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魔法少女≠勇者  作者: 岸寄空路
第一章 勇者≠女
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情報は隠し通せるものではない

 目が覚めた時には病院のベッドで寝ていた。

 聞いた話ではウラヌスが去ったことで戦いが終わり、安心したことで気を失った俺を心配したマーズが念の為に病院へ運んでくれたらしい。

 まあ、そこで終わっていたなら特に問題は無かった。

 問題はその後だった。


「……ん」


 目を覚ました俺が最初に見たのは見慣れぬ天井だった。


「……ここは?」


 テンプレなセリフを口にし、俺は状況把握を行った。

 部屋には俺が寝ているベッドが一つとテレビ、それにイスと小さいテーブルがあるだけのシンプルな部屋だった。


「えっと……」


 自分のいる部屋を確認しても状況は進展しないのでベッドから降りようとした。

 すると、ガラッとドアが開けられた。


「あ! にいさま!」


 そこにいたのは桜花だった。


 桜花は嬉しそうに俺の元に駆け寄ってきた。


「目を覚ましたんですね!」

「桜花、ここは?」

「病院です。にいさま、体はだいじょうぶですか?」

「ああ、なんともないよ。まだ、少し疲れているぐらいだよ」

「そうですか、よかったです」


 俺がなんともないことを告げると桜花は笑顔を浮かべた。

 ああ、癒される……。ウラヌスとか言うあんな性格が悪い魔法少女と戦闘した後だからかな。より癒される。


 その後、念の為に医者を呼び体調を確認したが、ただの疲労だった。

 過労じゃなくて良かった。


「関係無い話で申し訳ないのですが、天動さんにお願いがありまして……」

「? なんですか?」


 俺の体調の話が終わり、帰宅できるとホッとしていると医者からお願いされた。

 しかし、お願い? なんだ? 疲労が溜まっているから安静にしとけとか、か?


「実はですね。今、病院前にはマスコミが集まっていまして……」

「ん?」


 それがなにか関係あるのか?


「マスコミの皆さんは天動さんに話を聞きたいそうなので、今のままでは他の患者の皆様達に迷惑ですので、出来ればで良いのですが対応していただけると……」

「………………え!?」


 ど、どどどどどういうことだよ! なんでマスコミが俺を!?


「にいさまが勇者だとテレビで放送されてましたよ?」

「マジで!?」


 どうしてそんなことに!?

 ……いや、待てよ。そう言えばウラヌスが確か……。


『はぁ!? 報道されている!?』


 …………あれか。


 つまり、魔法少女と魔獣の戦いを撮影していたら変身した俺が現れて魔獣と戦い、人間に戻し、オマケにマーズから勇者と呼ばれていた、と。


 …………そりゃマスコミも騒ぐよな……。


「はぁー。わかりました。他の人に迷惑をかけるわけにもいきませんよね……」

「申し訳ございません。私達ではどうしようもなくて……」


 仕方がないよな……。



「はあ、面倒だな~」


 病院のエントランスに移動すると遠目からでも人の群れで出来た黒い固まりが見えた。

 病院の出入り口の脇で通る人の邪魔にならない様に待機している。流石に邪魔にならない様にするマナーはあったか。


「しかし、顔バレしているとはいえ髪の色とか違うからばれないってことは――」


「無いと思うよ!」


 ドゴッ!


 反射的に原嶋を振り向きざまに殴ってしまった。


「――おお、悪い。思わず殴ってしまった」

「棒読みで言われるとわざととしか思えないよ?」


 わざとだしな。


「で、なんでここにいるんだ?」

「友人が心配でお見舞いに来たに決まっているだろ!」


 俺はお前の友人を止めることを何回も考えたが。あと、ここは病院だ。静かにしろ。


「あんたは黙りなさい」


 白瀬が原嶋の背後からヘッドロックを決めた。


「ぎ、ギブ……」

「ギブミー? OK、続行ね♪」

「ち、ちがぁ――ぐふっ」


 あ、落ちた。





「白瀬は俺の思い舞いに来てくれたのか?」

「まあね。あんなのをテレビで見れば心配にもなるよ」


 それもそうか。


「あと、こいつは星司くんと仲良くなった魔法少女がいるかも、と期待して付いてきただけ」


 白瀬が気を失っているそれの首根っこを掴みながら教えてくれた。

 予想通りだよ。


「しかし、髪の色と違うのに俺だと良く分かったな?」

「ほとんど毎日、学校で会ってるからね。流石にわかるよ~」


 マジか。


「と言うのは冗談で」


 冗談かよ。


「単純に変身の瞬間も撮影されてたからわかるだけだよ。つまりマスコミから逃げるだけ無駄だって事でもあるけどね?」


 勇者は逃げられない!


「今、外はどうなっている?」

「どうなっているって、あのとおり星司くんの事を取材したい報道陣で埋め尽くされそうだよ」


 だよなー。


「やっぱ、俺が行かなきゃダメか?」

「ダメだね」

「どうしても?」

「どうしてもだよ」


 はあ、覚悟を決めるか……。


「アドバイス。答える必要のない質問は答えなくて良いからね」


「プライベートな事とか、ね」と白瀬が助言してくれるが、言う通りに出来るかな?


 とりあえず、マスコミを放っておく訳にはいかないので。


「あ! 出て来ました!」


 俺を発見したマスコミがどんどん集まってくる!

 逃げたい……。


「魔獣を人間に戻したのは、あなたで間違いありませんか!?」

「勇者とのことですが、魔法少女とは違うんですか!?」

「魔法少女と敵対したり、協力している様でしたが、あなたは魔法少女の敵ですか!? それとも味方ですか!?」

「質問は一つずつでお願いします!!」


 誰か助けてくれぇええええええ!!






***






「………………疲れた」


 あの後、なんとかマスコミの対応を終え、俺は病室に戻った。


「にいさま、おつかれさまです」

「ありがとう、桜花」


 我が妹が唯一の癒しだ。


「……そういえば」


 桜花が持っていたガラス玉は何だったんだ? まあ、俺が変身したんだから、そういうアイテムってことは分かるが……。


 なんで桜花がそんな物を持っていたんだ?


「なあ、桜花――」

「にいさま。これ、わたしておきますね」


 そう言って桜花は俺が変身する前に渡したのと同じガラス玉を手に乗せていた。


「…………ありがとう」


 とりあえず受け取る俺。妹の厚意は素直に受け取ってしまう俺は間違いなくシスコン。

 うん。自覚はあるよ。認めたくは無いけど。


『マスターがシスコンなのは今更ですね。否定できる要素はありません』


 !? 声が! 脳に直接じゃなくてちゃんと耳に届いた!?


『音声として出力してますから』

「まさか!?」

『はい。戦闘中に手助けしていましたのは私です』


 声はガラス玉から聞こえてきた。ガラス玉は喋る度に点滅を繰り返し、ここから声が聞こえていることを自己主張している様にも見えた。


「そうか。ありがとう、……えーとっ」


 そういえば名前、知らなかったな。


「お前の名前は?」

『ありませんよ』


 マジか。困ったな……。なんて呼べばいんだ?


「にいさまが名前を付けたらどうですか?」

「え? 俺がか?」

「はい」


 名前か~。う~ん。よし。


「ステラ、で」

『ステラ、ですか?』

「いやか?」

『いえ、そんなことは――』

「じゃあ、決まりだ」

「よろしくお願いします。ステラさん」

『――はい』




次の投稿は早ければ来週の月曜日ぐらいにできたら良いな…。

遅ければ来週の金曜日ぐらいになると思います。

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