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僕らの墓標に咲く花  作者: 疑堂
第三話
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予兆④

 野菜を貫いた突き匙は、まるで生贄を突き刺した槍にも見える。禍々しい槍の食器が仮面の口元に運ばれ、鉄仮面の口が開き、そして食べた。

 漆黒の水面を湛えた杯が傾けられ、熱々の珈琲が仮面の口に流し込まれる。

 コーツと、ハダンと、ルキの視線が、食事を行うアルディオン、もとい鉄仮面を凝視していた。

 比喩ではなく、鉄仮面の口元の部分が上下に開き、肉を噛み野菜を咀嚼し液体を流し込んでいるのだ。鉄仮面が食事を貪り、飲料を飲む様は、恐怖映画の一幕だ。

 レイダース基地の食堂で、親睦会を兼ねた会議が行われていた。

 しかし親睦会どころか、全員がディオの食事に呆気に取られて会話もままならぬ。

 当のディオも、三人の様相に意識を引き寄せられていた。

「で、どうしたんだ? 揃いも揃って」

「「「いえ、別に」」」

 ルキ、ハダン、コーツの三人は体中に包帯を巻き内出血で青痣を作り、要約してズタボロの出で立ち。首を傾げたディオの疑問に、それぞれの態度で追求を拒否。

「えーっとですねぇ、ハダンさんが昨日のお昼頃に医務室に転がり込んできてですねぇ、ルキさんとコーツさんは昨夜の深夜遅くに参られましたぁ」

 三対の〝余計なことを!〟の視線は、「ほぇ?」のとぼけた一言であしらわれた。顔の半径と同じ直径の丸眼鏡、幼さを残す表情をそばかすが彩り、髪型は可愛らしいツインテール。東方系の顔立ちは、大陸中央部(りょう)国の血筋。

 女の名はヤーリャル。レイダース唯一の救急隊員で、カテゴリgレベル3+。

 ハダンはアブルにボッコボコにされて這々の体で医務室に転がり込み、

 ルキは乳繰り合おうとしていた矢先にヴァネッサの襲撃を受け、

 コーツは趣味の猟奇殺人の最中に連続無差別殺人犯に遭遇した。

 それぞれの矜持と羞恥心、世間体が口に出すのを憚らせた。

「私生活は口出しされないよう、普段から心がけておけ」

 ディオの仮面からは、呆れているのか叱責しているのか判断が難しい。

「そう言えばヤーリャル、例の彼とはその後どうなっている?」

「……まだ、話しかけるのも出来てないですぅ」

「そいつは誰だっ!」

 コーツが椅子を蹴立てて立ち上がった。眼球に血管を浮かべ、尋常ならざる剣幕でヤーリャルに詰め寄っていく。

「コーツさんには関係ありませんよぉ」

 しかしてその一言でコーツは撃沈した。膝から力が抜けて腰を落とし、白目を剥いて首を折り、真っ白に燃え尽きる。口からは魂が半分ほどはみ出ていた。

 分かり易すぎるコーツの反応にも、疑問符を浮かべるヤーリャル。

 職場の三角関係にたった今気付いたディオは、バツが悪そうにおたおたしていた。修羅場を脱するべく、会話の矛先を変更する。

「そういえば、会議も兼ねていたのだな。何か有力な案はあるのか?」

「それでしたら一計が。囮捜査はどうでしょう?」

 ハダンの提案に、全員の視線が集まる。

「ヒガンバナが洗脳を行っている少年少女には一定の基準があります。我々が先に対象に接触し、協力を得るのです」

「よし、そうしよう」

 ディオは何としてでもこの場を早めに切り上げたかった。その投げやりなまでの対応に、全員が心の中で〝軽っ〟と突っ込む。燃え尽きていたコーツでさえ、息を吹き返してしまうほどに。

 こうして、対ヒガンバナ囮作戦は決行される運びとなった。

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