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魔法少女≠勇者  作者: 岸寄空路
第二章 勇者の飛行方法≠箒
14/22

図書室にはラノベが無いわけではない

 キーンコーンカーンコーン


 放課後になった。


「……はぁ」


 今日も疲れた……主に精神的に。


 春宙女学園はるそらじょがくえんに入学して二週間ぐらいたった。

 今の俺の状態を二言で言うと、周りの刺すような視線がつらい。敵意と殺意を感じて授業に集中できない。

 前の学校も女性は多かったがみんな男子に対して好意的だった。正直に言うと前と比べて天と地ほど環境が違う。

 どっちが天で地かは言うまでもないだろう。


「大丈夫? 星司くん」


 唯一俺に対してまともな対応する女の子――火ノ浦(ひのうら)赤理あかりが心配そうな声で俺を気遣ってくれる。


「……ああ、なんとか……」


 グロッキーになりながら応えるが――


「しかし、きつい」

「みんな男は獣って思ってるからね……」


 この学園では「男は魔獣になり易い。獣にはふさわしい末路ですね」とか「男が魔獣になると厄介なタイプになることが多いので場合によっては魔獣化していない者も排除することを勧めます」とかふざけたことをいう教師が多いのだ。補足すると後者の言い分は何の根拠もない暴論だ。


 そんな教師ばかりだから男を敵視する魔法少女ばかり生まれるのか……。


「空中に放り出されたけど怪我しなかった?」

「――ああ、魔法で無理矢理なんとか」

「……あの光の柱はそういうことだったんだ」


 見ていたのか。


「ごめんね。本当は助けたかったんだけど他の人達に邪魔されて……」

「気にするな。仕方がないさ」


 赤理は俺と仲良くしている為に他の女子からも目の敵にされている。なんとかしてやりたいな……。


「今日も図書室に行くの?」

「ああ、少しでも勉強しなきゃな」


 バイトの無い平日は図書室で魔法少女や魔法について勉強するのが日課になっている。


「私はパトロールに行ってくるから! 平和は私が守る!」


 初めて会った時も思ったが相変わらず赤理は正義感で溢れている。


「では星司くんも頑張ってください!」


 そう言って赤理は去って行った。気づけば他の生徒達もいなくなっていた。


「俺も図書室に行くか」



***



「いつも通り人がいなくて助かるな……」


 この学園で図書室を利用する者は少ない。理由は単純でこの学園の生徒は勉強より魔獣退治を優先しており勉学がおろそかになっている節がある。おかげで前の学園で上位だった俺は学業だけはトップテンに入れた。

 ……この学園ではあまり意味がないが。


「…………ここに一応……私がいるんだけど……」


 図書室の入り口から死角になっているスペースから見た目小学生――いやギリ中学生に見える小柄で本を読むのに邪魔だからと言う理由でショートカットと眠たげな半目が特徴の少女が現れた。


「お前以外はいないだろ」


 俺のセリフにツッコミをいれた少女は水丸みずまる青波あおば。いつも図書室におり図書室の蔵書も把握しているため『目録ちゃん』とか言うあだ名で呼ばれている。

 しかし赤理以外の生徒がそう呼んだのは聞いたことがない。と言うかそのあだ名は若干危ない。


「……今日は……何の用?」

「ああ、空を飛ぶシーンのある小説とかないか?」


 勉強しに来たのに小説を読むのか? と言いたいだろうが今日の授業で空中から放り出された身としては早々に飛行方法を習得したいのだ。

 そのためにしっくりくる自分が空を飛ぶイメージを作りたい。


「……それなら…………」


 そう言って彼女は図書室のパソコンで何かを入力し始める。


「…………これと……これとかがお勧め」

「サンキュー」


 画面に表示されたタイトルと棚番号をチェックし、早速読みに行く。


「…………」


 黙々と読み進めて行くが――


(んー)

『マスターどうですか?』


 ステラが念話で話しかけてくる。学園内ではステラは基本、他の人に聞かれない様にこうやって脳内で会話している。

 なぜこんな風にしているかと言うと――


『私みたいな存在は他にはいませんので』


 との事だ。要は余計な火種になりたくないと言うことだ。


 閑話休題。


(正直言って微妙だな)

『マスターに合いませんか』


 小説自体がつまらない訳ではない。むしろ面白い。だが問題の飛行シーンは竜に乗っていたり、飛行機に乗っているので参考にできない。

 流石に剣を竜や飛行機のようなサイズにはできない。そもそも戦える気がしない。

 まあ、考えてみれば空を飛ぶシーンと言われても様々なパターンがある。もっと正確にイメージしやすいのが読みたいが頼んだからって探せるものではない。


 ……仕方がない。今日は帰るか。


「青波」

「…………?」


 青波は俺に名前を呼ばれて読書を止めて顔を上げた。ちなみに名前呼びなのは本人が「苗字は最初に選ばれる一匹みたいだから」と言う微妙に口にしづらくなる理由で嫌がったからだ。


「勧めてくれた小説、面白かったぞ。ありがとうな」

「…………ん」


 無表情だが少し照れくさそうに返答した。可愛らしい……頭を撫でたくなるな。

 撫でないけどな。流石に女の子に軽々しくスキンシップと称して(頭とはいえ)触れるのは良くない。


「……帰らないの?」

「――ん? ああ、そろそろ帰宅するつもりだけど?」

「……なら……いつまで撫で続けるの……?」


 は!? いつの間にか自然と青波の頭をなでなでしていた!?


「す、すまん!」


 すかさず謝罪。怒られても仕方がない。


「……別に……気にしていない……」


 恥ずかしそうに目を背けながら青波は許してくれた。正直、子供扱いするなとか言って怒られるかと思ったけど青波は心が広かったようだ。


「ああ、でも悪かったな」

「……気にしなくて良い」


 何となく会話しづらい雰囲気になる。数分して――


「あ! もう帰らないと」


 夕食の準備しなければ桜花がお腹を空かせてしまう!


「じゃあな! 青波」

「……バイバイ」


 そう言って小さく手を振る青波だった。



シスコンの星司は小さい娘を条件反射で愛でてしまう。

ここテストに出ます(嘘)



次回は14日に投稿出来る様に頑張ります。

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