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僕らの墓標に咲く花  作者: 疑堂
第四話
25/51

君を弔うヒガンバナ④-①

 そして時間は一つ前へと巻き戻り、原初へと到達する。

 これは最初で最後の相対。


「お前、何をやっているんだ?」

 呆然と発せられた言葉に、双方が硬直する。

 それは全くの偶然だった。運命の悪戯としか言いようがない。

 ザヘルが深夜の街を徘徊していると、二つの勢力が激突する現場に出くわした。

 片方は鉄仮面が率いる戦闘集団。

 片方は白尽くめの教主が治める教団。

 ザヘルは片方がヒガンバナだと把握。そしてレイダースが囮捜査を決行したのも。

 だからこその疑問であった。

 ザヘルの視線が一瞬で戦況を分析する。レイダースで立っているのはディオとハダンだけ。ルキは街灯に引っかかって失神し、コーツも路傍の側溝に頭がはまって身動き取れなくなっている。対するヒガンバナも女が死に、男が左腕を肩口から失っていた。

 ザヘルの視線が上に移動する。ビルの屋上から赤毛の男が見下ろしていた。ザヘルは男に誰かの面影を垣間見るが、それが誰なのか思い浮かばない。

 ディオ、教主、ザヘルの視線が正三角形の頂点となって路地に描かれていた。

「お前、何をやっているんだ?」

 再度ザヘルが問う。ディオは当初、それが自分に向けられていると思った。だが違う。

 教主とザヘルの視線が直線で結ばれる。

 好機と見てハダンが飛び出した。ディオの制止も後方に置き去り、教主に渾身の刺突。

 ふらりと、剣の射線上にザヘルが侵入した。ザヘルの相貌はハダンへの敵意に陰る。

 ハダンにはザヘルの意図など関係ない。ザヘルごと教主を抹殺するべく、嬉々として脚力を爆発させ、

 ザヘルの左拳が、正確にハダンの目頭を打ち抜いていた。

「お前は、寝ていろ!」

 圧倒的に優位な間合いを与えていたはずの剣は、何の用もなさなかった。射程で勝る自分がどうして攻撃を受けたのか、原理を理解する暇もなくハダンの意識が千切れる。召喚された剣が崩壊し、異界へと強制召還されて消失。

 ザヘルの左側、降り抜かれた左腕と右に傾斜するハダンの死角を縫って、教主が疾走。ディオとの間合いを詰めようとする。

 体勢が右に移動したザヘルは、教主を視認しつつも動けない。

 教主が速度を落とす。瞬前、目の前を通り過ぎたのはハダンの巨体。意識のないハダンを蹴り出して教主の通路を遮断したザヘルが、一瞬で体勢を立て直して教主の眼前に。

 ザヘルの疲れた色の濃紺の視線と、教主の呆れた色の黒い視線が至近距離で激突。

 ザヘルの手刀が地から天へと、流星となって駆け抜ける。速度を落としていたのが教主に幸いした。直撃の寸でで後方跳躍した教主の、顔を隠すストラに指先が接触する。

 ぞっとする静謐。両断されたストラの片方が地面に落ちる。

「避けないって、分かってたからな」

 ザヘルの口調は重金属のように固かった。言葉の意味を理解している教主は逡巡し、

「当てないって、分かってたからね」

 と続けた。

 教主の頭に乗っていたストラのもう片方が押し上げられ、落下する。ストラを下から持ち上げたのは、特徴的に跳ね上がる後ろ髪。教主の容貌はどこか呆れ気味の壮年男性。

「……マリオカダス」

 親友の名を呟いたザヘルに、マリオは「ご名答」とだけ短く答えた。

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