プロローグ
ズズーン!
人間より二回りは大きいであろう巨体が放物線を描いて地面へと落下した。
というより俺――天動星司が投げた。
そのあまりの光景に一部始終を見ていた赤い髪の少女は呆然としている。
巨体はオーガという魔獣であり身長は三、四メートル、手足は人間の胴体ほどもあり、その顔は醜く元の人間の面影は見当たらない。
そんな魔獣を投げたのだから普通驚くとは思うが――正直、俺自身が一番驚いている。
そもそも服装すらさっきとは違う物になってるし!
俺は、身体能力は高い方ではあったが、あくまで一般人の範囲内の話であり人間よりも二回りもある巨体を十メートルも投げ飛ばすほどの筋力は無かった筈だぞ!身の危険を感じて反射的に体育の授業で習った投げ技をオーガにかけたら、なんかうまくいっただけだから!!
「グルルルルルルゥ」
唸るような声の方に目を向けるとオーガが立ち上がり威嚇するようにこちらを見ていた。
混乱している場合じゃないか……。
不思議と力が溢れてくる今なら――
「グルゥォオオオオオオオ!!」
できるか? いや、やってみせる!
「元に――」
「オオオオオオオウ!!」
「戻れぇえええええ!!」