カノン助けていい感じ~♪!
「カノーン!」
勢いよく扉を開けた。
だがそこには、誰もいなかった。
最初は出かけたのかと思ったが部屋が散らかしっぱなしになっていた。
あきらかにおかしい。
カノンが帳面だということは、荷物の片付けを見たらすぐにわかる。
だから途中放棄はありえない。
手がかりがないか部屋中を探し回っていると室内の電話が鳴る。
「もしもし。」
『鬼堂 千吉だな。』
「!そうだが誰だ。」
『奉下 カノンは、預かった。』
「なんだと!?カノンに手を出してみろ!ぶっ殺してやるからな。」
『できればいいがな。・・・いや離して!!・・・制限時間二十分。体育館へこい。』
「ちょっと待て!!・・・って切れやがった。」
室内電話を投げ捨てて部屋を出た。
体育館って走っても二十分は、かかるはずだ。
だから一秒でも楽したら間に合わない。
がむしゃらに走った。
そして二十分ほど経った頃、体育館が見えてきた。
「おい!電話の奴出てこい!カノンを返せ!」
我を忘れ、ただ体育館には千吉の声が響いた。
息も上がりきっていた為、反応が返ってこない間に息を整えた。
深呼吸を3、4回した時だった。
「随分遅かったな、鬼堂 千吉。」
「!てめぇだな。カノンをさらったの!」
「いかにも。我が名は、Mr.1。吸血鬼、魔女を滅ぼそうと思っている『魔の界』の幹部候補。以後お見知りおきを。」
タキシードを着ているMr.1と名乗る男は、少し不気味な雰囲気を漂わしていた。
「奉下 カノンは、ここです。」
男が指さした方向に向くと天井に吊るされたカノンがいた。
「カノン!!てめぇカノンに何しやがる!!」
「見ての通り吊るしているんだが。」
千吉の中に燃えたぎるような怒りが生まれた。
もう冷静にはなれない。
ただあいつをぶん殴りたい衝動に身をゆだねた。
「もうお前を殴ってもいいよな。カノンを攫ったんだし。」
「別に構わないよ。だって元々君を殺す為に囮として連れてきたのだからね、君の婚約者さん。」
「そうか・・・お前の闇は、俺が吸い尽くす!」
Mr.1のいる舞台に突っ込んだ。
向こうは、それをただ優雅に眺めている。
千吉がMr.1の前についた時には、殴るモーションにはいっていた。
でも虚しく空回り逆に鳩尾を殴られた。
「なんだ、こんなもんなのか。王族って聞いて呆れるな。さてはお主、血を吸ってないな。」
「・・・それの何が悪い!俺は、吸血鬼なんてなりたくないんだよ!」
「青いな坊主。我から一撃でもくらわせることができるなら、その子を返してやろう。」
「ってめぇ!」
必死に殴ろうとしていても当たらない。
反撃をくらいすぎて逆にやられる始末。
もう意識が失いそうになっている。
そんな時だ。
「千吉様?何故ココに・・・って何で私、吊るされてるんですか!」
「カノン・・・よかった。今すぐそこから逃げろ!コイツは、俺とカノンを殺すつもりなんだ!カノンだけでも魔術でなんとか逃げられないか!」
「無理です。魔術で逃げるのは、無理ですがこの縄を切ることできます。」
「なら縄を切れ!俺が受け止める。」
「・・・はい!」
カノンは、そう言うとヘコを召喚した。
ヘコに魔力を注ぎ込んでいくカノン。
そうすると段々ヘコは、成長していった。
「私だけ逃げろとか言わないでください・・・」
「カノン・・・」
「私はココに残ります。だから・・・」
カノンは、ヘコに命令し縄を切った。
落下点に千吉が走り、カノンを受け止めた。
「だから私もあなたの力になりたい。一緒に戦いたいです。」
「・・・俺も言いたいことがある。」
千吉は俯いてしまい、カノンが覗き込む。
そして決意した千吉は、カノンの目を見る。
「ゴメン!・・・俺、怖かったんだ。カノンがいなくなるの。自分でもやっと気づいたことがあるんだ。それは・・・カノンに一目惚れしたっぽいんだ。だからカノンをなくしたくないと無意識のうちにあんな事言っちゃってさ。でも俺、今度は自信を持って言うよ!カノンは俺のお嫁さんになってくれ!」
「はい!」
二人は、見つめ合っているとMr.1は、
「あの一応、我がココにいるのにプロポーズとかしないでくれないか。」
と言われてやっと今の状況を理解した二人。
慌ててMr.1の方に向く。
「やれやれ興冷めだな。・・・今回は、さるとします。それでは。」
「おい待てよ!まだぶん殴ってないぞ!」
「それはまたいずれ。」
Mr.1は、闇の中に姿を消していった。