少女たちの秘め事2
言ってしまった。俺の心の蟠り。体が成長し女に近づくにつれ募っていく嫌悪感。
リカはさすがに少し動揺した色を見せた。俺の問いがいつもの冗談ではなく本気だと悟ったのだ。
彼女の瞳に夕陽が差し込んでガラス細工のような煌めきを見せていた。その美しさに見惚れ、互いに目を離すことが出来ない。暫くの間二人で見つめ合った。とても近い距離だ。俺の心臓の鼓動が触れた制服越しに彼女に伝わっているかもしれない。
「分からないの。まだ好きになった男の人が居ないから」
リカはどうしてそんな事を聞くのかとも問わず、俺の質問に真摯に答えてくれた。
分からない、というのがリカの答えだ。俺からどうこう指図できる事では決してない。
今度は俺の番だ。何故、こんな突拍子もない事を聞いたのか、その内にある答えを白状しなくてはならない。俺は普段よりも低い声色でぼそぼそと喋った。
「俺は男と付き合うとかキスやセックスしたいとは微塵も思わないんだ。嫌なんだそういうのが堪らなく」
俺は性に関して抵抗がある。高校生になり僅かに大きくなった体は女性らしい曲線を帯び始め、俺が”女”だという事を嫌でも知らしめてくる。中学の時にクラスメートが性行為を済ませた事を誇らしげに語っていたが、俺からすればよくそんな悍ましい行為を自慢できるものだと嫌気が差した程だ。
だがそれが今の”普通”なのだろう。さしずめ俺は普通ではない。
体と体の繋がりに嫌悪感が募るのだ。誰かに触れられると手を払いのけてやりたくなる。ずっとそうだった。
だから戸惑う。
リカに触れられるのは心地良く、無邪気に顔を寄せてくる仕草も好きだ。放課後、二人っきりで他愛もない話の合間に体を寄せて俺の話に聞き入っているリカを見ると胸の奥の方が甘く疼く。
あの男に触れられるのは鳥肌が立ち吐き気を覚える。リカに寄られると心が凪ぐようで、それでいて紅色の熱を含む。
だから戸惑うのだ。この感情がどこに向かおうとしているのか、俺にもまだ分からない。