爺ちゃんとの会話
「じゃぁ行ってきま~す。」
俺は爺ちゃんにそう言って家を出ようとした。
そしたらだ。
「おい、千吉。ちょっと話がある。五分でいい。」
「お、おう。」
なんだ急に思いつめた感じだったけど。
いつもみたいに明るい感じで見送って欲しいよな、まったく。
千吉はちょっと重たい足を運び、書斎に向かった。
「よく来た千吉。話というのは、他でもない。」
「な、なんだよ。」
いつにない圧迫感があるな。
少しびびっちまったじゃねえかよ。
「実はな・・・お前に婚約者がいるんだ。」
「はぁ?何言ってんだよ、爺ちゃん。吸血鬼もボケはじめるのか。」
「ボケてなどない。事実だ。今まで黙ってて済まなかったな。」
「そうかしこまるなよ、爺ちゃん。いつもみたいに孫として見てくれよ。これじゃぁ俺がなんだか偉いみたいじゃないか。」
「仕方がなかろう。だって千吉。お前は、国を救う運命の吸血鬼なのだから。」
「はぁ?悪い冗談は、やめてくれ!いくら爺ちゃんだからって怒るぞ。」
本当になんなんだ。
爺ちゃんは、いつも冗談なんか言わない。
それはよく分かっているけど、今回は冗談にしか聞こえない。
何を考えているか全くわからない。
婚約者?運命の吸血鬼?
意味がわからない。
「急な話なうえ戸惑っているのは、仕方がない。でも分かっていて欲しい。お前は、学園に行って私とは、離れる。だがなお前は、一人じゃないことを知っていて欲しい。」
新太郎が千吉を優しく抱く。
「婚約者の名は、奉下 カノンというそうだ。きっとお前を支えてくれるはずだ。一応言っておくがその子は、魔女だ。だが敵ではない。」
「それってどういうことだよ。」
「・・・この国の民は、魔女を嫌う。だから私は、魔女を敵としているという考えを民に伝えた。だがな、私は、昔から魔女とは結託して国を作りたかった。でもな、そうすると反乱が起きる。知っているだろう?私の宝は、民とお前だ。」
新太郎は、穏やかに笑った。
「爺ちゃん。」
「これを持っていけ。」
新太郎は、小さな箱を机から取り出した。
「これは、奇跡の輝石だ。」
「奇跡の輝石?それって確か国宝じゃぁ?」
「あぁそうだ。これは、もう一つある千力の閃緑岩というものと混ざりし時、世界を救うことができるという伝説がある。だからこの石をお前にたくそう。」
新太郎が千吉に渡した。
「爺ちゃん、楽しみにしておけよ。俺は、世界を救ってみせるさ。」
はっきり言って自信は、あまりない。
でも期待は、裏切りたくない。
「話も終わったならもう行くな。」
俺はそう告げると爺ちゃんは、何だか寂しそうで悲しそうな顔をしていた。
「話したいことは、たくさんあるけど俺は寮生活だ。・・・だから三年後まで会話は、とっとこうぜ。」
新太郎はちょっと嬉しそうにな顔になり、すぐ引き締めた。
「立派に言うようになったな、千吉。」
ちょっと嬉しいな、爺ちゃんの笑顔が見れた。
これで不安な学園生活もなんとかなりそうだな。
俺は、書斎を出て玄関についた。
「じゃぁ二回目だけど、行ってきま~す!」
「あぁ行ってらっしゃい。」
こうして学園生活が始まった。