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僕らの墓標に咲く花  作者: 疑堂
第六話
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終末を寄贈する者③

 この再会は運命の悪戯と表現するしかなかった。

 ヴァネッサが逃げた先の家具店で、ルキがアリエッサによって手当てを受けていた。

 二人は予期せぬ再会に驚愕を浮かべ、それはヴァネッサも同じ。

 よりによって、この世で一番会いたくない人物に再会してしまったのだ。

 ヴァネッサが進退を決めかね躊躇した刹那に、拳銃を握ったルキが飛び出す。

 決断の機会は、永遠に失われてしまった。



 これはやばい。

 一筋の光も射さない暗闇の空間。察するに瓦礫の下敷きになっているのだ。

 体を動かそうにも、両足と片腕を潰されて動けない。数十分で血流の止まった末端が壊死し、数時間後には死亡してしまう。

 これはやばい。

 死の予感による恐怖ではない。意識が別の存在に塗り潰されていく感覚がある。数時間ではなく、彼には数分の寿命も残されていそうになかった。

 彼はまだ死ねなかった。彼は彼の妻と娘を食い、人生を滅茶苦茶にした寄棲獣を殺して、殺して、殺し尽くすまでは死に切れない。

 そして彼の意識は、彼女の意識に塗り潰された。



 カルギア市立ラウクレエス中学校の教室は、血のような緋色に染まっていた。チェデオ少年は学友と教師の亡骸を前に、途方もない虚しさに取り憑かれていた。

 チェデオ少年にとって楽しい思い出の一つもない学び舎が避難所になっていたのは、偶然にしろ何者かの悪意にしろ、今となっては解明することに意味はない。

 チェデオ少年が感情の箍を外した理由も定かではない。極度の心的疲労か、誰かに決定的な破綻を宣告されたか、それとも悪魔が一堂に会したことによる恐怖からか。

 報いを享けさせるため、両親を殺し学友を殺し教師を殺した。自分に悪意を向けていた悪魔を殺しても、何も変わらなかった。むしろ胸を締めつける悲しみに襲われている。

 チェデオ少年は唐突に理解する。自分は彼らに報復したかったのではない。仲間に入りたかったのだ。仲良くなりたかったのだ。

 この殺戮は無意味で無駄だ。何より仲間に入る機会は永遠に失われてしまった。

 だからチェデオ少年は、自分の首を刎ねた。

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