理事長登場!
寮から二十分弱のところにある温室に来た千吉。
綺麗にライトアップされた花を眺めていると頭に浮かぶのはカノンのことだ。
さっきは喧嘩別れをしてしまった。
出会ったその日に別れるのは、何だか悲しいな。
爺ちゃんにも悪いことをしたな。
メンツを丸潰しにしてしまった。
カノンもきっと嫌な思いをしただろうな。
後悔をしていたらだ。
後ろから声をかけられた。
「君!こんな時間に何をしている。」
「えっ!?あぁすみません。少し考え事をしていて。」
「考え事?・・・悪いが聞かせてくれないか?少しでも楽になるかもな。」
「・・・分かりました。聞いてください。」
婚約のことや自分の過去、そして喧嘩したことも・・・
「!!そうか君が新太郎の孫か。」
「爺ちゃんを知ってるんですか?」
「あぁ知ってるよ。まぁそんなことより彼女の話だ。」
爺ちゃんのことについて聞きたかったが、今はカノンのこと聞きたい。
「君は・・・偽善者だな。」
「えっ!?」
「君は彼女のことをどう思ってるんだ?」
「俺は・・・」
「多分、彼女に一目惚れをしているんじゃないかな。だからそんなに彼女を大切にしたがるんだよ。」
「そんなもんですかね?」
「そんなもんだよ。」
「君の爺ちゃんみたいにね。」
「それってどういう・・・」
「いや、聞かなかったことにしてくれ。それじゃぁ早く寮に帰りなさい。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
「ハッハッハ。また来るがいいココに、悩んだらな。」
「はい!ありがとう大神おじちゃん!」
「!!・・・気づいておったか、千吉。久々にお前の姿が見れて、嬉しかったぞ。」
薄々気づいていたさ。
多分この学園の理事長なんだろうな。
だって大神おじちゃんのことは、しっかり覚えている。
理事長が狼男って聞いた時、多分そうだろうと思っていた。
向こうは、優しい事務員を装っていたがバレバレだ。
今も昔と変わらない。
悩んだ時は、いつも答えに導いてくれる。
だから俺は、導きだされた答えに進むのではなくて、自分で見つけた新たな答えに進めようにしている。
今回、俺が見つけた答えはもう決まった。
「よし!もう一度カノンと話そう!」
早る気持ちのせいで俺は、温室を駆け出した。
「千吉の為にも、人肌脱ぐか。」
大神理事長は、そう言うと獣人化してカノンのいる寮へ向かった。