他の人も食べられる様にします。赤理さんが美味しそうに食べていれば興味を持つ生徒もいるはずです』


 そんなに上手く行くか? 仮に俺のお菓子が美味かったとしても敵視されるのは変わらないと思うぞ?


『完全に取り除くのは無理ですが、緩和はされるかと思います』

「そうなのか?」


 それなら試してみる価値はあるな。


『まあ、仮に上手く行かなかったとしても赤理さんと、青波さんにプレゼントして好感度を上げればよいかと』

「なんでそうなる!?」


 好感度って! 恋愛シミュレーションじゃないんだぞ!


『あるいは赤理さんに全部渡してクラスメイトに配らせるように仕向けましょう』

「意味あるのか!? それ!」


 さっきと何が違うんだよ!


『マスターは気づいていないのですか? 赤理さんはマスターと仲良くしている為に他の女子達からのけ者にされているのですよ?』

「え?」


 マジか……。いや、考えてみれば当然か。魔法少女の存在意義を揺らがせる俺と仲良くしていて他の魔法少女達から悪印象を持たれない訳がない。

 赤理が全然気にしてないから失念していた。


『なので赤理さんにお菓子を配らせて少しでも環境改善を行おうかと考えています』

「なるほど……」


 確かに俺の所為で仲間外れにされているなら手助けすべきだな。周りが敵だらけだからと落ち込んでないで少しでも受け入れてもらえるように努力すべきだな。

 どうやら無意識に味方してくれる赤理や青波に甘えていた様だ。


「よし。なら材料を買いに行くか」

『その意気です』


 何時までも赤理達に負担を掛ける訳にはいかないしな! 気合い入れて頑張るとするか!


 俺はステラと何を作るか相談しながら買い物を続けるのだった。



次回も来週までに投稿します。

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